著者
平田 幸一 鈴木 圭輔 春山 康夫 小橋 元 佐伯 吉規 細井 昌子 福土 審 柳原 万理子 井上 雄一 西原 真理 西須 大徳 森岡 周 西上 智彦 團野 大介 竹島 多賀夫 端詰 勝敬 橋本 和明
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.166-179, 2020 (Released:2020-08-31)
参考文献数
51
被引用文献数
4

難治性の疾患における持続中枢神経感作と言われる病態の疫学,基礎・臨床的な位置付けさらには患者のケアにむけての研究をまとめた.本総説は厚生労働研究班の各員の研究結果を示したものなので,必ずしもまとまりがない点に限界があるが,今までは疾患縦断的に診断治療がおこなわれてきた難治性疾患における中枢神経感作の役割を横断的にみたという意味でもわれわれの研究の結果は一部ではあるが解明したものといえる.結果として,中枢神経感作は種々の疾患,特に難治性のもので明らかに何らかの役割を呈していることが示せた.さらにその治療法の解明には至らぬまでも,患者ケアに繋がる方略を示せたものと考えられ,今後の研究の基盤となることが望まれる.
著者
西上 智彦 壬生 彰
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-51, 2014-04-01 (Released:2014-07-31)
参考文献数
31
被引用文献数
2

痛みに対しての知見はアメリカ議会の2001 年からの“痛みの10 年”宣言の影響もあり,ここ10 年で飛躍的に進歩してきた.しかしながら,未だ本邦におけるリハビリテーション現場において臨床応用されてないのが現状である.今回,臨床での実践に役立つように痛みの「感覚的側面」,「情動的側面」,「認知的側面」に対する各種評価と関節不動化の痛み,慢性腰痛,求心路遮断性疼痛に対してのリハビリテーション方略について概説する.
著者
大森 絵美 西上 智彦 渡邉 晃久 脇 真由美 河田 健介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3054, 2009

【はじめに】日常臨床上,気象の変化による痛みの増強を訴える症例をよく経験する.これまでに,佐藤らはモデルラットを用いて気圧・気温の低下が痛み閾値を低下させることを明らかにした.また,国内で実施された「健康と気候に関するアンケート」の調査結果において,一般生活者及び慢性疾患患者の約7割が天候や季節変化による体調への影響を経験していることが報告されている.しかし,臨床現場において,実際に,気圧・気温の変化が痛みを惹起しているかは明らかでない.そこで,本研究の目的は気圧や気温が痛みに関与するか検討することである.<BR><BR>【方法】対象は本研究を理解し同意が得られ,調査期間中に他に痛みが増強する要因がなかったことを確認した本院外来通院患者21名(男性7名,女性14名,平均年齢68.3±13.0歳)とした.まず,調査初日に気象の変化が痛みに影響するかについて意識調査を行った.痛み,気圧,気温の調査は10月中旬から同年11月中旬の不連続な計10日間に行った.痛みの程度は毎回午前9時から午前10時の間にvisual analogue scale(以下:VAS)を用いて評価した.気圧・気温については気象庁ホームページより,本院から最も近い観測所のデータを参考にした.解析対象は,気圧については調査日の午前9時における気圧及び気圧変化量(午前8時の気圧から午前9時の気圧を引いた値)とした.気温については調査日の午前0時から午前8時までの間の最低気温及び気温変化量(調査前日の午後10時の気温から調査当日の午前6時における気温を引いた値)とした.統計処理はSPSS11.5Jを用いて行った.まず,VASと気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のそれぞれの相関係数を求め,相関係数0.8をカットオフ値として2群に分割し,気象の変化が痛みに影響するかの有無とのFisherの正確確率検定を行った.また,VASを目的変数とし,気圧,気圧変化量,気温,気温変化量を説明変数としたStepwise法による重回帰分析を行った.なお,有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【結果】気象の変化が痛みに影響すると回答したのは21名中16名であった.Fisherの正確確率検定において有意な差は認めなかった.重回帰分析によりVASに影響を与える説明因子として21名中20名に気圧を認めた.<BR><BR>【考察】気象の変化が痛みに影響を及ぼすかの意識と実際の気象と痛みの関係は乖離していた.また,佐藤らは人為的に起こした気圧低下・気温低下においてモデルラットの痛みの増強を確認しているが,自然な気象変化の中で行ったヒトにおける本研究では,気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のうち,気圧がもっとも痛みに影響を与える因子であった.本研究から,気圧の低下が痛みを増強していることが明らかになり,理学療法実施時には十分考慮した上での評価,治療が必要と考えられる.
