- 著者
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阿部 新
- 出版者
- 国立国語研究所
- 雑誌
- 国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, pp.1-13, 2014-11
本研究では,日本語学習者の文法学習と語彙学習に対するビリーフについて,世界各地の学習者を対象とした先行研究結果を取り出して地域的特徴を考察した。さらに,先行研究で明らかになっているノンネイティブ日本語教師のビリーフの傾向,日本人大学生や日本人教師のビリーフ調査の結果とも比較した。その結果,文法学習も語彙学習も大切だというビリーフに学生が強く賛成し,現地のノンネイティブ日本語教師と同じ傾向を示す地域(南アジア,東南アジア),そのようなビリーフに学生は賛成するが,それほど強く賛成するわけではなく,現地のノンネイティブ日本語教師の傾向とも近い地域(西欧,大洋州),前2者の中間程度の強さで学生がビリーフに賛成し,教師のビリーフとはやや異なる傾向の地域(中南米,東南アジア・東アジアや大洋州の一部)など,地域による違いが見られた。さらに,日本人の結果を見てみると,日本人大学生や教師歴がごく短い日本人教師は,文法学習も語彙学習も大切ではないというビリーフを持ち,世界各地の学習者とは異なる傾向を示す。一方,経験豊富な教師は世界各地の学習者と同じような傾向であることも分かった。最後に,こういった傾向を把握したうえで,文法・語彙のシラバス・教材作成と普及を行う必要があることを指摘した。