著者
河戸 誠司 江口 瑠美 千住 秀明 濱出 茂治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.F0187-F0187, 2008

【目的】<BR> 電気刺激による筋力増強法は,健常者や様々な疾患にその効果を示している。近年,前田らによって考案されたHybrid法は,目的筋とは対側の拮抗筋に電気刺激を与え,その筋活動を運動抵抗として行う方法であり,従来とは異なる方法である。一方,遠心性収縮は高い筋張力が得られるため筋力増強に適している。本研究の目的は,電気刺激を目的筋である大腿四頭筋に与え,拮抗筋を求心性収縮させることで生じる遠心性収縮を利用した筋力増強法の効果について検討することである。<BR>【方法】<BR> 対象は,本研究に対して同意が得られた健常成人20名(男性11名,女性9名)とした。電気刺激には低周波治療器(パルスキュアー・プロ)を使用し,電極は非利き側の内側広筋,大腿直筋,外側広筋に貼付した。周波数は20Hz,通電・休止時間ともに10秒間の間歇通電法を用い,20分間/回,週3回,4週間とした。本法の筋力増強法は,電気刺激を大腿四頭筋に与えて膝関節を他動的に伸展させた後,随意的に屈曲させることで生じる遠心性収縮を利用した方法である(電気的遠心性筋力トレーニング:以下,EEMT)。測定項目は大腿四頭筋力および大腿周囲径(膝蓋骨上縁5.0/10.0/15.0cm),皮膚血流量,皮膚温度をトレーニング前および2,4週間後に測定した。統計処理は経時的変化を一元配置分散分析によって検定し,有意差を認めた場合はBonferroni法を用いて多重比較検定を行った。有意水準は5%未満(p<0.05)とした。<BR>【結果】<BR> 大腿四頭筋力はトレーニング前の188.3±72.0Nから2週間後に231.5±70.4N(22.9%),4週間後に271.7±73.2N(44.3%)へ有意な増加(p<0.001)を認めた。大腿周囲径は測定部位に関わらず4週間後に有意な増加(p<0.001)を認めた。皮膚血流量および皮膚温度は,どの部位においても経時的変化は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 健常者を対象とした大腿四頭筋の筋力増強法は,電気刺激のみではトレーニング期間が4~6週間で最大筋力が約11~15%, Hybrid法では6週間で19~33%の増加率であったと報告されている。EEMTは先行研究と比較して,より短期間に効果を認め増加率も大きかった。電気刺激は速筋線維から興奮し,低頻度刺激は遅筋線維を賦活するとされており,遠心性収縮は速筋線維が優先的に動員され筋肥大しやすいという特徴がある。EEMT は目的筋に電気刺激と遠心性収縮を組み合わせて筋力トレーニングすることにより大腿周囲径も有意に増加し,効果的な筋力増強法と考えられた。また,筋力トレーニングや低周波電気刺激により循環動態を経時的な改善をみとめるとの報告もあるが,本研究の皮膚温度および血流量は大腿表面の変化を捉えているに過ぎず,今後はより詳細な検討が必要と考えられた。
著者
田平 一行 関川 則子 岩城 基 河戸 誠司 関川 清一 川俣 幹雄 大池 貴行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.59-64, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19

症状の安定した慢性閉塞性肺疾患患者16名を対象に胸郭モビライゼーションを行い,即時効果について検討した。治療手技は米国Rancho Los Amigos病院で体系化された徒手胸郭伸張法を一部変更して実施し,治療前後の肺機能検査,胸郭拡張差,動脈血酸素飽和度,脈拍数,呼吸困難感を比較した。その結果,治療後に有意に第10肋骨部の胸郭拡張差は増加,心拍数は減少したが,その他の項目には変化を認めなかった。対象者の中から拘束性換気障害を合併した11症例を抽出し検討すると,更に腋窩部,剣状突起部の胸郭拡張差,肺活量,比肺活量でも有意な改善が認められた。これらは胸郭モビライゼーションによって,呼吸筋の柔軟性,関節可動性などが改善することによる効果と考えられた。慢性閉塞性肺疾患患者でも,特に拘束性換気障害をも合併した混合性換気障害の症例が胸郭モビライゼーションの良い適応になると思われた。