著者
波多野 想
出版者
琉球大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

日本統治期の台湾で開発された鉱山に関しては、従来、台湾内を中心に、地理学・地質学・建築史学など多方面から研究が行われてきた。特に、本課題の研究対象である金瓜石鉱山は、地形的・地質的特質や鉱山施設の建設過程など、鉱山の物質的側面を中心に研究成果が蓄積されてきた。しかし、これまで、植民者と被植民者が限られた空間に併存する植民地特有の現象を含め、植民地鉱山の空間的形成過程に焦点をあてた研究はみられない。そこで本研究は、植民地の社会政治的状況と地理空間の関係に着目し、差別や不平等を伴いつつ編成されたと推測される金瓜石鉱山の土地の利用と所有、および鉱山施設の建築的実態を考察し、植民地における鉱山景観の特質を明らかにすることを目的とする。特に本研究では、日本統治期に作成された地籍図や土地登記簿によって当時の土地利用と所有の状態を復原する一方で、図面類、文献資料、古写真などを用い、金瓜石鉱山に建設された鉱山施設の配置を考察する。