著者
池田 昌之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.1033-1048, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
97
被引用文献数
1 1

地球軌道要素変化のミランコビッチ・サイクルは地球環境変化のペースメーカーである.この周期性を万年オーダーの時間目盛とする天文年代学により,新生代の年代学や古環境学は飛躍的に発展し,さらに古い時代へと展開している.中古生代の層状チャートはチャートと頁岩のリズミカルな互層からなり,この堆積リズムがミランコビッチ・サイクルに起因した可能性が古くから指摘されてきた.近年,ペルム-白亜系層状チャートの化石層序と古環境指標の周期解析により,ミランコビッチ・サイクルの認定基準である堆積リズムの周期と階層性が確認された.さらに,天文学的年代モデルを用いて堆積速度や物質収支を推定した結果,チャートを構成する生物源シリカは海洋溶存シリカの主要シンクであり,主要ソースである珪酸塩風化速度の変化を反映した可能性が示された.ミランコビッチ・サイクルに伴い超大陸パンゲアのメガモンスーン強度が変化するため,この生物地球化学的シリカ循環を介して層状チャートの堆積リズムが形成されたと考えられる.
著者
池田 昌之
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内外の深海層や陸成層の地質調査と化学分析、および数値計算を基に、中生代の天文学的周期が気候変化を介して全球の大陸風化や炭素循環に影響していたことを明らかにしました。天文学的周期の影響が増幅した原因として、当時存在した超大陸パンゲアで発生した大規模な大気循環「メガ・モンスーン」が寄与した可能性を指摘しました。この結果は、温暖な中生代における地球システムの応答を解明する上で重要な成果であると言えます。
著者
池田 昌之
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

中生代三畳-ジュラ系遠洋性層状チャートの層厚変動がミランコビッチサイクルと呼ばれる地球軌道要素変動に伴う日射量分布変動を反映した事を明らかにした(Ikeda et al., 2010a EPSL : 2010b ESF).今年度は,ミランコビッチサイクルが層状チャートの堆積リズムに反映されたメカニズムを解明するため,チャート・頁岩単層単位で連続的に元素分析を行い,層厚変動の要因を検討した.その結果,チャート層厚は生物源シリカの埋没速度を反映したことを明らかにした.さらに,層状チャート中の生物源シリカの全球的な堆積速度を推定した.その結果,現在の全海洋に堆積する生物源シリカの堆積速度と同程度から倍以上にも相当した.海洋に堆積する生物源シリカは溶存シリカの主要シンクであるため,この結果から,中生代以前においては層状チャートが海洋の溶存シリカの主要シンクであることを示した.一方,海洋の溶存シリカの主要ソースは陸域のケイ酸塩風化速度変動であるため,これが層状チャート中の生物源シリカの埋没速度の変動要因であった可能性を示唆した.天文学的周期におけるケイ酸塩風化速度変動は夏モンスーンに駆動されることが気候モデル(Kutzbuch,1994,2008)により示されている.これらのことから,天文学的周期における夏モンスーン強度変動でケイ酸塩風化速度が変動し,海洋への溶存シリカの供給量が変動した結果,層状チャートとして堆積する生物源シリカの埋没速度が変動し,層状チャートの堆積リズムが形成されたというモデルを提唱した.このモデルをペルム紀末大量絶滅からの回復過程にあたる下部-中部三畳系に適用した。その結果,前期三畳紀の生物源シリカの埋没速度は異常に高く,その後,中期三畳紀にかけて減少したことから,回復過程において陸域ケイ酸塩風化速度が徐々に弱まった可能性を示した.さらに,地層の周期を年代目盛としてサイクル層序を構築すると共に,長周期日射量変動と古環境変動,生物多様性変動との関連性の検討,およびその日射量変動の周期変調から太陽系惑星運動のカオス的挙動の意義について研究している.