著者
五十嵐 治義 佐藤 陽子 浦井 仁子 滝田 芳子 遠藤 初恵 浜田 節男 川崎 徹
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.238-245, 1980

benzoic acidとphenylacetic acidにγ-dialkylamino-β-hydroxypropyl (〓) を導入してesterificationした化合物10種を新たに合成し, それらの抗炎症作用始め腸管作用, 鎮痛作用などの薬理作用に, かなりの活性を有することについてすでに報告した。今回は, これら新化合物の化学構造と局所麻酔作用との相関性を検索することを目的として, 家兎による表面, 浸潤麻酔作用などの検定を行なった。その結果, 全化合物とも, 表面麻酔作用よりも浸潤麻酔作用の持続時間が長かった。また, alkylbenzoate誘導体 (II群) が, alkylphenylacetate誘導体 (I群) よりも表面, 浸潤麻酔作用とも持続時間の延長が認められた。一方, 麻酔導入においては, II群がI群よりもsharpであり, 消失し始めから完全に消失するまでの麻酔作用凝陽性の過程は両群とも優位の差は認められなかった。両群間の種々な作用における差異について, 立体分子モデルを用いて, 立体構造的および電子論的考察を加えた。すなわち, II群がI群よりも, 化学的, 立体構造的に安定性が大であること, また, receptorとの親和性が強いことなどが推論された。一方, 毒性面からこれらの化合物は, 普通薬に属していると思われる。
著者
菅島 正栄 岡田 英俊 松渕 志帆 佐々木 重夫 中島 大誠 川島 功 浜田 節男
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.9-15, 2008-02-29 (Released:2018-03-31)
参考文献数
16

近年,接着技術の進歩により歯冠修復にレジンを応用する症例は多くなってきた.これまでの研究により歯面処理時において唾液や血液によって汚染されると,それらが接着阻害因子となり,接着強さは低下することが報告されている.実際の臨床において,止血剤は出血した部位に作用させた後,水洗,乾燥して除去する.しかし,止血剤自体が処理後の被着面に残存することによって,ボンディング材の歯質に対する接着強さに影響を及ぼすことが危惧された.そこで今回,さらにボスミン®(第一三共製薬)の歯面処理効果について確認するため,リン酸処理,希塩酸処理を行った象牙質表面を対照とし,原子間力顕微鏡(以下,AFMと略す)による象牙質の表層における構造変化の観察,そしてボスミン®の作用時間による接着強さの違いについて比較検討を行った.AFM観察した結果,実験群を無処理のものをコントロールとし,リン酸処理,希塩酸処理,およびボスミン®処理をそれぞれ比較すると,リン酸処理,希塩酸処理を行ったものは象牙質表層の凹面は少なくなり,より平坦な像が観察された.しかし,ボスミン®処理においては,15秒間処理では無処理のものと比較し,ほぼ均一な凹凸が測定面一面に観察された.1分間処理においては15秒間処理のものと比較すると微細な凹凸形が少ない像を示したが,無処理のものよりは凹凸を示す像が観察された.接着強さ試験において,対照であるリン酸処理群,希塩酸処理群は無処理群と比較し有意に低い値を示したが,一方,実験群であるボスミン®15秒間作用群,1分間作用群は無処理群と比較し有意に高い値を示した.以上のことから,ボスミン®には歯面処理効果があり,その結果接着を強めることが明らかとなった.