著者
川瀬 啓祐 木村 藍 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.7-14, 2018-03-30 (Released:2018-07-21)
参考文献数
31
被引用文献数
1

ツキノワグマUrsus thibetanus,キリンGiraffa camelopardalis ssp.,トラPanthera tigris ssp.,ライオンPanthera leo 2個体,サバンナモンキーChlorocebus aethiops,マンドリルMandrillus sphinxの6種7個体に対してハズバンダリートレーニングを用いた行動的保定により定期的に採血を行い,血液学検査値および血液生化学検査値を得た。得られた血液検査値を既報と比較したところ,少なくともツキノワグマ,キリン,マンドリルにおいては,ハズバンダリートレーニングを用いた行動的保定による採血はストレスが少ないと推察された。本報告は日本国内において,上記の動物種における行動的保定で得られた血液検査値の初めての報告である。また,定期採血が可能となることで,各個体の健常値を得ることができ今後の飼育管理や健康管理に役立つものと考えられる。
著者
川瀬 啓祐 冨安 洵平 伴 和幸 木村 藍 小野 亮輔 齊藤 礼 松井 基純 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.83-89, 2018-12-25 (Released:2019-03-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

ライオンPanthera leoに行動的保定下で定期的な血中プロジェステロン(P4)濃度測定,腟粘膜上皮検査,外陰部粘液漏出量の変化の調査を行った。血中P4濃度,腟スメア像は周期的な変動を示し,腟スメア像において無核角化上皮細胞が主体となる期間は,血中P4濃度は基底値を示し外陰部粘液漏出量は多量であった。ライオンの発情周期は2.6±5.0日間,発情前期は8.3±1.5日間,発情期は6.2±2.7日間,発情後期と発情休止期を合わせた期間は37.2±4.6日間と推察された。
著者
河野 成史 野上 大史 木村 藍 椎原 春一
出版者
動物の行動と管理学会
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.146-153, 2021-12-25 (Released:2022-01-12)
参考文献数
34

飼育下キリンにおける四肢に関する疾患の1つである変形性関節症は、間欠的あるいは持続的な跛行がみられることがある。ヒトやイヌを対象とした保存療法として温熱療法が広く取り入れられているが、キリンでの報告はない。そこで本研究では、冬季に跛行がみられる変形性関節症(指骨瘤)のキリンにおいて、跛行の予防を目的としてウマの輸送用バンデージを装着し、無線式温度センサを用いて体表温度を測定することで、保温性および有効性を検証した。大牟田市動物園で飼育されているキリン1頭を対象とし、バンデージ装着時と未装着時の装着部位の体表温度、気温、跛行の有無を記録した。装着時は未装着時と比較して、装着部位の体表温度は高い値を示し、装着後は跛行がみられなくなった。バンデージの装着は肢の保温が可能であり、冬季に発生する跛行の予防に効果的であることが示唆された。