- 著者
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河谷 はるみ
- 出版者
- 九州看護福祉大学
- 雑誌
- 九州看護福祉大学紀要 (ISSN:13447505)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.1, pp.69-77, 2012-03
社会福祉サービスが措置から契約へと移行して、利用者が事業所を選択する時代となった。こうした制度下では、国の役割としても、あるいは選択の材料としても、サービスの質の保障が重要である。これまで、サービスの質を保障する制度としては、第三者評価制度などがあるが、それだけでは十分ではない。本論文では、サービスの質について、「①物(quality)がそれとして存在するもとであるものと、②サービスの内容、中味、価値」という意味に限定し、これをサービスの質としてとらえた上で、議論をすすめて、利用者満足度調査の意義と制度的導入を提案するものである。この利用者満足度調査とは、利用者本人の想像していたサービス水準からみて、当該事業所のサービスが上だったか下だったか、あるいは本人の嗜好に合っていたかどうかの判断も含めた調査である。 利用者満足度調査は、本人の主観的判断であることは否定できない。そのため、客観的に評価されたサービスの質とは、直接には結びつかないこともある。しかし、利用者満足度調査は単に主観的な判断に過ぎないし、サービスの質の良し悪しをそのまま表しているわけではないからといって、サービスの質の向上とは無関係であるという結論にもならない。その限界を十分に認識しつつも、利用者本人の評価であることに重きをおくと、利用者にとってのサービスのあり方を考えるうえで、よい判断材料となりうる。利用者満足度調査は、まさにサービスを受けている利用者の実感であるから、それを利用して、サービスの改善をめざしていけば、利用者本人にとっての最適基準や最高基準により近いサービスになりうる。この点で、「利用者満足度調査」は意義を有すると考える。 今後、利用者満足度調査は、利用者の主観的な好みが介在しやすいという理由で簡単に切り捨てるのではなく、行政または関係者が予めサービスの質についての予備知識を利用者に与えたうえで実施したり、評価に係る質問をできるだけ客観的になるような工夫をすることを通して、サービスの質を評価する有効な方法のひとつとして活用していくべきであると考える。The Ministry of Labor & Welfare in Japan has changed the personal social service system from the admitted services by local authorities to the services by means of contracts between consumers and providers, and consumers can select the better services. Under the new system, consumers can select the better services, consequently the quality of services is very important. Up to now, there were the service evaluation system by the professional examiners in nursing home, but it was not good enough to keep the quality of social welfare services. The standard of the quality of social welfare service can divide into three levels, minimum, optimum and maximum level. It is too difficult to think about the optimum and maximum standard of the quality of social welfare service. The author wants to propose to set up the assessing consumer satisfaction system in social welfare institutions. However the consumer satisfaction includes consumer's subjective judgment. Therefore, it is likely not to relate directly the quality of service evaluated objectively. Assessing consumer satisfaction sets the frank feelings or preferred sensations of consumers. However I think this is the only system which measures a consumer's affective response to services.