著者
池田 洋一郎 山口 哲生 山田 嘉仁 篠原 翼 河野 千代子 青柳 哲史 天野 裕子 鬼島 正典 黒瀬 信行 宮本 和人
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.65-69, 2004-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

小径線維ニューロパチー (small fiber neuropathy, 以下SFN) を認めたサルコイドーシス (以下サ症) の2症例を経験した. 71歳と67歳の女性が当院に紹介され, 2症例とも手足のシビレなどの症状を呈していた. 神経学的所見として, 両側上下肢遠位部に対称性の温痛覚低下を認めたが, 触覚, 関節位置覚, 振動覚は正常であった. 両者に発汗の低下と便秘がみられた. 神経伝導速度と針筋電図検査では異常は認められず, これらの所見は小径線維ニューロパチーに合致していた. 生検皮膚組織の末梢神経のPGP9.5とP75による免疫染色により, 皮膚組織の末梢神経軸索密度が正常と比して有意に減少し軸索障害が有意に増加していることが確認されSFNと確定診断した. 症例1は, ジクロフェナクや塩酸メキシレチンによって, 症例2は, 塩酸アミトリプチリンの投与で症状は軽減された. 従来, サ症の末梢神経病変は脳神経麻痺と多発単神経炎で代表されるとされていたが, この2症例の経験から, これまで考えられていたよりもSFNの合併の頻度は高いことが推測される. サ症にともなう多彩な神経障害の診断において, 神経伝導速度と皮膚生検はその中からSFNを鑑別する有意義な検査方法といえる.
著者
劔 陽子 池田 洋一郎 稲田 知久 緒方 敬子 木脇 弘二 小宮 智 長野 俊郎 服部 希世子 林田 由美 渕上 史
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.755-768, 2018-12-15 (Released:2018-12-27)
参考文献数
7

目的 2016年4月に発生した熊本地震における熊本県内各保健所の災害対応を振り返り,今後の災害時における保健所・保健医療行政の役割・あり方について考察する。方法 2016年8~9月にかけて,県内各保健所長が発災後超急性期~亜急性期における自分が勤務する保健所の対応について,また県保健所長会長が同時期における所長会としての活動について,記述的にまとめた。これらを「所長会の活動」,「被害が大きかった地域を管轄する保健所の活動」,「被害が比較的小さかった地域を管轄する保健所の活動」に分けてまとめ,KJ法により課題や反省点を抽出した。活動内容 所長会は県の医療救護対策本部における「コーディネーター連絡会議」に参画し,全県的な対応が必要な事項について調整する等の活動を行った。被害が大きかった地域を管轄する保健所は,支援者・団体の調整,市町村支援として避難所の衛生管理や感染症対応支援等の活動を行った。保健所内の指揮命令系統がうまく動かなかった,市町村や外部支援団体に保健所の機能が知られていなかった,県本部との意思疎通が困難であった,などが課題として挙げられた。被害が比較的小さかった地域を管轄する保健所は,職員の安否や管内の被害状況を確認後,待機体制をとった。その後,県本部からの指示により職種別に職員を被災地域の保健所に応援派遣し,また二次避難者を管内に受け入れた。保健所「チーム」としての応援派遣はなかった。長期間の待機による職員の疲弊,ニーズと実際の応援のミスマッチ,被害が小さかった地域にも開設された避難所への対応が保健所により異なっていたこと等が課題として挙げられた。結論 次の災害に備え,災害時の保健医療部局における一本化した指揮命令系統の確立,管理職のマネジメント能力の強化,市町村や関係団体との平時よりの連携強化,災害時保健所活動についてのマニュアルの整備,被災地域を管轄する保健所への人員補強計画の作成等に取り組む必要がある。