著者
大森 絵美 西上 智彦 渡邉 晃久 脇 真由美 河田 健介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P3054, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】日常臨床上,気象の変化による痛みの増強を訴える症例をよく経験する.これまでに,佐藤らはモデルラットを用いて気圧・気温の低下が痛み閾値を低下させることを明らかにした.また,国内で実施された「健康と気候に関するアンケート」の調査結果において,一般生活者及び慢性疾患患者の約7割が天候や季節変化による体調への影響を経験していることが報告されている.しかし,臨床現場において,実際に,気圧・気温の変化が痛みを惹起しているかは明らかでない.そこで,本研究の目的は気圧や気温が痛みに関与するか検討することである.【方法】対象は本研究を理解し同意が得られ,調査期間中に他に痛みが増強する要因がなかったことを確認した本院外来通院患者21名(男性7名,女性14名,平均年齢68.3±13.0歳)とした.まず,調査初日に気象の変化が痛みに影響するかについて意識調査を行った.痛み,気圧,気温の調査は10月中旬から同年11月中旬の不連続な計10日間に行った.痛みの程度は毎回午前9時から午前10時の間にvisual analogue scale(以下:VAS)を用いて評価した.気圧・気温については気象庁ホームページより,本院から最も近い観測所のデータを参考にした.解析対象は,気圧については調査日の午前9時における気圧及び気圧変化量(午前8時の気圧から午前9時の気圧を引いた値)とした.気温については調査日の午前0時から午前8時までの間の最低気温及び気温変化量(調査前日の午後10時の気温から調査当日の午前6時における気温を引いた値)とした.統計処理はSPSS11.5Jを用いて行った.まず,VASと気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のそれぞれの相関係数を求め,相関係数0.8をカットオフ値として2群に分割し,気象の変化が痛みに影響するかの有無とのFisherの正確確率検定を行った.また,VASを目的変数とし,気圧,気圧変化量,気温,気温変化量を説明変数としたStepwise法による重回帰分析を行った.なお,有意水準は5%未満とした.【結果】気象の変化が痛みに影響すると回答したのは21名中16名であった.Fisherの正確確率検定において有意な差は認めなかった.重回帰分析によりVASに影響を与える説明因子として21名中20名に気圧を認めた.【考察】気象の変化が痛みに影響を及ぼすかの意識と実際の気象と痛みの関係は乖離していた.また,佐藤らは人為的に起こした気圧低下・気温低下においてモデルラットの痛みの増強を確認しているが,自然な気象変化の中で行ったヒトにおける本研究では,気圧・気圧変化量・気温・気温変化量のうち,気圧がもっとも痛みに影響を与える因子であった.本研究から,気圧の低下が痛みを増強していることが明らかになり,理学療法実施時には十分考慮した上での評価,治療が必要と考えられる.
著者
三木 貴弘 西上 智彦
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.61-69, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
35

慢性腰痛において,本邦では未だ生物医学的モデルに基づいた治療が実施されていることが多いが,諸外国では生物心理社会モデルに基づいた治療が実施されている.オーストラリアの理学療法士であるPeter O'Sullivanによって考案されたCognitive Functional Therapy(CFT)は慢性腰痛を生物心理社会モデルに基づいて評価,治療を行う新しい治療体系である.CFTは認知的側面(Cognitive Component),機能的側面(Functional Component),生活習慣的側面(Lifestyle Component)から構成されており,各側面の評価,治療が実施される.CFTの治療効果の有効性は多く報告されており,疼痛,能力障害だけではなく,運動恐怖や過度な不安,破局的思考,自己効力感も長期的に改善されたことが報告されている.慢性腰痛において,CFTは生物心理社会モデルの理解を助け,患者のアウトカムを向上させることができる新たな介入方法になるだろう.
