著者
洗 幸夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.27-32, 1998
参考文献数
13
被引用文献数
2 7

配偶の有無が3種家屋住居性ゴキブリの産卵に及ぼす影響及び単為生殖の可能性について調べた。ワモンゴキブリとクロゴキブリでは処女雌は配偶している雌より成虫の生存期間が長かったが, チャバネゴキブリでは雌成虫の生存期間には配偶の影響がみられなかった。ワモンゴキブリでは配偶している雌は平均で34卵鞘を産下したが, 処女雌は8.9卵鞘しか産下しなかった。クロゴキブリも同様で, 処女雌の産下した卵鞘数は6.2で, 配偶している雌の24.5%であった。また, 処女雌の産下した卵鞘には卵の入っていない奇形卵鞘が多数含まれ, その比率はワモンゴキブリでは64%, クロゴキブリは61%であった。これに対して, チャバネゴキブリでは処女雌の産卵数は配偶している雌とほぼ同数で, 奇形卵鞘もみられなかった。単為生殖はワモンゴキブリとクロゴキブリに観察された。ワモンゴキブリでは未受精卵鞘の孵化率は18.7%で, クロゴキブリでは16.7%であった。単為生殖で得られた子孫はすべて雌であった。チャバネゴキブリでは単為生殖が認められなかった。
著者
洗 幸夫 胡 衛軍
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.86-91, 1997-12-01

前回はイエバエ Musca domestica L. 成虫の口器の構造と機能について解説したが,今回はイエバエ成虫の胸部・腹部の構造を取り上げた。構造は前回と同様に走査電子顕微鏡写真を中心に解説する。
著者
洗 幸夫
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.99-106, 2004-12-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

超音波防鼠器の効力を確認するため,クマネズミとドブネズミを用いて室内試験を行った.慣らし飼育に比べ,20kHz±3kHz自動可変プラス衝撃波の超音波防鼠器を作動させた初日,ネズミの行動が活発となり,給餌ボックスへの進入回数は大幅に増加し,防鼠器のある給餌ボックスでの摂食量および排泄した糞量が減ったが,3~4日後その行動と摂食状況が慣らし飼育期間とほぼ同様な状態に戻った.また,2つがいのクマネズミは超音波防鼠器で30日続けて処理を受けたが,異常な行動が見られず,体重が増え,1匹の雌が妊娠した.その結果から,超音波防鼠器はクマネズミとドブネズミに一定の影響を与えることが認められたが,一過性のもので,持続期間が短いことが判明した.
著者
洗 幸夫
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.112-115, 1996-12-25

ハエはハエ目(双翅目)Dipteraに属する昆虫の総称で,一般に,ハエ,アブ,ブユ,カなどと呼ばれる昆虫の仲間で,世界中には25万種はいると推定されている。本当の意味でのハエはハエ目環縫群(Cyclorrhapha)に属するもので,日本からは約50科, 3,000 種が記録されている。しかし,その95%は人間の生活に関与していないもので,衛生害虫と考えられるものは約10科,数十種だけである。そのうち,イエバエ(Musca domestica L.)はイエバエ科(Muscidae)に属するハエで,幼虫はゴミなどの有機廃棄物に発生し,成虫になってから好んで家屋内に侵入する習性があるため,室内でよくみられる衛生害虫である。イエバエは成長が早く,25℃の場合は卵から成虫になるまでの日数は13〜14日だけで,温度が高くなると,日数はさらに短くなる。人口密度が高く,経済活動の活発な都市では大量なゴミを排出し,イエバエの生育に好条件がそろっているといえる。1965年6〜7月に夢の島,1989年秋に東京湾ゴミ埋立地で大発生したハエによる騒動の主はこのイエバエであった。本稿は著者が走査電子顕微鏡でイエバエの微細形態を観察し,成虫の複眼,単眼および触角の部分をまとめたものである。諸賢の研究に参考資料として役立てば幸いである。
著者
洗 幸夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.31-36, 1996-03-15 (Released:2016-08-23)
参考文献数
9
被引用文献数
3 5

The final (8th) instar larvae of smoky brown cockroach (Periplaneta fuliginosa S.) were used to determine the changes in hemolymph volume, blood sugar titer, fat body and content of glycogen in the fat body during the fast with or without water supply. The results are summarized as follows. 1. The cockroaches decreased in body weight during the fast, especially when the water supply was concurrently cut off. The cockroaches died of hunger in 25 to 60 days, and water supply would not help to prolong their life. 2. In the fast which was supplied with water, the hemolymph volume increased, and the percentage of hemolymph volume based on body weight rose to 30%. If the water supply was concurrently cut off, however, the hemolymph volume gradually decreased and the percentage-based body weight declined to below 8%. However, in the early days of the fast, the blood sugar titer was kept in a normal state whether there was any water supply or not. But when the fast had continued over 8 days, the blood sugar titer gradually declined in the treatment which was supplied with water and rose in that with the water supply cut off. 3. Fat body and content of glycogen in the fat body decreased during the fast whether there was any water supply or not. The content of glycogen in normal larvae was about 11-13mg/g, but after 28 days of the fast, it declined to 1mg/g. 4. Development of the cockroaches remained stagnant during the fast. But when supplied with food and water again, even the larvae of cockroach which had fasted for 32 days revived and grew to adult.
著者
洗 幸夫
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.25-28, 1994-07-20

ケナガコナダニを材料として,マィクロ波(電界強度100mW/cm^2)が畳に付着しているダニに及ぼす影響に関する実験を行った。マイクロ波照射時間が長くなるほど,ダニの死亡率が高くなる。畳の種類と部位により,ダニ死亡率に差があり,わら床畳では死亡率は内部>表面>裏面で,化学畳では表面と裏面がほぼ同様であった。しかし,60秒照射すれば,畳の種類や部位に関係なく100%の駆除効果が得られた。また,マイクロ波の照射により,畳の温度が上昇し,その発熱効果がマイクロ波のダニ駆除効果を助長していると推察される。