著者
工藤 和輝 二階堂 泰隆 浦上 英之 佐浦 隆一
出版者
一般社団法人 大阪府理学療法士会生涯学習センター
雑誌
総合理学療法学 (ISSN:24363871)
巻号頁・発行日
pp.2023-002, (Released:2023-01-17)
参考文献数
38

【はじめに】脳卒中後の姿勢定位障害の1つであるLateropulsion(以下,LP)は,主に前庭機能の障害が関与するとされている。今回LPを認めた症例に対し,前庭リハビリテーションとして,対象者自身が頭部と眼球の運動を行うGaze Stability Exercise(以下,GSE)を試みた。【症例紹介】脳梗塞(左視床・左中脳赤核近傍)を発症した80歳代女性である。初期(発症3–5日目)にはめまい症状があり,Head Impulse Test(以下,HIT)が陽性であった。身体症状としては,右側へのLPを認め(重心動揺計で測定した開脚立位時の左右荷重比[開眼:左38%/右62%,閉眼:左36%/右64%]),Functional Gait Assessment(以下,FGA)は11点と歩行中の動的バランスの低下を認めた。病巣部位と評価結果から,前庭感覚の上行路の損傷による前庭機能の障害が原因と考え,GSEを3日間実施した。【結果】最終(発症11日目)にはめまいが軽減し,HITは陰性となった。さらに,開眼時のみLPが消失し(開眼:左46%/右54%,閉眼:左35%/右65%),FGAスコアが21点と歩行中の動的バランスも改善した。【まとめ】脳卒中後のLPやめまい,動的バランスに対して,GSEが有効である可能性が示唆された。
著者
石田 直也 二階堂 泰隆 浦上 英之 黒田 健司 冨岡 正雄 佐浦 隆一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.753-757, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
30

〔目的〕異なる速度条件での歩行分析から歩行障害の原因を推測し,前庭リハビリテーションを行った結果を報告する.〔対象と方法〕対象は54歳男性の多系統萎縮症(MSA-C)患者である.異なる速度条件(至適・高速・低速)で歩行分析を行ったところ,低速度条件で歩行変動が増大したため,小脳片葉小節葉の病変による平衡機能障害が歩行障害の原因と判断し,前庭リハビリテーションを9日間実施した.〔結果〕重心動揺検査とFunctional Gait Assessmentの成績が向上し,治療前に観察された低速歩行時の歩行変動が減少した.〔結語〕MSA-C患者に対して歩行変動の速度依存性に着目し,前庭リハビリテーションを行うことで歩行不安定性の改善につながった.