- 著者
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浮橋 明洋
田中 創
西上 智彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.H2-23_1, 2019 (Released:2019-08-20)
【背景】変形性関節症(膝OA)において,neglect-like症候群,身体イメージの異常,固有受容感覚の低下などの身体知覚異常が認められることがある.The Fremantle Knee Awareness Questionnaire(FreKAQ)は,膝OA患者における9項目から構成される膝の身体知覚異常の評価であり,一元性,信頼性や再現性が認められている.また,FreKAQスコアは疼痛や能力障害と関係があることが明らかになっている.しかし,どの項目がFreKAQにおける特性を適切に反映しているかは明らかではない.本研究の目的は項目反応理論(Item Response Theory:IRT)を用い,FreKAQの識別力の高い項目を明らかにすることである.【方法】本研究は膝OA患者303例(男性66例,女性237例,69.1±9.9歳)を対象とし,IRTにおける段階反応モデルによって,FreKAQにおける識別力及び項目反応カテゴリ特性曲線を推定した.識別力は0.65以下がlow,0.65-1.34がmoderate,1.35-1.69がhigh,1.7以上がvery highとした.項目反応カテゴリ特性曲線は各カテゴリの反応段階のカーブがピークを表出しているか検討した.統計解析はMplus 8を用いて行った.【結果(考察も含む)】FreKAQのすべての項目においてmoderateからvery highの識別力が認められた.特に項目5(日常生活(家事や仕事など)をしている時に,自分の膝がどのような姿勢になっているか正確に分からない)と,項目6(自分の膝の輪郭を正確にイメージすることができない)は,高い識別力であった(それぞれ2.00,1.70).項目9(私の膝は右側と左側で感じ方が違う(一方が重たく感じたり,太く感じる))の識別力は,他の項目と比較して相対的に低かった(0.83).項目反応カテゴリ特性曲線において,項目5,6については反応段階のカーブがピークを表出しているが,一方で,項目9ではピークを表出されることなく,次の反応段階の確率曲線にとってかわっていた.FreKAQにおいて,特に重要となる項目は5と6であることが認められた.項目5は固有受容感覚の低下,項目6は身体イメージの異常にそれぞれ関与する項目であり,これらの項目の改善を目的とした理学療法がFreKAQスコアを減少し,さらに,疼痛の軽減や能力障害の改善に有効である可能性がある.【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,すべての対象者には本研究の研究内容,リスク,参加の自由などを十分に説明した上で書面による同意を得た.また,本研究は九州医療整形外科・内科 リハビリテーションクリニック倫理委員会の承認を得た上で実施した.