著者
河内 信幸
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ニューディール政策には、公共芸術事業計画(Public Works of Art Project)、財務省芸術救済計画(Treasury Relief Art Project)、連邦芸術計画(Federal Art Project)など多くの芸術計画があり、財務省や雇用促進局(Works Progress Administration)の芸術プロジェクトも実施された。ところが、これらの芸術計画は財政基盤が不安定であり、失業者に対する救済事業か、芸術の向上を図る公的支援かという論争も常につきまとっていた。そのため、芸術計画は政府の支持基盤や政治情勢の変化に翻弄されるのであり、「戦時体制」への移行と非米活動調査委員会(House Un-American Activities Committee)の結成によって終焉を迎えることになるのである。しかし、"文化は社会を映す鏡"などといわれるように、「社会史」の観点から時代状況を総合化しようとすると、ニューディール研究も芸術計画を取り上げないわけには行かないのである。ベン・シャーンはこの1930年代の社会危機を目の当たりにし、ニューディールの芸術計画から大きな影響を受けた芸術家であった。そして、シャーンは「社会」と「人間」を見つめる眼を磨き、強烈な社会意識をもって創作活動に取り組んだのであった。そのため、シャーンの作品には強い「社会的メッセージ」が込められており、冷戦や「ホロコースト」にも眼を背けることがなかったのである。その意味では、シャーンは自らのアイデンティティを問い続けた「社会派リアリスト」であり、作品を通して芸術の社会的意義を確かめようとした芸術家であった。ところで、ニューディールの芸術計画には運営面で多くの問題点があり、計画自体の評価は必ずしも高いわけではない。しかし、連邦芸術計画などに参加した芸術家のなかには、後世に残る仕事へと発展する契機となったケースも多々ある。しかも、短期間であったにせよ、連邦政府の公共政策として芸術計画が実施されたのであり、文化遺産の保存や歴史の記憶・記録という観点からも、ニューディールの芸術計画を再検討する意義があると思われるのである。私は、芸術計画とベン・シャーンを調べるためにアメリカへも調査に出かけたが、シャーン自身は2度ほど日本にもやってきており、京都に代表される日本文化に興味や関心を抱いた芸術家であった。2度目の来日は1960年であり、シャーンが第五福龍丸のビキニ被爆事件をテーマに、『ラッキー・ドラゴン・シリーズ』を制作し始めた頃であった。シャーンはパリのモンパルナスに馴染めず、アメリカに眼を据えて創作活動をしたわけであるが、晩年は東洋文化にも惹かれていったことも忘れてはならないのである。
著者
河内 信幸 福島 崇宏
出版者
中部大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)は、「アクション・ペインティング」の旗手として知られ、アメリカ抽象表現主義を代表する芸術家といわれている。しかし、ポロックはインディアンの文化やメキシコ壁画運動にも共鳴し、当初は「アクション・ペインティング」とは程遠い作風の芸術家であった。本研究では、ポロックが関わった雇用促進局(Works Progress Administration:WPA)の連邦芸術計画(Federal Art Project:FAP)の意義を明らかにし、ポロックが「抽象」と「具象」を動的に融合させ、独自のアメリカ・モダニズムを追い求めたことを検証した。
著者
河内 信幸
出版者
岐阜聖徳学園大学
雑誌
聖徳学園岐阜教育大学紀要 (ISSN:09160175)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.165-188, 1996-09-30

Franklin D. Roosevelt's promise of a "new deal" gave hope to millions of impoverished Americans during the Great Depression, but the intractabilityof the economic situation left much of his pledge unfulfilled. This paper seeks to explain why the American depression of the 1930s lasted so long. I have studied a system, a structure of economic life and how it came to gref in the time between the world wars. The economic collapse of the 1930s, inducing major changes in the role of government in American life, and preceding a war that dramatically altered the nation's role in world affairs, has been examined in a wide variety of ways. A study that explicitly offers an explanation of the depression's length should contribute to the histrians argument that in the thirties exceptional economic conditions transformed the country's political and social framework. Moreoverm it should afford the economist some useful insights regarding business and unemployment.