著者
池田 光義
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 = Journal of Atomi University, Faculty of Literature (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
no.53, pp.49-72, 2018-03

ジンメルの学問的活動期は、人文社会科学において各種の方法論争が繰り広げられるヴィルヘルムニ世時代と重なるが、ジンメルの理論的展開をこうした種々の方法論争との関連で考察・評価する試みはほとんど存在しない。本稿では、この欠落を埋める系統的な作業のための予備考察を試みる。すなわち、いくつかの論争点に関するメンガー、シュモラー、テンニース、ヴィンデルバント、リッカート、ゾンバルトの理論的態度を確認し、ジンメルのスタンスをこれらの態度と比較し、論争史におけるジンメルの隠れた、しかし特異で重要な貢献および論争から受けた間接・直接の刺激・影響を指摘したい。本稿(上)では、メンガー・シュモラー間の経済学方法論争、ディルタイに始まる自然科学-精神(文化)科学の関係をめぐる方法論争を取りあげ三節に分けて検討する。本稿続編(下)では、「4.ジンメルと精神(文化)科学論争(続)、5.世紀転換期の価値判断論争、6.ジンメルと価値判断論争」について論じる。