著者
大伴 潔 宮田 Susanne 白井 恭弘
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.197-209, 2015 (Released:2017-09-20)
参考文献数
39
被引用文献数
1

日本語を母語とする子どもにおいて動詞の多様な形が生産的に使われるようになる過程や順序性の有無については,ほとんど明らかになっていない。本研究は,子どもの発話を縦断的に分析することにより,動詞語尾レパートリーの獲得の順序性の有無を明らかにするとともに,母親が使用する動詞の表現形との関連性について検討することを目的とした。研究1では,4名の男児の自発話の縦断的データに基づき,1歳から3歳までの期間の動詞語尾レパートリーを分析したところ,動詞語尾形態素の獲得に順序性が存在することが認められた。順序性を規定する要因として,養育者からの言語的入力,形態素が表す意味的複雑さ,形態素の形態論的・統語論的な複雑さが考えられた。研究2では,3組の母子を対象に母親の動詞語尾形態素を分析し,子どもの形態素獲得の順序性と母親からの言語的入力との関連について検討した。その結果,子どもの形態素獲得順序が母親の形態素使用頻度およびタイプ数と相関するだけでなく,母親同士の間でも形態素使用頻度・タイプ数について有意な相関が認められた。この知見は,母親の発話が文脈に沿った形態素使用のモデル提示となっていることを示すとともに,自由遊び場面での話者の観点や発話の語用論的機能に関する一定の傾向があり,意味内容と発話機能に関するこのような傾向が子どもの形態素獲得の過程に反映する可能性が示唆された。
著者
宮田 Susanne 伊藤 恵子 大伴 潔 白井 英俊 杉浦 正利 平川 眞規子 MACWHINNEY Brian OSHIMA-TAKANE Yuriko SHIRAI Yasuhiro 村木 恭子 西澤 弘行 辰巳 朝子 椿田 ジェシカ
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1歳から5歳までの日本語を獲得する子どもの縦断発話データに基づき発達指標DSSJ(Developmental Sentence Scoring for Japanese)を開発し、この日本語の発達指標を84人の子どもの横断データ(2歳~5歳)にあてはめ、標準化に向けて調整を行った.DSSJはWWW上のCHILDES国際発話データベースの解析プログラムCLANの一部として一般公開されている.
著者
小椋 たみ子 増田 珠巳 浜辺 直子 平井 純子 宮田 Susanne
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.153-165, 2019 (Released:2021-09-30)
参考文献数
39
被引用文献数
1

本研究は9,12,14,18,21,24ヶ月児の158名の母親の5分間の発話を分析し,対乳児発話の語彙面にあらわれた特徴を明らかにした。また,このうち127名の子どもの言語発達の追跡調査を33ヶ月時点で行い,対乳児発話がその後の子どもの言語発達へいかなる効果を及ぼすかを明らかにした。対乳児発話の種類を育児語(名詞系,動作名詞系,形容詞系,コミュニケーター系),オノマトペ,接尾辞の付加,音韻転化の4種類に分類し,タイプとトークンの発話単位頻度を算出した。観察時点ではオノマトペだけが年齢間で有意な差があった。各対乳児発話の語彙の内容を詳しくみると,オノマトペは反復,および特殊拍がついたオノマトペ標識の頻度が高かった。育児語は動作名詞系が有意に高かった。音韻転化は語の一部が拗音で発音されていた。対乳児発話のその後の子どもの言語発達への効果は,14ヶ月時点の母親の育児語が追跡33ヶ月の子どもの成人語表出語数を予測していた。育児語は,子どもが語と対象の間の恣意的な結びつきのルールを学習する足場づくりの役割をもっていることを育児語の類像性の観点から考察した。
著者
大伴 潔 宮田 Susanne 白井 恭弘
出版者
日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.197-209, 2015

日本語を母語とする子どもにおいて動詞の多様な形が生産的に使われるようになる過程や順序性の有無については,ほとんど明らかになっていない。本研究は,子どもの発話を縦断的に分析することにより,動詞語尾レパートリーの獲得の順序性の有無を明らかにするとともに,母親が使用する動詞の表現形との関連性について検討することを目的とした。研究1では,4名の男児の自発話の縦断的データに基づき,1歳から3歳までの期間の動詞語尾レパートリーを分析したところ,動詞語尾形態素の獲得に順序性が存在することが認められた。順序性を規定する要因として,養育者からの言語的入力,形態素が表す意味的複雑さ,形態素の形態論的・統語論的な複雑さが考えられた。研究2では,3組の母子を対象に母親の動詞語尾形態素を分析し,子どもの形態素獲得の順序性と母親からの言語的入力との関連について検討した。その結果,子どもの形態素獲得順序が母親の形態素使用頻度およびタイプ数と相関するだけでなく,母親同士の間でも形態素使用頻度・タイプ数について有意な相関が認められた。この知見は,母親の発話が文脈に沿った形態素使用のモデル提示となっていることを示すとともに,自由遊び場面での話者の観点や発話の語用論的機能に関する一定の傾向があり,意味内容と発話機能に関するこのような傾向が子どもの形態素獲得の過程に反映する可能性が示唆された。
著者
中 則夫 宮田 Susanne 寺尾 康
出版者
大阪学院大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

(I)日本語における語彙の発達に関する予備調査本年度は、日英語のデータ整備、および少数の被験者を対象にした予備分析を行った。その結果、観察した四児にはいくつかの傾向がみられた。(11)タイプはすべて名詞が一番多い(12)間投詞類が多く形容詞、動詞の活用語が少ない(10%以下)グループがある(13)動詞の活用語が多く(20%程度)、間投詞類が少ない(10%以下)グループがある(14)上位を占める品詞はばらつきがあり、個人差により出現しない品詞もある(15)(12),(13)の結果は大久保のいう名詞型、動詞型にほぼ一致する(16)活用語のタイプが多いときはト-クンも多い(動詞は24%以上(II)幼児のメンタル・レキシコンを探る手がかり本年度行った、筆者が所属する大学の保育科の学生に依頼して行った予備的な実例収集では、(1)のような語彙の代用タイプの誤りは34例(総数750例)観察された。全体的な傾向としては、子どもの誤りであっても意図した語と誤った語の文法範疇は100%一致していること、誤りの要因では(2)に示すような、音韻的な類似性に影響されたと思われるものが多く観察された。(2)a.ハンバーグ(段ボール:1.6)b.オイナリ(かみなり:3.0)c.ガイコツ(がいこく:4.0)また、(1d)のような、文脈的な語彙代用は子どもの誤りには観察できなかった。語彙レベルに限らず、音韻的な誤りにおいても文脈の影響を受けていると思われる誤りはきわめて少なかった。このことは、子どもの記憶容量の限界からくるのか、発話部門内の操作の容量(音韻的な交換タイプは多く観察される。これも一種の文脈的な誤りとみるならば例外となる。)によるのか今後の課題としたい。