- 著者
-
河合 祥一郎
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 奨励研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1997
本研究は、すでに平成9年度の時点でエリザベス朝の膨大な数の戯曲のデータベース化の5割程度を完成し、平成10年度はその継続に当たった。しかし、昨年度の時点で、これまでエリザベス朝研究の土台となってきたE.K.ChambersのThe Elizabethan StageおよびG.E.BentleyのThe Jacobean and Caroline Stageを抜本的に見直す必要があることが判明し、その方策を模索していたところ、ちょうどChambersやBentleyを書き直すようなAndrew Gurrによる新しい研究The Shakespearian Playing Companiesが刊行され、このため本研究は大幅な見直しを迫られることとなった。本研究をいずれ『イギリス・ルネサンス演劇事典』として公表する当初の計画に変更はないが、その実現には更に数年を要すると予測される。これとは別に、現在未発表の英語論文「ルネサンスにおける変装」を日本語の図書の形で公表する予定でいるが、この論文についても、「主体」の問題が現在文化唯物論批評と伝統的人文主義批評の間で大きな理解の齟齬を産んでいるために、この問題を一般に受け入れられる形で分析するためには極めて慎重に進めてゆく必要がある。特に変装と主体のテーマは演劇のみならず哲学・思想にも深く関わる点が研究を進めてゆくうちに一層確認されてきているために、容易な姿勢はとれない。幸いにして1999年度のシェイクスピア学会で変装と主体のテーマでセミナーを開く責任者に任じられたので、学会活動なども通じて本研究を更に発展させ、できるだけ早いうちにその成果を公表したいと願っている。