著者
小林 慧人 久本 洋子 福島 慶太郎 鈴木 重雄 河合 洋人 小林 剛
出版者
The Japanese Forest Society
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
pp.461, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)

タケ類(イネ科タケ亜科)の生活史において有性繁殖は極めて稀なイベントであり、開花周期や開花習性や更新様式に関する知見は未だ限られる。一方、2010年代から現在にかけて、およそ120年周期とみなされるマダケ属ハチクの大規模開花が生じており、その実態解明の好機を迎えている。予測困難なタケ類の有性繁殖の機会を広域に把握するためには、研究者のみならず多くの市民の協力を得た記録や情報共有が有効な手段の一つになると考えられる。ハチクだけでなくさまざまなタケ種にかかわる有用な情報を蓄積するため、発表者らは Google MapやGoogle Formなどを活用し、市民参加による情報の収集・共有システムを試行した。研究者による現地観察、メディアの報道、SNSや各種アプリに挙げられた記載などに基づいて開花にかかわる情報を2019年から収集した。その結果、現段階で西日本を主とする日本各地から1400件に及ぶ情報を得た。情報の約9割はハチク類の開花であり、タケ類の有性繁殖の理解の基礎をなす情報も含まれた。本発表では、成果の報告にとどまらず、市民の協力によって得られる情報の学術的な活用のあり方や、今後の展望についても議論する。
著者
河合 洋人 西條 好廸 秋山 侃 張 福平
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.151-157, 2008 (Released:2008-12-09)
参考文献数
21
被引用文献数
7 7

竹林の拡大機構を解明するため,岐阜県西部においてモウソウチク地下茎を100 m2方形枠で掘り取り,採取した試料から成長様式と年間伸長量,発生後年数を推定した。その結果,節間長の配列には振幅性があり,極端に節間長が短くなる部分を年次の境界と仮定した場合,その節間の狭窄部は7∼29 mmの範囲にあり,1振幅における最長節間長の40%以下であった。地下茎の分岐点と節間長の狭窄部から採取した50本の試料について1年間の伸長量を推定した結果,0.02∼3.63 m,平均1.27±0.90 mであると推定され,西日本における他の事例よりも小さいことが明らかとなった。採取した地下茎が方形枠に侵入し,その枠外へ伸長していくまでの経過年数は4∼12年と推定され,経過年数と各年における平均年間伸長量,合計伸長量,全分枝数,新規分枝数について解析した結果,新規分枝数が3年に一度大きな値をとることが明らかとなった。以上から,節間長の配列によって年間伸長量の推定が可能であると考えられるが,さらなる検討が必要である。また気候や土壌などの立地環境が地下茎の成長に影響を与えている可能性についても同様である。