著者
余野 聡子 西上 智彦 壬生 彰 田中 克宜 安達 友紀 松谷 綾子 田辺 暁人 片岡 豊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0311, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】中枢性感作(Central Sensitization:CS)とは中枢神経系の過度な興奮によって,疼痛,疲労,集中困難及び睡眠障害などの症状を引き起こす神経生理学的徴候である。CSは線維筋痛症,複合性局所疼痛症候群及び慢性腰痛などの病態に関与していることが明らかになっていることから,慢性痛に対して,CSの概念を考慮した評価及び治療介入が必要である。近年,CSの評価として,自記式質問紙であるCentral Sensitization Inventory(CSI)がスクリーニングツールとして開発され,臨床的有用性が報告されているが,CSIの日本語版は作成されていない。そこでCSIの原版を日本語に翻訳し,その言語的妥当性を検討した。【方法】日本語版CSIの開発に先立って,原著者から許可を得た。その後,言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順(順翻訳→逆翻訳→パイロットテスト)に従って開発を進めた。順翻訳,逆翻訳を行い原著者とともに翻訳案の検討を行い,原版との内容的な整合性を担保した日本語暫定版を作成した。日本語暫定版の文章表現の適切性,内容的妥当性,実施可能性を検討するため,日本語を母国語とし,当院に来院する外来患者6名(男性:3名,女性:3名,平均年齢51.8歳)を対象に個別面談方式によるパイロットテストを実施した。回答終了後,質問紙に関するアンケートを行い,「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3択で参加者に回答を求めた。【結果】原著者に逆翻訳版にて確認を行ったところ,Q11は“I feel discomfort in my bladder and/or burning when I urinate”を“.排尿時に,膀胱に不快感や灼熱感を感じる”としたが,灼熱感は膀胱ではなく性器に生じるとの指摘を受け,“膀胱の不快感と排尿時の灼熱感の両方,またはいずれか一方を感じる”と表現を変更し,了承を得た。Q17は原文では“low energy”となっているが逆翻訳では“no energy”となっているとの指摘を受けたが,同義語であることを説明し了承を得た。また“and/or”と“and”の違いを明確に区別するべきとの指摘を受け,“両方またはいずれか”との表現へ変更した。パイロットテストでの質問票の平均回答時間は219.5秒(範囲:158~314,中央値:207)であった。回答後アンケートでは回答に要する時間,質問数が適当であるかという問いに対して5名が「はい」,1名が「どちらでもない」と回答した。全体的にわかりやすかったかとの問いに対して1名が 「いいえ」と回答し,理由として5つの選択肢の差別化が図りにくいとの意見が得られた。そこで選択肢を差別化しやすい表現に変更し,日本語版CSIを完成させた。【結論】本研究において翻訳版開発の標準的な手続きを経て日本語版を作成し,さらにパイロットテストを実施することで内容の妥当性や表現の適切性が確認され,実施可能性のある日本語版CSIが完成した。今後,臨床的に使用するために信頼性と妥当性の検討を行う必要がある。
著者
川村 博文 西上 智彦 伊藤 健一 大矢 暢久 辻下 守弘
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.604-609, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本稿では,疼痛に対する治療としての物理療法,運動療法について,有効性に関わる理論的な裏付けから臨床のエビデンスを交えて解説した.急性痛と慢性痛とでは,対応が異なり,急性痛には,過度な不活動は避け,原因となる組織損傷の治療を可及的早期に進めることと,可能な限り疼痛を抑制し長期化を阻止する目的で物理療法,運動療法などを実施することとなる.慢性痛には,感覚面に着目する以外に,情動面や認知面などの多面的・複合的な側面での特性の認識理解が不可欠であり,ADLやQOL向上を目的として,TENSなどの物理療法,運動療法,認知行動療法,ニューロリハビリテーション,学際(集学)的治療を導入することが重要である.
著者
西上 智彦
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.505-507, 2019 (Released:2020-04-24)
参考文献数
16

Central sensitization (CS) is defined as an amplification of neural signaling within the central nervous system that elicits pain hypersensitivity and increased responsiveness of nociceptive neurons in the central nervous system to their normal or subthreshold afferent input. Evaluation of central sensitization is assessed by Quantitative Sensory Testing (QST), Brain imaging, and self–administered questionnaire. In the case of knee osteoarthritis, a pressure pain monitor (AlgoMed, Medoc) is used to compress the non–painful forearm at 1kg/s. The pressure felt by the subject as NRS 1 is measured three times at 30–second intervals, and the mean of three times is adopted. The Wind Up phenomenon is evaluated using a method called Temporal Summation (TS). The TS is assessed by differences in the initial and final pain intensity of multiple repeated stimuli, such as pressure and heat stimuli. Decreased descending pain control systems are assessed by the degree to which pain is reduced when noxious stimuli are added outside of pain sites. TS and CPM are used as indicators of central sensitization at the research level, but are rarely used clinically. The reasons for this include the high cost of equipment for evaluation and the time required for measurement. Central Sensitization Inventory (CSI) has been developed as an evaluation of CSS, and high validity and reliability have been reported.CSI consists of Part A (CSI score), which questions the common health–related symptoms of CSS, and Part B, which questions the presence or absence of a history of disease characteristic of CSS.
