著者
植木 純 神津 玲 大平 徹郎 桂 秀樹 黒澤 一 安藤 守秀 佐野 裕子 佐野 恵美香 石川 朗 高橋 仁美 北川 知佳 玉木 彰 関川 清一 吉川 雅則 津田 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.95-114, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
115
被引用文献数
10

呼吸リハビリテーションとは,呼吸器に関連した病気を持つ患者が,可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため,医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である.呼吸リハビリテーションは原則としてチーム医療であり,専門のヘルスケアプロフェッショナルすなわち,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床工学技士,管理栄養士,歯科医師,歯科衛生士,医療ソーシャルワーカー,薬剤師,保健師,公認心理師,ケアマネージャー等の参加により,あるいは必要に応じて患者を支援する家族やボランティアも参加し行われるものである.また,呼吸リハビリテーションは病態に応じて維持期(生活期)から終末期まで,急性期,回復時,周術期や術後回復期も含むシームレスな介入である.介入に際しては,評価に基づきコンディショニングを併用した運動療法を中心として,ADLトレーニングを組み入れ,セルフマネジメント教育,栄養指導,心理社会的支援等を含む包括的な個別化プログラムを作成,実践する.達成目標や行動計画を医療者と協働しながら作成し,問題解決のスキルを高め,自信をつけることにより健康を増進・維持するための行動変容をもたらすよう支援する.継続への指導は再評価に基づき行い,身体活動の向上を重視する.呼吸リハビリテーションは息切れを軽減,健康関連QOLやADL,不安・抑うつを改善させ,入院回数・日数を減少させる等の有益な治療介入であり,適応のあるすべての呼吸器に関連した病気を持つ患者に実施される必要がある.
著者
関川 清一 磯田 亜美 岩本 えりか 高橋 真 稲水 惇
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.381-385, 2009 (Released:2009-07-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕嚥下前後の呼吸コントロールが飲み込みやすさに与える影響を明らかにする。〔対象〕健常成人22名とした。〔方法〕自由嚥下および嚥下前後の4つの呼吸位相パターンでの嚥下中の舌骨上筋群活動量と時間,喉頭運動時間,および主観的飲み込みやすさを測定した。〔結果〕指示嚥下では,自由嚥下と比較して,喉頭運動時間には有意差が認められなかったが,舌骨上筋群筋活動量は有意に低値を示した。主観的飲み込みやすさは,指示嚥下と自由嚥下間に有意差が認められ,指示嚥下内での比較では嚥下前が呼気であると高値を示した。〔結語〕指示嚥下は,自由嚥下と比較すると,主観的には飲み込みにくくなるが,効率よく嚥下ができる可能性があり,その中で,嚥下前後に呼気コントロールを行うことが,主観的にも飲み込みやすいパターンになることが示唆された。
著者
高橋 真 関川 清一 濱田 泰伸
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.23-30, 2017-03-31 (Released:2018-02-16)
被引用文献数
2

健康寿命の延伸に(有酸素)運動の効果が期待される昨今では、安全で適切な運動を実施、 指導する場面は内部障害患者などに留まらず、障害のおそれのある人々も含めて、対象は幅広い。そのため、多くの理学療法士にとって、運動時の循環応答とその調節機序に関する基礎的知識・ 理論の理解・応用が求められると考えられる。運動時には活動筋の酸素需要に応えるため、循環系は心拍出量を増大させ、血流の再配分を行い、より効率的に活動筋への血流を増加させる。本稿では、運動時の循環調節の基本的な事項を理解するため、まず、運動時の循環応答とその調節機序について、次いで自律神経性循環調節機構について概説する。
著者
馬屋原 康高 関川 清一 河江 敏広 曽 智 大塚 彰 辻 敏夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.9, 2019 (Released:2019-07-19)

高齢者の肺炎の約 80%が誤嚥性肺炎であり、誤嚥性肺炎リスクを早期に発見し対応すること が急務である。嚥下機能と咳嗽能力の関連があることが報告されており、咳嗽能力を評価する ことは重要である。その評価指標の一つとして、咳嗽時の最大呼気流量(CPF)が用いられてい る。CPF値が270 L/min以下となった場合、呼吸器感染症を発症すると、急性呼吸不全に陥る 可能性があるとされ、160 L/min以下では、気管内挿管も考慮される値と報告されている。そ の他 242 L/min 未満が誤嚥性肺炎のカットオフ値として報告されている。臨床的には、そのカッ トオフ値を参考に低下した CPF を種々の咳嗽介助法を用いてカットオフ値以上に引き上げるこ とが重要となる。さらに筆者らは、咳嗽音を用いてより簡便な咳嗽力の評価方法を提案している。 誤嚥性肺炎を予防する第 1 歩としてより幅広く咳嗽力評価が用いられることを期待する。
著者
上川 紀道 對東 俊介 高橋 真 関川 清一 濱田 泰伸
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.200-203, 2016-08-31 (Released:2016-09-15)
参考文献数
20

