著者
浜口 允子
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 = Monthly journal of Chinese affairs (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.15-30, 2013-06

日中戦争期,時の華北政権にとって最大の課題は,この地を如何に維持し統治するか,拡がりつつある「解放区」に抗して,民心の掌握に努めつつ治安をどう保つか,であったと思われる。では,そのために政権は何をしたのか。日本はそこで如何なる役割をはたしたのか。その下で基層社会はどう変ったのか。本稿は,これまで用いられることの少なかった『中国農村慣行調査』公租公課関連資料を詳細に読むことにより,こうした時代の動向と,関連して動いた華北基層社会の変化の実相を明らかにし,更にそれがその後の歴史とどう関わるのか考察しようとするものである。
著者
浜口 允子
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.1-18, 2015-09-25

本稿は,日中戦争期に,華北政権がいかなる地方統治を行ったか,それは基層社会にどのような影響をもたらしたかを主たる課題として問うなかで,とくに物流と交易の仕組みに着目し,河北省で1941年から始められた交易場制度について考察したものである。そしてそれが,旧来の包税制度を廃止し,取引税を直接徴収するための措置と関わるものであったことを明らかにした。それは,政権による財政基盤の強化策が物流の場に及んだものであり,その過程では統治の末端を担う新たな人材をも生みだしたのであった。この変化はその後の社会にも影響を与えたと考えられる。