著者
中尾 聡志 西上 智彦 岡田 知也 明崎 禎輝 村山 大樹 中平 智 岩崎 洋子 松田 芳郎
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Fe0103, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに】 関節可動域(ROM)運動時の強い痛みに対して,傷害部位へのアイシングが中心に行われてきたが,十分な除痛が認められないことも多い.我々は膝関節炎による強い痛みによりROM運動が実施困難であった症例に対して,患部ではなく手部にアイシングを行うことで痛みが著明に改善し,ROM運動が円滑に行なうことが可能となった症例を経験し,第39回四国理学療法士学会にて報告した.このような現象の報告はこれまでになく,複数例にて効果が認められるかについて未だ明らかではない.そこで,本研究では,まず,人工膝関節全置換術(TKA)後症例に対して,患部へのアイシングと手部へのアイシングの痛みの抑制効果について検討した.さらに,どのような症例に対して,手部へのアイシングがより効果的かについて,手部のアイシング変化率と個体要因(器質的側面・心理的側面)の相関関係を求めて検討した.【方法】 対象はTKA症例(平均年齢76.5±5.6歳・術後平均日数13.1±6.5日)16名16膝とした.連続した2日間にて患部へのアイシング及び術側と同側の手部へのアイシングをそれぞれ,1日ずつ10分間実施し,アイシング前の膝関節最大屈曲(膝屈曲)時の膝関節における疼痛をVisual analogue scale(VAS)にて測定した.アイシング前後の膝屈曲において,アイシング前の屈曲角度を参考にアイシング後も同一角度を再現した後にVASの測定を実施し,アイシング後のVASから前のVASの数値を引いたものをアイシング変化率として求めた.他の評価項目として,術後最大CRP値・現状の経過に対する不安度・アイシング時の自覚的快楽の有無・膝屈曲角度を求め,不安度は痛みと同様にVASにて数値化した.なお,アイシングの実施順は各症例のID番号末尾の数字を参考に,偶数である者を手部アイシングより,奇数である者を患部アイシングより開始した.統計処理として,アイシング前後のVASの値を患部・手部それぞれにおいてt検定にて比較し,アイシング効果の有無を検討した.また,患部・手部へのアイシングの変化率と各評価項目に対する関連性をSpearmanの順位相関係数にて求めた.なお,有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,事前に本研究目的と内容を十分に説明し,同意の得られた症例のみを対象とした.【結果】 各評価項目における平均値は,患部アイシング前VAS52.2±16.4mm・患部アイシング後VAS47.6±19.6mm・手部アイシング前VAS66.2・手部アイシング後VAS42.8±28.3・患部アイシング変化率-4.6±15.4mm・手部アイシング変化率-23.4±27.5mm・術後最大CRP値6.7±4.5mg/dl・現状の経過に対する不安度30.0±29.7mm・膝屈曲角度100.3±20.1°であった.また,16名中14名が手部のアイシング中に「気持ち良い」と答えた. アイシングの効果について,患部アイシング前後のVAS(前:52.2±16.4 mm,後:47.6±19.6 mm)においては有意な差を認めなかったが,手部アイシング前後のVAS(前:66.2±10.9 mm,後42.8±28.3 mm)では有意な差を認めた(p<0.01).アイシング後のVAS変化率において,患部へのアイシング変化率に相関性を認める評価項目は認められなかったが,手部へのアイシング変化率は不安度(r=-0.51,p<0.05),膝屈曲角度(r=-0.51,p<0.05)と負の相関関係をそれぞれ認めた.【考察】 本研究はTKA後症例に対して患部よりも遠隔部位へのアイシングが効果的であることを示したはじめての報告である.Nielsen(Pain,2008)らは健常者の膝関節部位への圧痛閾値は手への寒冷刺激によって上昇し,その要因として下行性疼痛抑制系の賦活を挙げている.本研究において,患部周辺は持続した炎症によって,末梢からの刺激伝達系に異常が生じており,同部位にアイシングを行っても下行性疼痛抑制系が賦活する正常な神経反応が生じなかったのかもしれない.また,手部へのアイシング後にVASがより軽減していた症例では,現状の経過に対する不安度が高い傾向にあった.不安は痛みをより増強させることが報告されており,その増強された痛みが下行性疼痛系の賦活によって減少されたため,不安が強い人ほどより痛み抑制効果が高かった可能性がある.膝屈曲角度が低下している症例ほど手部へのアイシングによる痛み変化率は低かった.これは膝屈曲角度が低い症例では,軟部組織の伸張性などの器質的問題が痛みにより関与するため,手部へのアイシングの効果が低かったと考えられる.【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果より,術後不安が強いTKA後症例に対する疼痛の管理方法として手部のアイシングが有効であることが明らかとなり,新しい物理療法手法としての可能性が示唆された.
