著者
河崎 健
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.44-55, 2015 (Released:2018-03-23)
参考文献数
29

諸外国でしばしば理想視されるドイツ連邦議会の選挙制度だが,1990年の統一以降,その構造的な問題点が研究者などの間で議論されることが増えてきた。そして2005年の補欠選挙を契機に,「負の投票価値」という制度特有の問題が露わになり,改革論議が高まったのである。その後,連邦憲法裁判所の2度の違憲判決などを受けて2013年に新制度が発足したが,選挙制度に内在する問題が完全に克服されたとはいいがたい。本稿ではこの新制度の特徴と問題点を,新制度下で初めて行われた2013年の連邦議会選挙との関連で考察する。具体的には,負の投票価値,超過議席,阻止条項そして調整議席といったドイツ特有の選挙制度の特徴について,内在する問題点について考察する。
著者
河崎 健
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.15-27, 2013 (Released:2017-11-03)
参考文献数
29

本稿は,ドイツ連邦共和国の選挙制度である「個人化された比例代表制」を構成する小選挙区制と比例代表制がどのような理由で導入されたのかを考察することを目的としている。比例代表制が,第二帝政期の社会民主党と,小選挙区制下での社民党のさらなる躍進を恐れる右派勢力により導入されたように,党派的思惑が大きく作用している。これに対して,第二次世界大戦後の選挙制度改革では,ワイマール共和国とは異なる形での比例代表制の導入には広範な合意ができたものの,個人を選ぶ要素を導入することにより党派間で対立が生じた。このように戦後,比例代表制導入に合意ができたことは,(戦前と異なり),政党が政治的意思決定に不可欠な存在として,公法上も認知されたことが大きく作用している。
著者
河崎 健
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.78-87, 2010

本論は2009年9月27日に行われたドイツ連邦議会選挙を分析したものである。 大連立政権を構成していた二大政党・キリスト教民主/社会同盟とドイツ社会民主党の 首相候補(メルケル首相とシュタインマイヤー前外相)同士の争いとあって,同選挙は争点に乏しく,投票率も過去最低であった。その中で選挙前に論議されたのは,同国の選挙制度特有の超過議席如何によって与野党が逆転する可能性についてであった。しかしながら予想外の低投票率もあり社民党が惨敗したため,超過議席の問題は未然に終わった。本論では,この超過議席をめぐる議論を簡単に紹介した後,投票率と社民党の得票率の相関を見た上で,この低投票率の原因と,連立政策との関連で各党の勝敗を決した要因について分析を行う。
著者
河崎 健
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.17-27,171, 2004-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
33

シュレーダー政権初の国政選挙となった2002年総選挙はドイツ連邦共和国史上まれにみる与野党伯仲という結果になり,シュレーダー首相は辛くも続投することになった。過去4年間の政権の業績,首相の人気,野党の停滞状況にもかかわらず,シュレーダー政権が辛勝だったのは何故なのだろうか。マスコミは選挙直前の経済状況の悪化を大きな要因として挙げている。確かに経済運営に対する社民党への世論の評価は高くない。だが果たしてそれだけで十分に説明できるのであろうか。本稿では,短期的な経済動向のみならず,中長期的な政党支持の推移を追うことでシュレーダー政権支持の変化を分析する。具体的には,今回までの連邦議会選挙で実施された出口調査における男女差,年齢,職業,旧東西ドイツ地域間の差を見た上で,ドイツの投票行動に見られる中長期的な変化の特徴を考察してみたい。
著者
河崎 健
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.78-87, 2010 (Released:2017-05-08)
参考文献数
25

本論は2009年9月27日に行われたドイツ連邦議会選挙を分析したものである。 大連立政権を構成していた二大政党・キリスト教民主/社会同盟とドイツ社会民主党の 首相候補(メルケル首相とシュタインマイヤー前外相)同士の争いとあって,同選挙は争点に乏しく,投票率も過去最低であった。その中で選挙前に論議されたのは,同国の選挙制度特有の超過議席如何によって与野党が逆転する可能性についてであった。しかしながら予想外の低投票率もあり社民党が惨敗したため,超過議席の問題は未然に終わった。本論では,この超過議席をめぐる議論を簡単に紹介した後,投票率と社民党の得票率の相関を見た上で,この低投票率の原因と,連立政策との関連で各党の勝敗を決した要因について分析を行う。
著者
河崎 健
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.2_11-2_34, 2015 (Released:2018-12-15)
参考文献数
42

過去の反省や戦後の冷戦体制の影響などから戦後西ドイツの政党制には左右の過激勢力の台頭を抑制すべく厳格な制度的枠組みが構築され, 国家の側からの代表制度の規制が正当化されていた。しかし60年代以降の左派陣営の分裂から新党が定着し, 3党制では十分な代表機能が果たせなくなった。他方, 多党制ながら左右陣営間の政権選択の選挙が定着していた西ドイツだが, 統一後, 左右の過激勢力が旧東独の地域利益 (左) や反ユーロ (右) というイッシューを前面に, 過激性を潜めることで既成政党に影響を及ぼすようになってきた。その結果, 左派陣営の諸勢力の分裂と相互の共闘の不備, 右派陣営の政党間による多数派確保の難局化により, 選挙を通した政権選択の可能性が不透明になってきたのである。現在のドイツでは連立の選択肢を拡げて首班政党としての多数派獲得をめざす二大政党間の競争と, 自党の生き残りと政権入りをめざす小政党間の競争が特徴的になっている。