著者
津守 不二夫
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.124-131, 2021-12-01 (Released:2021-12-10)
参考文献数
31

やわらかい生体の運動の工学的な模倣について紹介する。 骨格(内骨格や外骨格)構造のない生体の運動が一例となる。 例えば軟体動物や環形動物である。また,生体組織として繊毛や鞭毛の運動,消化管の蠕動運動といった例もやわらかい運動として挙げられる。このような個体の運動を模倣するため,柔軟な素材を用いて作られた人工構造が近年注目されており,ソフトロボティクス分野として取り扱われている。本稿では,このような構造を産業用ロボットハンドに代表される関節を有するロボットと比較しながら,その特徴について説明する。利用されている材料や手法についていくつかの例を示し,その中でも磁性粒子分散柔軟材料を用いた外部磁場駆動構造について詳しく述べる。生体模倣運動の具体例として人工繊毛および這行運動について示す。前者では生体繊毛運動に観察される非対称性やメタクロナール波の実現について,後者については進行波の発現方法について説明する。これらを通じ,生体との相違および工学的手法の現状,将来について考察したい。
著者
津守 不二夫
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究は5次元プリンタを開発し,応用していくことを目的とする.5次元プリンタとはこれまでの3次元プリンタ(x,y,z)に加え「それぞれの箇所における材料物性の配向(3次元ではθ,φの2方向で表される)」を制御したプリンタである.研究期間中に開発した装置はガルバノスキャナを備えたUVレーザ光源により樹脂を硬化するタイプである.この装置を利用した応用例は生体模倣構造のひとつである人工繊毛である.人工繊毛をアレイ状に出力する際,一本一本に磁気異方性を付与することにより,それぞれの動きが異なる構造を出力した.この方法により実際に自然界にで観察されるメタクロナール波を再現することが可能となった.
著者
三浦 秀士 津守 不二夫 長田 稔子 姜 賢求
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

粉末冶金によりヘテロ組織ネット構造を実現し,焼結合金鋼の超強靭化を図った.引張特性を調査し,最も引張特性に優れる最適な組成(6mass%Ni-0.4mass%C),焼結条件(1250℃×1h,真空)熱処理条件(960℃×30min溶体化後油焼入れ,200℃×1h焼戻し,Ar)を見出し,ヘテロ組織形態の最適化による超強靭な特性(最大引張強さ2040MPa,伸び8%)を得た.さらに,疲労強度は焼結鍛造鋼に匹敵する650MPaを示した.また組織観察の結果を有限要素法に反映してシミュレーションを行い,ヘテロ組織の優位性を確認した.