著者
中尾 聡志 西上 智彦 渡辺 晃久 榎 勇人 石田 健司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P2161-C4P2161, 2010

【目的】<BR> バスケットボール選手において、80%以上の選手に足関節内反捻挫(以下、内反捻挫)の既往があり、内反捻挫は受傷頻度の高い外傷である。内反捻挫の受傷機転は接触時と非接触時に分けられるが、非接触時の内反捻挫の受傷頻度としてジャンプからの着地(以下、着地)時が最も多い。内反捻挫の既往がある症例の中には、動作時に自覚的不安定感を訴え、パフォーマンスや競技能力が低下する症例もいる。これまでに、動作時に自覚的不安定感を訴える症例に対して、擬似的に足関節内反ストレスを加えた際に、長腓骨筋や前脛骨筋の筋活動開始時間の遅延が報告されている。しかし、擬似的に足関節内反ストレスを加える手法は他選手の足の上に乗ったとき(接触時)が想定されており、着地動作時のような非接触時の筋活動開始時間が遅延するかは未だ明らかではない。また、我々は臨床において、着地時に不安定感を訴える症例では着地時の足趾伸展が不十分であることを経験する。本研究の目的は、これらの2点をふまえて着地時において不安定感を訴える選手に対し、腓骨筋と長趾伸筋の筋活動動態を検討し、理学療法プログラムの一助とすることである。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は某大学女子バスケットボール部員11名(21.0±1.7歳)、11肢とした。11名全員に足関節内反捻挫の既往があり、うち8名は競技中および着地時の自覚的足関節不安定感が無く(以下、不安定感なし群)、3名は不安定感が存在(以下、選手A・B・C)した。測定課題は左右方向に引かれた30cm間隔の2本のライン上を20回連続で左右にジャンプするものとした。解析対象は外側方向へのジャンプ5回とした。なお、被検者にはできるだけ高く速く跳ぶように指示をした。<BR> 評価筋は長腓骨筋・長趾伸筋の2筋とし、表面電極をPerotto及びReynardらの報告を参考に電極間距離10mmにて貼付した。表面筋電図の測定には多用途テレメーターシステム(三栄社製)を用い、サンプリング周波数は1kHzにてデータを収集した。筋活動開始時間の同定方法として、安静立位時の筋電波形を基準とし、その波形を超えた点を活動開始時間とした。また、着地の同定として母趾球に圧センサーを貼付し圧センサーの波形より着地点を同定した。筋活動開始時間は着地点より前に筋活動が開始したものをマイナス、後に開始したものをプラスと定義した。データ解析として、まず、得られた5回分の筋活動開始時間のうち、最小・最大値を省いた3回のデータを平均し、加えて不安定感なし群8名の平均値の95%信頼水準を求め、その値と選手A・B・Cの平均値を比較した。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 本研究実施にあたり十分な説明と試技を実施し、同意の得られた者のみを研究対象とした。<BR><BR>【結果】<BR> 各筋の筋活動開始時間の平均値は、長腓骨筋において、不安定感なし群;-32.0±33.0msec(95%信頼区間;-58.9~-5.0msec)・選手A;-28.3msec・選手B;44.3msec・選手C;-43.3msecであった。長趾伸筋において、不安定感なし群;-225.5±64.5msec(95%信頼区間;-278.1~-172.8msec)・選手A;-99.3msec・選手B;48.6msec・選手C;-145.3msecであり、3選手全ての長趾伸筋の筋活動開始時間が、不安定感なし群の95%信頼区間を外れており、筋活動時間が遅延する傾向を示した。また、選手Bは着地時に疼痛を有しており、長腓骨筋・長趾伸筋ともに着地後に筋活動が開始する傾向にあった。<BR><BR>【考察】<BR> 自覚的不安定感がある3選手の共通点として、長趾伸筋の筋活動開始時間が遅延傾向にあった。長趾伸筋の筋活動開始時間が遅延することより、着地時の足趾伸展運動が遅延し、適切なタイミングにてウインドラス機構が機能しない可能性がある。着地時にウインドラス機構の機能不全により、前足部・中足部を中心とした足部剛性が低下し、不安定感を助長する一要因となっているかもしれない。また、疼痛を有する選手Bでは長腓骨筋、長趾伸筋ともに筋活動開始時間が特に遅延していた。先行研究より、疼痛は筋活動開始時間を遅延させることが明らかとなっており、選手Bにおいても疼痛が筋活動開始時間を特に遅延させた可能性がある。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 着地動作時の不安定感に長趾伸筋の筋活動開始時間の遅延が関与している可能性が示唆された。これまで、内反捻挫後の理学療法として、タオルギャザーなどの足趾屈曲運動が重要視されていたが、本研究結果より、足趾の伸展を考慮した理学療法の必要性が示唆された。
著者
