著者
岡島 聡 東本 有司 本田 憲胤 前田 和成 白石 匡 杉谷 竜司 山縣 俊之 西山 理 東田 有智 福田 寛二
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.246-251, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【背景と目的】慢性呼吸器疾患患者の日常生活訓練を実施する際,指導を正しく理解できないことや,自身の動作に固執することをしばしば経験する.慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者で前頭葉機能が低下していると報告はあるが,間質性肺炎(以下IP)患者の報告はない.そこで,IP患者を対象に前頭葉機能を検討し,COPD患者やコントロール患者と比較した.【対象と方法】当院で入院や外来通院しているIP患者20名,COPD患者48名,コントロール患者12名を対象とした.前頭葉機能検査はFrontal Assessment Battery(以下FAB)を用いて検討した.【結果】FAB合計点数はコントロール群(16.8±1.3点)と比較して,IP群(14.2±1.7点),COPD群(14.5±1.7点)ともに低値であった.FAB項目のなかでは,類似性,語の流暢性課題がIP群,COPD群ともに低値で,GO/NO-GO課題はCOPD群で低値であった.【結語】COPD患者と同様に,IP患者の前頭葉機能は低下していた.項目別でも,IP患者とCOPD患者の低下パターンは類似していた.
著者
合田 明生 福田 寛二 上田 昌美 本田 憲胤 大城 昌平
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.102-103, 2013-04-20

【目的】本研究は,理学療法における運動処方の効果を神経細胞レベルで検討した。近年,運動が神経細胞の分化,成熟,生存の維持を促進する神経成長因子ファミリーの一種である脳由来神経栄養因子(Brain-derived Neurotrophic Factor:BDNF)を増加させ,認知機能を維持改善する可能性が示唆されている。ヒトにおける運動時のBDNF分泌増加のメカニズムの要因として,有酸素運動による交感神経活動亢進がBDNFの分泌を増加させることが仮説として考えられ,本研究ではその仮説検証を行った。【方法】健常成人男性10名を対象とした。対象者は,最高酸素摂取量の60%の中強度有酸素運動を30分間実施した。運動の前後で採血を実施し,末梢血液中のBDNF,ノルアドレナリン(Noradorenaline:NA)を測定した。運動中の交感神経活動指標としてNAを用いた。以上の結果から,運動前後のBDNF変化と交感神経活動の変化(NA)の関連性を検討した。【結果】中強度の有酸素運動介入によって,10名中5名では運動後に血清BDNFが増加したが,運動前後のBDNF量に有意な差は認められなかった(p=0.19)。またBDNF変化量と交感神経指標の変化の間(r=0.38,p=0.27)には有意な相関は認められなかった。【結論】健常成人男性における30分間の中強度有酸素運動は,末梢循環血流中のBDNFを有意に増加させず,運動によるBDNF変化には,交感神経活動は関連しないことが示唆された。
著者
白石 匡 東本 有司 杉谷 竜司 水澤 裕貴 藤田 修平 西山 理 工藤 慎太郎 木村 保 福田 寛二 東田 有智
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.453-459, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
24

【はじめに・目的】呼吸リハビリテーションにおいて,吸気筋トレーニング(IMT)の有効性は確立されつつある.しかし,横隔膜の動きを考慮した適正負荷圧の設定方法は確立されていない.本研究の目的は,横隔膜のトレーニングにおいて最も効果的な,IMTの負荷圧を検証することである.【方法】対象は健常男性20名.クロスオーバーデザインで実施.IMT負荷圧を最大吸気圧(PImax)の30%,50%,70%に無作為割付け,1週間の間隔をあけて異なる負荷圧で計3回IMTを実施.超音波診断装置(M-mode)にて最大吸気位から最大呼気位までの横隔膜移動距離(Maximum Diaphragm excursion: DEmax)を測定した.【結果】30%PImaxによるIMT実施でDEmax(r=0.31,p<0.05),IC(r=0.64,p<0.05)に有意な増加を認めた.50%PImaxにおいてはDEmax(r=0.82,p<0.01),VC(r=0.34,p<0.05),IC(r=0.74,p<0.05)に有意な増加を認めた.【結論】健常者に対するIMTでは,中等度負荷が最も横隔膜に対して効果がある可能性が示唆された.
著者
寺田 勝彦 武田 芳夫 福田 寛二 田中 清介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.362-367, 1998-09-30 (Released:2018-09-25)
参考文献数
19
被引用文献数
4