咳嗽は気道内分泌物や異物を除去する生体防御機構であり,肺炎などの呼吸器感染症,痰の貯留による無気肺や気道閉塞などの改善や予防のために重要な役割を担っている.随意的な咳嗽力の指標として咳の最大流量(Cough peak flow: CPF)がある.CPFは排痰能力や嚥下機能と関連性が高いことから,神経筋疾患患者や高齢者の症状の悪化や病態の進行を反映する指標として使用されている.CPFに影響を与える因子として肺気量,呼吸筋力,声門閉鎖能力,測定時の姿勢,体圧分散マットレスであるエアマットレスの硬さが報告されている.これらの因子を個別に評価し,可能な限り身体の機能を維持し,環境を改善することが有効な咳嗽を発生させるために重要である.
著者
對東 俊介 堂面 彩加 高橋 真 関川 清一 稲水 惇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3O2017, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】運動は健康維持に重要な役割を果たしており,疾病予防や治療手段として有用である.しかしその一方で,高強度有酸素性運動負荷にて血中の酸化ストレスが増加することが報告されており,運動には負の側面も存在する.この酸化ストレスは,活性酸素の産生とその活性酸素を還元する抗酸化物質の量のバランスによって決定される.もし抗酸化物質による防御能が活性酸素の産生増加に適応できなかった場合,そのバランスが崩れ,活性酸素が高まった状態となり,この活性酸素は種々の疾患の病因と関連があると報告されている.運動という言葉は一般的に有酸素性運動を指すことが多いが,無酸素性運動もあり,スポーツや日常生活活動においては有酸素性運動と無酸素性運動の2つの側面を組み合わせた身体活動が行われている.先行研究では無酸素性運動後の酸化ストレスについて報告しているものは少なく,不明な点が多い.そこで本研究では,30秒間の無酸素性運動であるWingate Anaerobic Testを実施し,その前後で活性酸素の指標として血漿中ヒドロペルオキシド濃度を,抗酸化物質の指標として血漿中抗酸化力の変化を検討し,無酸素性運動負荷後に生体における酸化還元反応の全体像を明らかにすることを目的とした.【方法】健常若年者11名(年齢: 21.4±1.7歳,身長: 171.6±7.4歳,体重: 58.8±5.7kg)を対象とした.無酸素性運動負荷として,無酸素パワー測定用自転車エルゴメータ(POWERMAX-VII; Combi)を使用し,Wingate Anaerobic Testを実施した.対象者は体重の7.5%の負荷にて30秒間の全力ペダリング運動を行い,無酸素性運動能力の指標であるパワーとピーク回転数を測定した.対象者は,十分な安静の後に運動負荷前,運動負荷直後,運動負荷15分後に指尖より採血を行い,血中乳酸測定器(Lactate Pro; Arkray)にて血中乳酸濃度を測定した.また,フリーラジカル評価装置(Free Radical Elective Evaluator; Diacron)を使用して,derivatives of reactive oxygen metabolites テストにより血漿中ヒドロペルオキシド濃度を,biological anti-oxidant potential テストにより血漿中抗酸化力を測定した. 【説明と同意】測定の趣旨・方法について口頭および書面にて説明を行い同意を得た.本研究は広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座研究倫理委員会(承認番号:0906)の承諾を得て実施した.【結果】対象者の最大パワーは480.7±55.9 wattであり,最大回転数は139.0±13.5 rpmであった.また,安静時および運動負荷直後の血中乳酸濃度は,それぞれ2.0±1.3 mmol/L,14.6±2.3 mmol/Lであった.血漿中ヒドロペルオキシド濃度は運動負荷前後で有意な変化を認め(P = 0.024),運動負荷前と比べ運動負荷直後(P = 0.005)と運動負荷15分後に有意に増加した(P = 0.034).一方血漿中抗酸化力も運動負荷前後で有意な変化を認め(P < 0.001),運動負荷前と比べ運動負荷直後(P < 0.001)と運動負荷15分後に有意に増加した(P < 0.001).血漿中ヒドロペルオキシド濃度と血漿中抗酸化力の関連を検討した結果,いずれの測定時間においても有意な相関を認めなかった.【考察】本研究の結果から30秒の無酸素性運動負荷は運動直後の血漿中ヒドロペルオキシド濃度を増加させ,その増加は運動終了15分後も継続していることが明らかとなった.これは無酸素性運動負荷による血中乳酸濃度の上昇が一因となり,活性酸素の産生増加に影響したと考えられた.また,抗酸化力も同様に運動負荷直後に増加し,15分後も運動負荷前と比べ有意に高値を示した.これは,無酸素性運動負荷によって上昇した血漿中ヒドロペルオキシド濃度の増加に対応するため,抗酸化物質が増加した結果であると考えられた.一方,いずれの測定時間においても血漿中ヒドロペルオキシド濃度と抗酸化力に有意な相関関係を認めなかったことから,それぞれの指標の変化には運動負荷前の酸化ストレスの個体間差が影響している可能性が考えられた.【理学療法学研究としての意義】本研究により30秒間の無酸素性運動負荷は,活性酸素の産生と抗酸化物質を増加させることが明らかとなった.またその関係は運動負荷15分後も変化しないことが明らかとなった.この結果は運動負荷による酸化ストレスの変化の一端を明らかにし,酸化ストレスを増加させない運動療法を考案する一助となる研究である.
著者
馬屋原 康高 関川 清一 河江 敏広 曽 智 大塚 彰 辻 敏夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.9, 2019 (Released:2019-07-05)