余野 聡子 西上 智彦 壬生 彰 田中 克宜 萬福 允博 篠原 良和 田辺 曉人 三木 健司 行岡 正雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-162_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】中枢性感作(Central Sensitization:CS)とは中枢神経系の過度な興奮によって,疼痛,疲労,集中困難及び睡眠障害などの症状を引き起こす神経生理学的徴候である。CSを評価する指標として,末梢器官に対して侵害刺激を連続して加えたときに見られる痛みの時間的加重(Temporal summation: TS)が用いられている。また,CSが関与する包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome: CSS)が提唱されており,CSおよびCSSを評価する質問票としてCentral Sensitization Inventory (CSI)が用いられている。CSが病態(疼痛)に関与していると考えられている疾患の代表格である線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)において,健常人と比較してTS,CSIがともに高値であることが報告されている.しかしながら,これまでにTSとCSIのどちらがCSを評価する上で,より精度が高い評価法であるか明らかでない.本研究の目的は,これらの評価指標の精度を比較し,その臨床的有用性について検討することである。 【方法】米国リウマチ学会(2010)の診断基準を満たす線維筋痛症患者26名(FM群, 男性3名,女性23名,平均年齢49.3±10.5歳)および健常人28名(健常群,男性7名,女性21名,平均年齢51.8±13.5歳)を対象とした。疼痛はBrief Pain Inventory (BPI)にて評価し,CSに関する指標としてTSおよびCSIを評価した。TS評価では,利き手側の橈側手根伸筋に対して圧痛閾値(pressure pain threshold: PPT)での圧刺激を10回反復し,1回目と10回目の疼痛強度(Numeric Rating Scale: NRS)の差をTSとした。これらの評価項目について,Mann-WhitneyのU検定を用いて群間比較した。また,PPT, TSおよびCSIについてReceiver operating characteristic (ROC)分析を行い,各指標のArea Under the Curve (AUC)の比較検定を行なった。また,FM群と健常群を判別するカットオフ値を算出した。統計学的有意水準は5%とした。【結果】BPI (pain intensity/pain interference), TSおよびCSIは健常群に比べてFM群で有意に高値であった(p < 0.05)。PPTは健常群に比べてFM群で有意に低値であった(p < 0.05)。ROC曲線のAUCは,TSに比べてCSIで有意に高値であった(TS: 0.66, CSI: 0.99, p < 0.0001)であった。各指標のカットオフ値はPPTが12.1N(感度64%, 特異度89%, 陽性反応的中度84%, 陰性反応的中度73%), TSが3(感度60%, 特異度67%,陽性反応的中度63%,陰性反応的中度84%), CSIが37点(感度96%, 特異度100%,陽性反応的中度100%,陰性反応的中度97%)であった。【結論(考察も含む)】TSおよびCSIの精度を比較した結果,TSよりもCSIの方が精度は高かった。FM患者はCSによって生じる多彩な臨床症状を呈することから,機械刺激への過敏性を評価するTSよりも,包括的かつ症候学的な評価であるCSIの精度がより高くなった可能性がある。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は甲南女子大学倫理委員会の承認を得て実施した。事前に研究目的と方法を十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした。
著者
新田 麻美 西上 智彦 壹岐 伸弥 中川 幸太郎 石垣 智也 川口 琢也
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.68-74, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)
参考文献数
25

要旨 慢性緊張型頭痛に対し,運動療法や徒手療法,あるいは患者教育との組み合わせが効果的であることが知られているが,患者特性を考慮した介入効果の報告は少ない.本報告では,徒手療法を主とした受動的な介入効果が不十分であったが,運動療法と患者教育を主とした能動的な介入が奏効した不安症状の強い慢性緊張型頭痛症例の考察を行い,患者特性に応じた理学療法介入の有効性を検討した.結果,頭痛に対する不安が強い患者には,患者教育により疼痛に対する捉え方や適切な症状理解と対処行動の形成を促し,自主練習として習慣化できるような運動を実施することが有効となり得る可能性が示唆された.
