著者
河村 伊久雄
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.219-224, 2008-09-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

Mycobacterium tuberculosis (MTB) is an intracellular pathogen that has evolved strategies to enable growth in macrophages. The bacterium is able to inhibit fusion of phagosomes with lysosomes through secretion of some bacterial components and modulation of host intracellular signaling pathways. Furthermore, it has been shown that phagositosed MTB is killed within macrophages after treatment with IFN-γ in vitro. However, virulent MTB is capable of surviving in macrophages in vivo and persists in host even after acquired immunity has developed. These data suggest that MTB has developed a sophisticated immune evasion mechanism. In this issue, the strategies of MTB for intracellular survival and immune evasion, which have been unraveled so far, are shown and the mechanisms are discussed.
著者
河村 伊久雄 光山 正雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

Listeriamonocytogenesの主要な病原因子であるリステリオリシンO(LLO)はコレステロール結合型膜傷害毒素であるが、我々はこのLLOが宿主Th1型サイトカイン産生を誘導することを明らかにした。また、このLLOの活性から、LLOをアジュバントとしてワクチンに応用できる可能性が考えられた。一方、細胞に対して傷害性を有するLLOはそのままin vivoに用いることはできないため、本研究では膜傷害性のないLLOのサイトカイン誘導活性の最小単位を決めると共に、抗結核ワクチンへの応用の可能性を検討した。その結果、LLOは第4ドメインを欠失させてもIFN-γ産生誘導能示したが、この第4ドメインを持たないLLOのN末端部分をさらに欠失させると、そのIFN-γ誘導能が低下することがわかった。しかし、このtruncated LLOのIFN-γ誘導活性が消失するわけではないことから、このN末端部分がサイトカイン誘導活性に必要なLLOの立体構造の維持に必要であると考えられた。また、LLOによるサイトカイン誘導活性は、LPSに低応答性のC3H/HeJでは認められなかった。さらに、CD14に対する抗体でLLOのサイトカイン誘導が阻害されたことから、LLOの刺激がLPSのシグナル伝達系を介して細胞内に伝わる可能性が考えられた。また、LLOはJ774.1細胞表面の分子量50-60kDaの分子と結合することが示され、この分子がLLOの受容体として、あるいはアクセプター分子としてLLOサイトカイン誘導に関与すると考えられた。LLOのアジュバント活性を調べるため、単独では防御免疫を誘導できないBCG死菌と共にLLOでマウスを免疫し、防御免疫が誘導できるか否かを調べた。その結果、リポソームに封入したLLOがアジュバント活性を発揮したことから、結核に対するワクチンにLLOを応用できることが示された。一方、LLOより細胞毒性の低いtruncated LLOは、リポソームへの封入効率が悪く、その投与方法を検討する必要があった。