高齢者の肺炎の約 80%が誤嚥性肺炎であり、誤嚥性肺炎リスクを早期に発見し対応すること が急務である。嚥下機能と咳嗽能力の関連があることが報告されており、咳嗽能力を評価する ことは重要である。その評価指標の一つとして、咳嗽時の最大呼気流量(CPF)が用いられてい る。CPF値が270 L/min以下となった場合、呼吸器感染症を発症すると、急性呼吸不全に陥る 可能性があるとされ、160 L/min以下では、気管内挿管も考慮される値と報告されている。そ の他 242 L/min 未満が誤嚥性肺炎のカットオフ値として報告されている。臨床的には、そのカッ トオフ値を参考に低下した CPF を種々の咳嗽介助法を用いてカットオフ値以上に引き上げるこ とが重要となる。さらに筆者らは、咳嗽音を用いてより簡便な咳嗽力の評価方法を提案している。 誤嚥性肺炎を予防する第 1 歩としてより幅広く咳嗽力評価が用いられることを期待する。
著者
田平 一行 関川 則子 岩城 基 河戸 誠司 関川 清一 川俣 幹雄 大池 貴行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.59-64, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19

症状の安定した慢性閉塞性肺疾患患者16名を対象に胸郭モビライゼーションを行い,即時効果について検討した。治療手技は米国Rancho Los Amigos病院で体系化された徒手胸郭伸張法を一部変更して実施し,治療前後の肺機能検査,胸郭拡張差,動脈血酸素飽和度,脈拍数,呼吸困難感を比較した。その結果,治療後に有意に第10肋骨部の胸郭拡張差は増加,心拍数は減少したが,その他の項目には変化を認めなかった。対象者の中から拘束性換気障害を合併した11症例を抽出し検討すると,更に腋窩部,剣状突起部の胸郭拡張差,肺活量,比肺活量でも有意な改善が認められた。これらは胸郭モビライゼーションによって,呼吸筋の柔軟性,関節可動性などが改善することによる効果と考えられた。慢性閉塞性肺疾患患者でも,特に拘束性換気障害をも合併した混合性換気障害の症例が胸郭モビライゼーションの良い適応になると思われた。
著者
関川 清一 小柳 翔太郎
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.43-47, 2015-10-01 (Released:2015-10-01)
参考文献数
18

本研究は,睡眠制限が中強度運動時の心拍数に与える影響を明らかにすることを目的とした.対象は健常成人男性11 名とした.運動条件は睡眠充足日,睡眠制限日の2 条件とし,最大酸素摂取量の60%に相当する負荷量にて自転車エルゴメータを用いた30 分間の定量運動負荷を実施した.測定結果は睡眠条件と経過時間を二要因とした二元配置分散分析を用いて検討した.睡眠制限により定量運動時の酸素摂取量は睡眠充足日と比較して有意に変化しなかったが(p=0.25),心拍数は有意に低値を示した(p<0.05).睡眠不足を有する健常者に対して運動処方を行う際に、心拍数を基準とした場合に、通常より生理学的運動強度が高くなる可能性がある.