著者
経塚 淳子
出版者
The Japanese Society of Plant Morphology
雑誌
PLANT MORPHOLOGY (ISSN:09189726)
巻号頁・発行日
vol.19and20, no.1, pp.29-37, 2008 (Released:2010-06-28)
参考文献数
48

植物は胚発生以降も葉の腋に新しい茎頂メリステム(腋生メリステム)をつくり,そこから分枝を増やすことにより生涯にわたり形態形成を続ける.イネ科植物の花序はいくつかの異なるタイプの分枝で構成されており,それぞれのタイプの分枝の組み合わせが種に固有の花序の形をつくる.したがって,腋生メリステムの形成,その分化運命の決定,分枝の成長パターンにより花序の基本構造が決定される.本稿ではイネやトウモロコシなどイネ科植物を中心に,分枝パターンの決定に関わる遺伝的制御に関する知見を紹介する.
著者
経塚 淳子
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では、イネの花序形成においてメリステムの相転換を制御する遺伝子ネットワークに関する知見を得ることを目的とした。シロイヌナズナUFOのオーソログABERRANT PANICLE ORGANIZATION1 (AP01)は、UF0とは逆に、花メリステムへの転換を抑制し(Ikeda et al. 2007)、この効果はAP01発現量に依存する。また、生殖成長転換時に起こるメリステムサイズの急激な増加もAP01に依存する。これらから、AP01が、メリステムでの細胞増殖の制御を介して花メリステムへの相転換を抑制すると考え、解析を進めることにした。今年度は、RCN(イネTFL1)がAP01の下流で働き、メリステムでの細胞増殖を促進することを示した。また、RFL(イネFLORICA/LFY)がAP01と相互作用すること、AP01機能にはRFLが必須であることを確認した。AP01、RFLは生殖成長転換直後にSAM全体で発現を開始する。同様の発現パターンを示す遺伝子群に関する情報を得て、それらの機能解析を開始した。イネの花芽運命決定遺伝子を単離し、これがOsMADS34とよばれるSEPファミリー遺伝子をコードすることを明らかにした。LOGのSAM先端での発現に必要なシス配列は翻訳開始点より上流5kbまでには存在せず、翻訳開始点と第3イントロンの間に存在することを明らかにした。