著者
山本 哲 山本 定光 久保 武美 本間 哲夫 橋本 浩司 鈴木 一彦 池田 久實 竹内 次雄
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.173-177, 2011 (Released:2011-07-27)
参考文献数
6

北海道函館赤十字血液センター(以下函館センター)の製剤部門は2006年に北海道赤十字血液センター(以下札幌センター)に集約され,管内供給は北海道ブロックの需給コントロールによって管理されることとなった.製剤部門の集約は,在庫量の少ない血小板製剤に影響が現れやすいと考えられたので,同製剤の緊急需要(当日受注)に対する供給実態について,受注から配送に至る経過に焦点をあて回顧的に調査した.当日受注で,在庫分に由来すると思われる配送所要時間が2時間未満の血小板製剤の割合は集約直後の2006年度で減少したものの,在庫見直し後の2009年度は2005年度並みに回復した.在庫分がなく札幌からの需給調整に由来すると思われる所要時間6時間以上の割合は2005年,2006年に比べ,2009年度では半減した.時間外発注で1時間以内に配送した割合も在庫見直し後の2009年度に有意に増加し88.5%に達した.製剤部門の存在は,血小板製剤の緊急需要に対し,一時的な在庫量の増加をもたらすものの安定供給の主要な要因とはならず,適正な在庫管理が最も重要な要因であることがわかった.血小板の緊急需要に対しては,通常の需要量を基礎にして在庫量を設定すること,需要量の変化に応じてそれを見なおすことにより対応が可能であった.供給規模が小さく,在庫管理の難しい地方血液センターでは,血小板製剤の広域の需給調整を活発にすることで経済効率を保ちつつ医療機関の需要に応えるべきと考える.
著者
山本 哲 荒木 あゆみ 算用子 裕美 小澤 敏史 金井 ひろみ 池田 久實 高本 滋
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.105-111, 2017-04-20 (Released:2017-05-11)
参考文献数
15

採血副作用における血管迷走神経反応(VVR)は,その低減化に向けて様々な防止策が講じられている.VVRの発症機転はよく解明されていないが,不安や痛み等の精神的な要因,循環血液量の減少による生理学的要因などが推定されている.今回我々は循環血液量の減少を伴わない採血前検査で発生するVVRに焦点をあて,精神的な要因により発症するVVRの特徴について検討した.本採血前のVVRを2群(検査前群と検査後群)に分類し,本採血以降のVVRと比較検討した.その結果,本採血前のVVRでは,体格が小柄で比較的やせ気味の10代の若年男性が多く含まれ,女性では3人に1人は体重50kg未満という特徴が見られた.これらのVVRでは重症例も多くあり軽視すべきではなく,採血基準を体重50kg以上に制限することで女性のVVRは減少すると推定される.
著者
平山 順一 東 寛 藤原 満博 秋野 光明 本間 稚広 加藤 俊明 池田 久實
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.398-402, 2011
被引用文献数
1

濃厚血小板(PC)により引き起こされる輸血副作用の防止には洗浄血小板が有効である.血漿には菌の増殖を抑制する補体成分が含まれているため,洗浄により血漿濃度が減少した洗浄血小板中では,菌の増殖が促進される可能性がある.本研究では,M-solで調製した洗浄血小板中での菌の増殖動態を多血小板血漿(PRP)中でのそれと比較検討した.<br> PRPに菌を播種し(Day0),20~24℃で24時間振とう保存した後,PRPを2等分(コントロール群とテスト群)した.テスト群の遠心上清を出来るだけ除去し,M-solを添加した(Day1).両群はポリオレフィンバッグ中でDay7まで保存した.菌数測定は寒天培地を用いたプレート法により行った.<br> PRP中での場合と比較すると,洗浄血小板中では<i>Streptococcus dysgalactiae</i>や<i>Escherichia coli</i>の増殖は促進され,<i>Staphylococcus epidermidis</i>と<i>Staphylococcus aureus</i>の増殖は抑制された.洗浄血小板中での<i>Bacillus cereus</i>の増殖はPRP中の場合とほとんど差がなかった.<i>Propionibacterium acnes</i>や<i>Serratia marcescens</i>の場合,PRPおよび洗浄血小板のいずれにおいても増殖しなかった.<br> M-solで調製した洗浄血小板中で増殖が促進される菌株が存在するという点に注意が必要である.<br>