著者
池田 将樹
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.40-44, 2019 (Released:2019-01-25)
参考文献数
30

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)はアミロイドβ蛋白(Aβ)とリン酸化タウ(ptau)が脳内に蓄積し,認知機能低下を来す進行性の神経変性疾患である.AD患者や高齢者では,髄膜および大脳皮質の小型から中型の動脈壁に Aβが脳血管に蓄積する脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloid angiopathy: CAA)が頻繁にみられる.CAAはADの認知症を増悪させる因子として知られていたが,脳画像技術の進歩に伴い,多様な病態が明らかになりつつある.一方,CAA関連炎症[CAA-related inflammation(RI)]は近年注目されている病態であり,診断や治療についても進歩がみられるものの,これらの原因については不明な点が多い.CAAの病態解明が進み,ADと CAA関連疾患の治療法の開発が今後さらに重要になると思われる.
著者
山口 晴保 中島 智子 内田 成香 松本 美江 甘利 雅邦 池田 将樹 山口 智晴 高玉 真光
出版者
社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター
雑誌
認知症ケア研究誌 (ISSN:24334995)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-10, 2017 (Released:2018-11-06)
参考文献数
17

【目的】適切な医療を提供するため、認知症疾患医療センター外来受診者のBPSDの特性 をNeuropsychiatric inventory (NPI)を用いて検討した。 【方法】対象はMCI群16例と認知症群163例の計179例(80.2±6.9歳)。NPIと認知機能 (HDS-R)や年齢、病型との関係や各質問項目の出現頻度などを検討した。 【結果】MCI群ではNPI 13.3±20.6点、認知症群ではNPI 22.7±22.8点で、MCI群が低かっ た(有意差無し)。介護負担(distress)を表すNPI-DはMCI群10.5±10.9点、認知症群 10.1±9.8点で同等だった。病型別ではDLB群20例がADD群75例よりも有意に高かった (p=0.005)。相関を調べると、全体ではNPIがHDS-Rと有意な負の相関を示した(r=0.188, p=0.021)。認知症群では、NPI-DがHDS-Rと有意な負の相関を示した(r=-0.212, p=0.037)。NPIとNPI-Dは高い相関を示した(r=0.800, p<0.001)。出現頻度が高い項目 は無関心57.5%、興奮54.2%、易刺激性44.7%、不安39.7%、妄想36.9%の順であった。平 均点が高い項目は、興奮3.51、無関心3.12、易刺激性3.0、妄想2.63の順だった。NPI-Dを NPIで割って負担率を検討すると、興奮(0.6)や妄想(0.56)が負担になりやすく、多幸 (0.12)や無関心(0.3)は負担になりにくかった。 【考察】BPSDはMCIの段階からみられ、進行とともにBPSDが強まり、介護負担が増大 する傾向が示された。興奮や妄想は介護者の負担になりやすく、認知症疾患医療センター ではこれらのBPSDへの適切な対応を用意する必要がある。