著者
岡田 洋平 福本 貴彦 前岡 浩 高取 克彦 生野 公貴 鶴田 佳世 大久保 優 河口 朋子 岡本 昌幸 松下 祥子 庄本 康治
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.391-396, 2010-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
30

【目的】本研究の目的は,パーキンソン病患者および健常高齢者の足趾把持力を比較し,足趾把持力と疾患重症度および罹病期間との関連性について検討することにより,姿勢制御に重要な役割を果たす足趾把持力のパーキンソン病患者の特性を明らかにすることとする。【方法】対象はパーキンソン病患者25名,健常高齢者25名とした。評価項目は対象者の特性,足趾把持力,膝伸展筋力とした。データ分析は足趾把持力,膝伸展筋力の群間比較と患者の特性との関連性について検討した。【結果】パーキンソン病患者の足趾把持力は健常高齢者と比較して有意に低い値を示し,足趾把持力と年齢,疾患重症度,罹病期間には有意な負の相関関係を認めた。ヤール4度群は2度群と比較して有意に低い値を示した。【結論】パーキンソン病患者は健常高齢者と比較して足趾把持力が低値を示し,加齢や疾患の進行に伴い足趾把持力が低下することが示唆された。
著者
大久保 優 梛野 浩司 岡田 洋平 生野 公貴 河口 朋子 岡本 昌幸 松下 祥子 高取 克彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P2152, 2010

【目的】パーキンソン病患者の機能障害の一つとして,体軸回旋の減少など体幹機能障害があげられる。体幹機能は,ベッド上の寝返り動作や起きあがり動作,歩行時の方向転換,リーチ動作に重要な要素であり,パーキンソン病患者ではこれらの動作が障害されやすい。体幹機能障害は,Hohen & Yahr (H&Y) stage1~2の発症早期から生じると報告されており,病期が進行したH&Y stage3~4の患者では,円背や脊柱の側彎など体幹の変形が問題となる。パーキンソン病患者のリハビリテーションを効果的に行うためには,その特性を反映する客観的な体幹機能評価が必要である。体幹機能評価として,Trunk Impairment Scale(TIS)があげられ,パーキンソン病患者においても有用であると報告されている。しかし,TISの副項目では天井効果が認められており,項目数が多いため測定に時間を要する。もう一つの体幹機能評価として,座位側方リーチテスト(Sit-and-Side Reach test; SSRT)があげられる。脳卒中患者に対して,非麻痺側のSSRTを行った場合,その信頼性は高く,TISとの高い相関も見られ,体幹機能評価として有用であると報告されている。パーキンソン病患者においても,SSRTは体幹機能やその左右差を捉える上で有用である可能性があるが,そのような報告は見られない。本研究の目的は,パーキンソン病患者におけるSSRTと重症度や他の体幹機能との関係を調べ,その妥当性について検証することである。<BR><BR>【方法】対象は,パーキンソン病患者17名であった(平均年齢69.9±9.2歳,男性11名,女性6名,H&Y stage1:1名,2:2名,3:7名,4:7名,平均罹病期間7.3±5.7年)。全ての対象者は口頭指示を理解可能であった。腰痛や脊柱の手術の既往がある者は除外した。評価項目は,SSRT,TIS,Unified Parkinson's Disease Rating Scale part3 (UPDRS-motor)とした。SSRTは,ハンガーラックを用いて作成したスライド式の測定器と40cm台を用いた。測定方法は,開始肢位を40cm台上端座位,上肢90°外転位とし,側方に最大リーチするように指示した。初め三回を練習とし,その後二回測定を行いその平均値を統計解析に用いた。また,左右とも測定し,値が低い方を障害側の体幹機能を反映する指標と捉え,採用値とした。評価は抗パーキンソン病薬の影響を考慮し,服薬1.5~2時間後に統一した。統計解析は,Spearmanの順位相関係数を用いてSSRTとTIS,SSRTとUPDRS-motorとの関係について調べた。またH&Y stage3の患者群と,stage4の患者群のSSRTの差について,Mann-WhitneyのU検定を用いて調べた。<BR><BR>【説明と同意】全ての対象者には,口頭にて本研究の趣旨を十分に説明し,研究参加の同意を得た。<BR><BR>【結果】SSRTとTISの間には,有意な中等度の相関が認められた(ρ=0.51,p=0.04)。また,SSRTとUPDRS-motorとの間にも中等度の負の相関が認められたが,有意ではなかった(ρ=-0.45,p=0.07)。またstage4群はstage3群と比較して,有意にSSRTの値が小さかった(stage3群24.6±6.3cm,stage4群14.2±7.6cm,p=0.04)。<BR><BR>【考察】SSRTとTISとの間に中等度の相関が認められたことから、SSRTはパーキンソン病患者の体幹機能評価として有用である可能性が示唆された。また,SSRTとUPDRS-motorとの間に有意ではないが中等度の相関が認められたこと,stage3群と4群の間に有意な差を認めたことから,SSRTはパーキンソン病患者の重症度を反映する可能性もあると考えられた。今後は症例数を増やし,SSRTの長期的な変化や他のH&Y stageとの関係について検証する必要がある。また,パーキンソン病患者のSSRTの左右差や健常高齢者との差異について検証していく必要がある。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】パーキンソン病患者のリハビリテーションを行う上で,長期にわたって体幹機能を維持することは,身体機能やADL,QOLを維持する上で重要である。しかし,客観的で定量的な体幹機能評価は少ない。今回の研究結果より,SSRTはパーキンソン病患者の体幹機能評価として,有用である可能性が示唆された。また,今回の結果より,SSRTが重症度の差異を捉えることができたことと,定量的な評価であることから,長期にわたって継時的にパーキンソン病患者の体幹機能の変化を捉えることができる可能性があると考えられる。