著者
壬生 彰 西上 智彦 田中 克宜 山田 英司 廣瀬 富寿 片岡 豊 田辺 曉人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】変形性膝関節症(膝OA)において,身体知覚に関わる2点識別覚,固有受容感覚および運動イメージの低下や異常が認められており,身体知覚異常が慢性痛に関与する可能性が報告されている。腰痛患者に対して身体知覚異常を評価するために開発されたThe Fremantle Back Awareness Questionnaire(FreBAQ)を基に,日本語版The Fremantle Knee Awareness Questionnaire(FreKAQ-J)を作成し,膝OA患者の身体知覚評価質問票としての信頼性および妥当性を検討した。さらに,Rasch解析を行い,心理測定特性を検討した。【方法】日本語版FreBAQの質問項目にある'腰'を'膝'に置き換えて英語へ逆翻訳し,FreBAQの原著者へ内容的妥当性を確認したうえで暫定版FreKAQ-Jを作成した。対象は,膝OAと診断された65名(男性15名,女性50名,平均年齢68.5±9.1歳)を膝OA群,膝OAの既往がない64名(男性14名,女性50名,平均年齢66.7±7.2歳)を対照群とした。評価項目は,安静時および動作時の疼痛強度(Visual Analogue Scale;VAS),能力障害(Oxford Knee Score;OKS),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),運動恐怖(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK)及び身体知覚異常(FreKAQ-J)とした。統計解析は,FreKAQ-Jの合計点の群間比較には対応のないt検定を,膝OA群においてFreKAQ-Jの合計点と各評価項目との関連にはSpearmanの順位相関係数を用いた。初回評価より2週間以内にFreKAQ-Jの再テストを行い級内相関係数を求めた。有意水準は5%未満とした。さらに,Rasch解析により,Cronbachのα係数,項目適合度,評価尺度としての一元性,targetingを検討した。【結果】FreKAQ-Jは,対照群に比べて膝OA群で有意に高得点であった(膝OA群12.4±7.6,対照群3.6±4.4)。また,膝OA群においてFreKAQ-Jは安静時痛(r=0.27,p=0.02),運動時痛(r=0.37,p=0.002),PCS(r=0.70,p<0.001),TSK(r=0.49,p<0.001),HADS不安(r=0.46,p<0.001)およびHADS抑うつ(r=0.32,p=0.01)と有意な正の相関を,OKS(r=-0.41,p=0.001)と有意な負の相関を認め,評価尺度としての基準関連妥当性を有することが示された。級内相関係数は0.76であり,高い再テスト信頼性が認められた。Rasch解析の結果,Cronbachのα係数は0.87であり,高い内的整合性が認められた。身体イメージに関する項目7及び9に不適合(misfit)が認められたが,評価尺度としての一元性が認められた。また,FreKAQ-Jは身体知覚異常が高度である対象者をtargetingしていることが示された。【結論】FreKAQ-Jは,膝OA患者の身体知覚異常を評価する質問票として十分な信頼性,妥当性をおよび心理測定特性を有することが示された。今後,本質問票を活用し,膝OA患者の身体知覚異常と疼痛の関連についてさらなる検討を行うとともに,身体知覚異常の改善を目的とした介入の効果検証についても行っていく必要がある。
著者
山田 恵子 壬生 彰 向後 響 井関 雅子 西上 智彦
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-14, 2021-04-30 (Released:2021-06-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

The Pain Disability Index (PDI) is a self–reported outcome measure initially developed in English to assess disability caused by pain in seven dimensions of daily life activity, including family ⁄ home responsibilities, recreation, social activity, occupation, sexual behavior, self–care, and life–support activity. This study aimed to develop a linguistical­ly valid Japanese version of the PDI (PDI–J) according to the guidelines for the translation and cultural adaptation of patient–reported outcome measures establish­ed by the task force of the International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research. A