著者
福嶌 陽 太田 久稔 梶 亮太 津田 直人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.439-444, 2015 (Released:2015-10-29)
参考文献数
7
被引用文献数
2 4

東北地域の飼料用水稲品種においては,育苗の際に種子の発芽・出芽が不良となることが問題となっている.その原因を解明することを目的として,飼料用を含む20の水稲品種・系統を用いて,温湯消毒および低温浸種が発芽に及ぼす影響を調査した.60℃・30分の長期間の温湯消毒によって,発芽率は低下した.その低下程度は,主食用品種よりも飼料用品種,糯品種,インド型品種で大きかった.東北地域の主な飼料用品種の中では,「べこごのみ」,「べこあおば」,「いわいだわら」,「うしゆたか」,「夢あおば」で発芽率が特に低下した.また,穂発芽状態の種子は,温湯消毒によって発芽率が顕著に低下したことから,穂発芽性が“易”の飼料用品種は,種子が穂発芽状態にあり,温湯消毒によって発芽率が低下する危険性があると推察された.12℃の低温および5℃の極低温の浸種試験においては,東北地域の主要な飼料用品種の中で「べこごのみ」,「べこあおば」,「いわいだわら」が5℃の極低温によって発芽率が低下した.以上の結果から,東北地域の飼料用水稲品種の一部においては,長時間の温湯消毒や極低温の浸種によって,発芽率が低下する危険性があると推察された.
著者
福嶌 陽 太田 久稔 横上 晴郁 津田 直人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.43-52, 2018-01-05 (Released:2018-01-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

東北地域における水稲19品種を,1950年以前に育成された品種 (Ⅰ群品種),1980年以前に育成された品種 (Ⅱ群品種),1980年以降に育成され,現在,普及している品種 (Ⅲ群品種),東北農研が育成した最近の主食用品種 (Ⅳ群品種),東北農研が育成した最近の飼料用品種 (Ⅴ群品種) に分類し,その特性を少肥移植栽培において比較した.稈長は,Ⅰ群品種で長く,Ⅱ群品種,Ⅲ群品種で中程度,Ⅳ群品種,Ⅴ群品種で短かった.一方,少肥移植栽培における収量には,品種群による明確な差異は認められなかった.これらのことから,東北地域の水稲品種における収量の歴史的増加の要因としては,施肥量が増加し,それに伴い稈長がやや短く耐倒伏性がやや優れたⅡ群品種,Ⅲ群品種が普及したことが挙げられた.形質間の関係をみると,穂数が少ない品種は,葉身幅が広く,節間直径が太く,1穂籾数が多く,千粒重が重いという関係が認められた.しかし,稈長は,他の形質と密接な関係は認められなかった.これらのことから,品種育成の歴史の中で,稈長が短くなることによって,必然的に変化した形質は少ないと推察された.玄米の外観品質 (品質)・食味に関しては,Ⅰ群品種,Ⅱ群品種は,様々な品質・食味の品種が混在しているのに対して,Ⅲ群品種,Ⅳ群品種は,いずれも品質・食味が優れていると推察された.以上の結果をもとにして,東北地域における水稲品種育成の今後の方向性について論じた.