- 著者
-
平井 純子
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2009, pp.47, 2009
<b>1.山村留学について</b><br>山村留学とは,「自然豊かな農漁村に,小中学生が一年間単位で移り住み,地元小中学校に通いながら,さまざまな体験を積む活動」である(NPO法人全国山村留学協会)。山村留学は留学児童の心身の成長だけでなく,地域の子どもたちへの刺激となり,地域住民の交流が促され,さらに外部からの眼が地域の良さの再発見をも引きだすことにもつながる。1980年代後半,地方では過疎化に伴う学校統廃合を回避するため,山村留学事業を運営し地域を活性化していこうとする地域や自治体が増えた。同時期,都市部においては不登校や校内暴力などの学校教育への不安などによる社会的な不安が募った。地域と都市部におけるこれらの動きにより,山村留学事業は開始後10年ほど経過したこのころから増加し始め、社会的関心も高まり、一定の評価がなされてきた。一方で山村留学事業を実践したものの、数年のみで中止してしまう地域も少なくない。<br><b>2.研究目的</b><br>山村留学については,制度の紹介記事や体験ルポタージュのようなものが多く見られるが、学術的な研究が少なく今後の課題となっている。山村留学の形式には,里親型・寮型・学園型・親子型の4パターンがあるが,北海道で多く実施される親子留学での研究蓄積が希薄である。また,留学の児童生徒数は2004年をピークに減少しており,受け入れ児童数の多い学校と少ない学校の二極化が進んでいる。こうした状況から,個別の山村留学を検証していくことが必要となっている。本報告では,山村留学の具体的な事例として,親子留学を行う北海道斜里町峰浜地区の峰浜小学校を取り上げ,当該地区での山村留学と学校教育の現状,山村留学生とその家族が与える地域社会への影響について,具体例をあげつつ検討した。詳細は当日報告する。