著者
池田 七衣 白井 文恵 土肥 義胤
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.5_19-5_25, 2006-12-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
17

院内感染は,患者への新たなる感染や多剤耐性菌の拡散に繋がることから,医療従事者にとって重要な問題である。院内感染対策に重要なことは,感染源を認識しその伝搬経路を遮断することである。頭髪は手指が触れる機会も多く,感染源及び伝搬経路となる可能性がある。そこで,シャンプーで洗髪した頭髪への,院内感染で重要な位置を占める黄色ブドウ球菌,緑膿菌,大腸菌の付着性について調べた。その結果,頭髪には多量の細菌が付着することが明らかになり,付着した細菌の40 ~ 60%はシャンプー洗髪でも遊離せず付着したままであった。また,黄色ブドウ球菌は,種々のシャンプー剤により殺菌されるが,緑膿菌や大腸菌は全く殺菌されないことも明らかになった。従って,多くの緑膿菌株や大腸菌株は,シャンプー洗髪しても一部が生きたまま付着し続け,再び増殖することから,頭髪が院内感染における感染源および伝搬経路となる可能性を強く示唆した。
著者
森谷 利香 池田 七衣
雑誌
摂南大学看護学研究 = Setsunan University Nursing Research
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.22-30, 2014-03

本研究は多発性硬化症(Multiple Sclerosis;MS)病者の漸進的筋弛緩法(Progressive Muscle Relaxation; PMR)による疲労への影響及び、実施上の課題を考察することが目的である。4事例を対象に2週間継続してPMRを行った。PMRは16筋群を対象とし、30分のCDで行うものである。1日目、7日目、14日目に研究者が訪問し、共に実施の後、評価を行った。それ以外は、対象者が一人で実施した。結果、全員が安全かつ適切に実施できた。そして2人の主観的疲労が低下し、日誌においても疲労が軽減したという記載があった。また2人の活力が上昇し、活動量が増加したという記載があり、疲労の改善による影響と推察された。同時に不眠や痛みが改善したとの記述があった。つまり、MSの二次的疲労の原因と考えられている不眠やストレスへの介入としてPMRが有用である可能性がある。一方で身体的QOLが標準を下回る対象者が2人いた。PMRに伴う知覚異常や身体へのネガティヴな認知との関連についての検討が必要である。
著者
田中 基晴 池田 七 田原 さやか
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.146, no.1, pp.54-61, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
36

骨髄線維症(myelofibrosis:MF)は,骨髄の広範囲の線維化,脾腫および随伴する臨床症状を特徴とする造血器腫瘍であるが,選択可能な治療法は極めて限られており,新しい治療法の開発が望まれていた.MFの発生には血液細胞の分化・増殖に関与するJanusキナーゼ(JAK)2の活性化,および消耗性の全身症状には炎症性インターロイキンシグナル伝達に寄与するJAK1が関与することが示唆されている.ルキソリチニブ(ジャカビ錠®)はJAK1およびJAK2に選択性を示す新規のJAK阻害薬である.ピロロピリミジン誘導体(一リン酸塩)である本薬はJAK1およびJAK2に高い選択性(IC50<5 nM)を示し,恒常的活性化型JAK2変異遺伝子(JAK2V617F)発現細胞株のJAK/STATシグナル伝達および増殖を抑制した.また本薬はJAK2V617F変異遺伝子発現細胞を接種したマウスにおいて,脾腫縮小や延命効果,また炎症性サイトカインの血中濃度を低下させるなど,そのJAK阻害効果がin vivoにおいても確認された.本薬のヒトにおけるCmaxおよびAUCは投与量にほぼ比例し半減期は約3時間であった.おもな消失経路は代謝であり,おもにCYP3A4が,またCYP2C9もわずかにその代謝に寄与する.本薬の薬物動態に関し,性別,体重および民族で大きな違いはないと考えられる.海外においてMF患者を対象とした2つの主要な第Ⅲ相臨床試験が実施され,本薬15 mg 1日2回もしくは20 mg 1日2回を開始投与量として投与した場合,対象群と比較し,有意に脾腫縮小効果が認められた.また臨床症状の改善および死亡リスクの減少傾向も示された.おもな有害事象として貧血,血小板減少症が高率に報告された.日本人を含むアジア人を対象とした第Ⅱ相試験でも同様の有効性,忍容性が示されたことから,本邦においても2014年7月にMF治療薬として承認された.
著者
池田 七衣 門田 亜矢 荻野 敏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.464-470, 2005
参考文献数
7
被引用文献数
2

【目的】花粉症患者数は増加傾向にあるが, 医療機関を受診せず市販薬ですませてしまう患者も多い. 患者動態を把握するにあたり, 医療機関だけでの調査では不十分と考え, 患者が比較的利用しやすいWebサイトを用いその実態についてアンケート調査を行った. 【方法】2003年2月1日から4月30日, B製薬会社のWebサイトによるアンケート調査を行なった. 花粉飛散数とアクセス数の相関, 花粉症情報収集源, 初期治療につき検討した. 【結果】Webへのアクセス数は348,045件, アンケートに回答した患者は1,612名であった. アクセス数と花粉飛散実測値には有意な正の相関がみられた. 花粉症の情報源はテレビ/ラジオが61.2%, インターネットが61.2%であった. 治療開始時期について, 年齢別には, 40歳未満は症状出現後が多く, 40歳以上は症状出現前が多かった. また, 地域別にみると, 東日本では症状出現前が多く, 西日本では症状出現後が多かった. 【結語】年齢, 地域などが受診状況に影響を与えることが認められた. 近年パソコンの普及率も急速に広がり, 今後さらにインターネットからの情報提供は重要性を増す. 情報提供者には信頼性の高いWebサイトの製作が求められる.