著者
浜西 千秋
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.52-57, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

腰部・下肢症状を有する外来患者49例で,用手的筋力測定装置により座位において躯幹の引き起こし筋力を測定したところ,無症状対照群の平均値,男性116N,女性78Nに対し,男性17例で86N,女性32例で64Nと著明に低下していた.外来で座位で躯幹を後傾させる,あるいは後傾させて両足をあげるなどの極めて簡便な「コルセット筋」訓練を指導し,経過を追って測定したところ,女性15例で51Nから78Nへ,男性9例では平均69Nから95Nへとそれぞれ筋力は増加し,これら24例のうち17例で腰痛や神経症状の改善が認められ,また病態や治療に対する不安感が大きく減少していた.内外腹斜筋,腹横筋,多裂筋など腹腔周囲「コルセット筋」の持続運動や筋力強化は慢性腰痛の予防と治療のみならず,腰椎由来の神経症状の治療や “ぎっくり腰” の予防にも有用であり,また筋力の即時数値評価は患者の訓練に対するコンプライアンスを高めるのに効果的であった.
著者
浜西 千秋 福田 寛二 野中 藤吾 森 成志 山崎 顕二
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

外部環境の変化により生じる機械的刺激に対して,細胞が種々の応答を行うことにより,生体はその変化に適応してきた.このような生命の神秘を解明し,ティッシュエンジニアリングいう最新の工学手技を利用して,治療に応用しようとするのが本研究の目的である.脚延長術は骨や筋肉・血管といった軟部組織を伸張して、組織を増殖・改変させる技術である.そこで骨芽細胞を対象に,脚延長時と同じ牽引負荷におけるフリーラジカル産生の有無をin vitroで検討することを第1の目的とした.また脚延長仮骨をin vivoのモデルとして使用し、生体内での調節機構を検討することを第2の目的とした.平成16年度にはFlexercell strain unit(FX-3000)を用いて骨芽細胞に周期的牽引負荷を加え,フリーラジカル産生を検討した.牽引負荷によりフリーラジカルおよびその中和剤であるSODの産生亢進を認めた.このことは,骨芽細胞に対する機械的刺激がフリーラジカルという調節因子を介して何らかの細胞応答に変換されている可能性を示唆している.平成17年度はこの調節機構mRNAレベルでの確認した.さらに,細胞内のフリーラジカルを速やかに増加させる薬剤であるパラコートを使用して,細胞内でのレドックス制御を検討した.これにより,細胞内フリーラジカルがSOD活性を自己調節しているという興味深い知見を得た.平成18年度はこれらの所見を総合し,機械的ストレスによって誘導される活性酸素およびSOD誘導の機構について解析した.細胞膜透過性のSOD存在下で骨芽細胞に機械的牽引負荷を加えたところ,フリーラジカルの産生が抑制されるとともに,SOD活性も抑制された.このSOD活性の抑制はmRNAレベルでも明らかであった.したがって,骨芽細胞に対する機械的刺激が,細胞内のフリーラジカル増加を介してSOD誘導を調整していることが証明された.