人工股関節置換術後のトレンデレンブルグ徴候の出現の有無を,股関節外転筋・内転筋の筋機能から明らかにすることを目的とした。対象は当院で変形性股関節症の診断のもとに,人工股関節置換術を施行した35例39関節(トレンデレンブルグ徴候陽性18例20関節,陰性17例19関節)であった。術後8週時の股関節の筋機能を,等速運動機器で測定した。得られた筋トルク曲線より,筋力的要因として股関節内外転0°の外転筋・内転筋トルク値,また筋収縮的要因として外転筋・内転筋のピークトルク値までの立ち上がり時間の4指標を求めた。トレンデレンブルグ徴候陽性群および陰性群間には,外転筋・内転筋トルク値に差は認めなかった。しかし,トレンデレンブルグ徴候陽性群では外転筋の立ち上がり時間が有意に延長し,内転筋の立ち上がり時間が有意に短縮していた。また筋機能から,トレンデレンブルグ徴候陰陽性の判別の可能性を検討するために判別分析を行った。外転筋トルク値と立ち上がり時間の2指標だけでは,トレンデレンブルグ徴候陰陽性の判別は明確ではなかった。しかし,内転筋トルク値と立ち上がり時間を加えた4指標においてはトレンデレンブルグ徴候陰陽性の判別が明確で,39関節中36関節(92%)で判別可能であった。したがって,人工股関節置換術後のトレンデレンブルグ徴候の出現の有無は外転筋力の低下だけで判断できず,個々の外転筋・内転筋の筋機能として,両筋の力と立ち上がり時間の不均衡,すなわち瞬発力の不均衡によって引き起こされることが示唆された。
著者
白石 匡 東本 有司 澤田 優子 杉谷 竜司 水澤 裕貴 釜田 千聡 西山 理 木村 保 東田 有智 福田 寛二
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.103-107, 2019-05-31 (Released:2019-06-28)
参考文献数
16

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)は,呼吸困難により身体活動量(以下PA)の減少をきたす.近年,COPD患者において自己管理の重要性が注目されている.本研究の目的はCOPD患者における自己管理能力とPAの関係を検討することとした.【方法】当院にて外来呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)を実施した,GOLD stage 2~4期の安定期のCOPD患者30例を対象とした.自己管理能力はLINQで評価し,PAは3軸加速度計で計測した.評価は呼吸リハ介入時と介入後12週以降に実施した.呼吸リハ前後でLINQの項目に改善が見られた群を改善群とし,改善が見られなかった群を非改善群とした.【結果】改善群・非改善群ともに,6MWDに改善を認めた(p<0.05).改善群ではPAに改善を認めた(p<0.05)が非改善群ではPAが改善しなかった.【結論】身体活動を改善するためには運動療法のみではなく,自己管理能力を獲得させ,生活習慣を変えていくことが重要である.
著者
浜西 千秋 福田 寛二 野中 藤吾 森 成志 山崎 顕二
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

外部環境の変化により生じる機械的刺激に対して,細胞が種々の応答を行うことにより,生体はその変化に適応してきた.このような生命の神秘を解明し,ティッシュエンジニアリングいう最新の工学手技を利用して,治療に応用しようとするのが本研究の目的である.脚延長術は骨や筋肉・血管といった軟部組織を伸張して、組織を増殖・改変させる技術である.そこで骨芽細胞を対象に,脚延長時と同じ牽引負荷におけるフリーラジカル産生の有無をin vitroで検討することを第1の目的とした.また脚延長仮骨をin vivoのモデルとして使用し、生体内での調節機構を検討することを第2の目的とした.平成16年度にはFlexercell strain unit(FX-3000)を用いて骨芽細胞に周期的牽引負荷を加え,フリーラジカル産生を検討した.牽引負荷によりフリーラジカルおよびその中和剤であるSODの産生亢進を認めた.このことは,骨芽細胞に対する機械的刺激がフリーラジカルという調節因子を介して何らかの細胞応答に変換されている可能性を示唆している.平成17年度はこの調節機構mRNAレベルでの確認した.さらに,細胞内のフリーラジカルを速やかに増加させる薬剤であるパラコートを使用して,細胞内でのレドックス制御を検討した.これにより,細胞内フリーラジカルがSOD活性を自己調節しているという興味深い知見を得た.平成18年度はこれらの所見を総合し,機械的ストレスによって誘導される活性酸素およびSOD誘導の機構について解析した.細胞膜透過性のSOD存在下で骨芽細胞に機械的牽引負荷を加えたところ,フリーラジカルの産生が抑制されるとともに,SOD活性も抑制された.このSOD活性の抑制はmRNAレベルでも明らかであった.したがって,骨芽細胞に対する機械的刺激が,細胞内のフリーラジカル増加を介してSOD誘導を調整していることが証明された.