著者
川瀬 啓祐 平山 久留実 河野 成史 八代田 真人 伊藤 秀一 椎原 春一
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.39-45, 2021-06-25 (Released:2021-07-10)
参考文献数
15

飼育下キリンの死因の一つとして甚急性死亡症候群が知られている。この疾病は低栄養の状態が比較的長期間続いたことに起因すると考えられている。そこで本研究ではハズバンダリートレーニングを用いてキリンの定期的な血液検査および体重測定を実施し、さらにボディコンディションスコア(BCS)と摂餌量を調べることで栄養状態の長期モニタリングを行った。血液検査では異常は認められず、平均体重は906 kgで1日当たりの平均摂餌量は原物量で16.7 kgであった。体重およびBCSは、季節に伴う摂餌量の変動により変化した。摂餌量が増加し、体重およびBCSが増加していた時期では総コレステロール、中性脂肪および尿素窒素濃度の増加が認められため、これらの血液成分はキリンにおいても栄養状態の指標となることが示唆された。一方、血中遊離脂肪酸濃度は、体重やBCSとの明らかな関連性は認められなかった。
著者
河野 成史 野上 大史 木村 藍 椎原 春一
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.146-153, 2021-12-25 (Released:2022-01-12)
参考文献数
34

飼育下キリンにおける四肢に関する疾患の1つである変形性関節症は、間欠的あるいは持続的な跛行がみられることがある。ヒトやイヌを対象とした保存療法として温熱療法が広く取り入れられているが、キリンでの報告はない。そこで本研究では、冬季に跛行がみられる変形性関節症(指骨瘤)のキリンにおいて、跛行の予防を目的としてウマの輸送用バンデージを装着し、無線式温度センサを用いて体表温度を測定することで、保温性および有効性を検証した。大牟田市動物園で飼育されているキリン1頭を対象とし、バンデージ装着時と未装着時の装着部位の体表温度、気温、跛行の有無を記録した。装着時は未装着時と比較して、装着部位の体表温度は高い値を示し、装着後は跛行がみられなくなった。バンデージの装着は肢の保温が可能であり、冬季に発生する跛行の予防に効果的であることが示唆された。