著者
森山 梅千代 浜 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.212-221, 2011-06-30 (Released:2012-07-01)
参考文献数
23

発症から 8 ヵ月を経過している発語失行および口腔顔面失行を伴う重度運動失語例 (46 歳男性) に,失語症訓練と構音訓練を 4 年経過時まで (実質 3 年間) 実施した。訓練内容および経過を示し,標準失語症検査 (以下 SLTA) および〈発語失行症〉話しことばの評価票,単音節 (109 音節) 検査によって言語機能および構音能力の推移を評価し検討した。その結果,初診時と4 年経過時とを比較すると,SLTA の「話す」「書く」項目と,会話明瞭度の得点が上がり,随意的に構音可能な音が増加した。意思伝達手段はゼスチャーと描画から発話と書字に改変した。SLTA の成績等の経過から,表出面の回復は 1 年を経過した頃から始まり,4 年経過時にも継続しており,回復は長期にわたることが示された。このことから,40 歳以上の重度運動失語例であっても,訓練効果は発症後短期間にのみ見られるのではなく,長期にわたることが示唆された。
著者
浜 雄一郎
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.284-288, 1996-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2

「サ」行構音障害が認められる成人の歯間性構音者16名および正常構音者16名について, VCV音節からなる検査音“asa”の子音部 [s] のFFTによるパワースペクトログラム分析を行い, スペクトル包絡線で囲まれた部分の高域部 (4kHz~8kHz) と低域部 (0kHz~4kHz未満) の面積比を求め, 正常構音 [s] と歯間性構音 [θ] の音響学的相違について検討を行った結果, 以下の結論を得た.1. FFTによるスペクトル包絡線で囲まれた部分の高域部と低域部の面積比を求めることにより, 子音 [s] の正常構音群と歯間性構音群を分離でき, [s] 構音の特徴を客観的に評価することが可能となった.2. 正常構音 [s] では, 低域部に対する高域部の音声スペクトルの面積比が1.35以上であった.3. 歯間性構音 [θ] では, 低域部に対する高域部の音声スペクトルの面積比が1.30以下であった.