著者
龔 麗媛 河南 佐和呼 真名瀬 陽平 野呂 文行
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.199-207, 2016-03-31 (Released:2017-07-20)
参考文献数
15

ASD児は他者や自己の感情を言語化することに困難さがあることが知られている。 本研究の目的は、感情語の表出がみられないASDの男児1 名に対し、刺激等価性の枠組みを用いて、4 種類の状況に応じた自己感情語(嬉しい、悲しい、怒る、びっくり)を指導することの有効性を評価した。さらに、実際場面でも適切に感情語を表出できるかどうか検討した。刺激等価性は、参加児が主人公となる状況文とその動画、参加児の表情写真、そして感情語の文字の4 刺激で構成された。等価関係のプレテストに基づき、状況文から感情語を選択する指導を実施した。指導後に再度テストをした結果、直接指導をしていない状況動画から感情語及び表情写真の等価関係が成立した。 また実際場面での評価を行ったところ、それぞれの状況に応じた感情語を言語化することが可能だった。本研究の結果は、自己感情語の習得における刺激等価性の枠組みの有効性という観点から考察された。
著者
青木 康彦 丸瀬 里菜 河南 佐和呼 金 晶 馬場 千歳 藤本 夏美 伊 薇琳 松尾 祐希 野呂 文行
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.249-261, 2020

本研究は,ASDの診断がある児童2名,定型発達児(対照児)1名に対して,シミュレーション訓練としてボードゲーム(野球盤)を使用したルール理解指導を実施し,ルール実施,ソーシャルスキルがキックベース場面へ般化するかを検討することを目的とした。その結果,2名中2名のASDのある児童において,野球盤でのルール指導期前よりも後でキックベース場面のルール実施率が高いことが明らかになった。また,ソーシャルスキルについては,2名中1名のASDのある児童にキックベース場面での生起率の上昇が認められた。対照児においては,キックベースの経験回数を重ねることで,キックベースのルール実施率の上昇傾向が認められたが,ソーシャルスキルの生起率については変動がなかった。考察では,野球盤を使用したキックベース指導の利点や,ソーシャルスキルについて指導効果が認められなかった児童に対する指導手続きの課題等について論じられた。