- 著者
-
津守 不二夫
- 出版者
- 日本比較生理生化学会
- 雑誌
- 比較生理生化学 (ISSN:09163786)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.3, pp.124-131, 2021-12-01 (Released:2021-12-10)
- 参考文献数
- 31
やわらかい生体の運動の工学的な模倣について紹介する。 骨格(内骨格や外骨格)構造のない生体の運動が一例となる。 例えば軟体動物や環形動物である。また,生体組織として繊毛や鞭毛の運動,消化管の蠕動運動といった例もやわらかい運動として挙げられる。このような個体の運動を模倣するため,柔軟な素材を用いて作られた人工構造が近年注目されており,ソフトロボティクス分野として取り扱われている。本稿では,このような構造を産業用ロボットハンドに代表される関節を有するロボットと比較しながら,その特徴について説明する。利用されている材料や手法についていくつかの例を示し,その中でも磁性粒子分散柔軟材料を用いた外部磁場駆動構造について詳しく述べる。生体模倣運動の具体例として人工繊毛および這行運動について示す。前者では生体繊毛運動に観察される非対称性やメタクロナール波の実現について,後者については進行波の発現方法について説明する。これらを通じ,生体との相違および工学的手法の現状,将来について考察したい。