- 著者
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泉田 邦彦
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-24
本研究は、中世後期における関東・奥羽の領主権力の実態(「洞」を基盤とする権力編成のあり方)を解明し、当該地域における研究概念の枠組みを再構築することを課題としている。今年度の研究実績について、以下の3点にまとめて報告する。①関連史料の調査・集積:昨年度に引き続き、研究の基盤となる史料の集積に取り組んだ。特に、室町期佐竹氏の由緒や礼節が記載された「康応記録」という史料の網羅的収集を試みた。調査成果から「「康応記録」の成立と伝来―戦国期佐竹家中の系図類作成に関する一考察―」と題した論文を執筆し、『常総中世史研究』5(茨城大学中世史研究会、2017年3月)に掲載が決定した。②戦国期北関東・南奥羽の領主権力及び領域支配構造の実態解明:昨年度研究に取り組んだ、15世紀の常陸領主に関する研究をまとめた「佐竹氏と江戸氏・小野崎氏」と題した論文が、高橋修編『佐竹一族の中世』(高志書院、2017年1月)に掲載された。16世紀における北関東の領主権力について、主に常陸江戸氏を対象に据え研究に取り組み、「洞」研究会や歴史学研究会中世史部会例会にて口頭発表を行った。一方、南奥羽の領主権力については岩城氏を対象に据え研究に取り組んだ。昨年度行った口頭発表の成果を基に「一五世紀における岩城氏の内訌と惣領」という論文を執筆し、『歴史』128(東北史学会、2017年5月)に掲載が決定した。③福島第一原子力発電所事故被災地の歴史・文化の継承の取り組み:本研究の対象地域の一つである福島県浜通り地区は、原発事故により地域コミュニティが崩壊し、歴史・文化を継承することが非常に困難な状況にある。そのため、地域に残されている歴史資料を保全し、後世に継承することが重要であると考え、資料保全活動に取り組むとともに、学会・国際シンポジウム・海外の大学にて状況を発信することで、当該地域の課題を共有することに努めた。