著者
小椋 たみ子 浜辺 直子
出版者
言語科学会
雑誌
Studies in Language Sciences (ISSN:24359955)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.1-18, 2021-12-23 (Released:2021-12-21)
参考文献数
40

本研究では前言語期から文法出現期の9ヶ月から24ヶ月児の母子の遊び場面の観察録画データから、第一に、母親の事物をあらわす育児語と動作をあらわす育児語の特徴を音韻面と形態統語情報から明らかにし、子どもの年齢による育児語使用に違いがあるか否か検討した。育児語の特徴は、事物育児語、動作育児語とも特殊モーラを含む語や自立モーラの反復が大部分であった。形態統語情報については、事物育児語は格助詞を伴うあるいは格助詞の省略された育児語が単独の事物育児語より多く発せられていた。動作育児語は「する」の動詞や動作誘発助詞を伴っていた。事物育児語、動作育児語とも子ども年齢で有意差はなかった。第二に、養育者は成人語と育児語で子どもに働きかけていることから、事物語と動作語の育児語率(育児語/(育児語+成人語))がその後(33ヶ月)の子どもの幼児語、成人語の事物語、動作語獲得へ及ぼす効果と効果をおよぼす月齢について検討した。その結果、14ヶ月児の母の事物育児語率タイプ、トークンは、33ヶ月事物成人語獲得に正の効果を、また、14ヶ月児の母親の動作育児語率トークンが33ヶ月動作幼児語に正の効果を及ぼしていた。一方、24ヶ月児の母親の動作育児語率は33ヶ月の動作幼児語、動作成人語に負の効果を及ぼしていた。母親の育児語の言語入力の効果は事物語、動作語で異なり、また、子どもの年齢においても異なっていた。
著者
小椋 たみ子 増田 珠巳 浜辺 直子 平井 純子 宮田 Susanne
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.153-165, 2019 (Released:2021-09-30)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本研究は9,12,14,18,21,24ヶ月児の158名の母親の5分間の発話を分析し,対乳児発話の語彙面にあらわれた特徴を明らかにした。また,このうち127名の子どもの言語発達の追跡調査を33ヶ月時点で行い,対乳児発話がその後の子どもの言語発達へいかなる効果を及ぼすかを明らかにした。対乳児発話の種類を育児語(名詞系,動作名詞系,形容詞系,コミュニケーター系),オノマトペ,接尾辞の付加,音韻転化の4種類に分類し,タイプとトークンの発話単位頻度を算出した。観察時点ではオノマトペだけが年齢間で有意な差があった。各対乳児発話の語彙の内容を詳しくみると,オノマトペは反復,および特殊拍がついたオノマトペ標識の頻度が高かった。育児語は動作名詞系が有意に高かった。音韻転化は語の一部が拗音で発音されていた。対乳児発話のその後の子どもの言語発達への効果は,14ヶ月時点の母親の育児語が追跡33ヶ月の子どもの成人語表出語数を予測していた。育児語は,子どもが語と対象の間の恣意的な結びつきのルールを学習する足場づくりの役割をもっていることを育児語の類像性の観点から考察した。