draft of the PDI–J was developed through a forward translation of the original PDI from English to Japanese, reconciliation of the translation, back–translation from Japanese to English, and harmonization. We subsequently conducted a cognitive debriefing in five patients using the PDI–J draft and reviewed it before finaliz­ing a linguistically valid PDI–J. We also considered a five–item version of the PDI (PDI–5–J), which excluded two items (sexual behavior and life–support activity) from the original version. This consideration was made for brevity and because sexual behavior is a considerably personal parameter that some patients may be reluctant to answer and life–support activity because it was considered ambiguous in Japanese. Therefore, we were able to develop a linguistically valid PDI–J and PDI–5–J through this process. Further study is warranted to confirm the psychometric validity and reliabili­ty of the two indices (PDI–J and PDI–5–J).
著者
山下 裕 西上 智彦 古後 晴基 壬生 彰 田中 克宜 東 登志夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-198_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】頚部痛患者において,単に筋や関節由来だけでなく,様々な要因が能力障害に関与することが明らかになっている.外傷性頚部痛は非外傷性頚部痛よりも,臨床症状がより重度であることが報告されているが,それぞれの能力障害に関与する要因は未だ明らかではない.近年,他害的な外傷や痛みに伴う不公平感を定量するInjustice Experience Questionnaire(IEQ)や,頚部の身体知覚異常を包括的に評価するFremantle Neck Awareness Questionnaire(FreNAQ)といった新たな疼痛関連指標が開発されているが,外傷性,非外傷性頚部痛それぞれの能力障害にどのように関与するか明らかでない.本研究の目的は,外傷性と非外傷性頚部痛の疼痛関連因子の比較及びそれぞれの能力障害に影響する因子を検討することである.【方法】対象は, 頚部痛患者119名(外傷性頚部痛患者74名,非外傷性頚部痛患者45名)とした.評価項目として,疼痛期間,安静時・運動時痛,能力障害はNeck Disability Index (NDI),不公平感は IEQ,身体知覚異常はFreNAQ,破局的思考は短縮版Pain Catastrophizing Scale(PCS6),運動恐怖感は短縮版Tampa scale for Kinesiophobia(TSK11),うつ症状はPatient Health Questionnaire(PHQ2)を調査した.統計解析は,Mann-Whitney U検定を用いて外傷性頚部痛と非外傷性頚部痛における各評価項目の差を比較検討した.さらに,NDIを従属変数とした重回帰分析を用いて,外傷性頚部痛,非外傷性頚部痛におけるそれぞれの関連因子を抽出した.【結果】2群間比較の結果,疼痛期間において有意な差を認めたが[外傷性頚部痛: 30日(0−10800日); 非外傷性頚部痛: 300日( 2−7200日),p<0.001],その他の項目に有意な差は認められなかった.重回帰分析の結果,NDIと有意な関連が認められた項目として,外傷性頚部痛ではIEQ(β=0.31, p =0.03)と運動時痛(β=0.17, p =0.01),非外傷性頚部痛においてはFreNAQ(β=0.79, p =0.002)のみが抽出された.【結論(考察も含む)】本研究の結果から,外傷性頚部痛患者と非外傷性頚部痛患者において,能力障害に影響を与える因子が異なる可能性が示された.したがって,外傷性頚部痛患者では不公平感を軽減する介入が必要であり,非外傷性頚部痛患者においては身体知覚異常を正常化する介入が必要である可能性が示唆された.【倫理的配慮,説明と同意】対象者には研究の主旨と内容を口頭および書面で説明し,同意を得て研究を実施した.なお本研究は西九州大学倫理委員会の承認を得ている(承認番号:H30 − 2).
著者
柴田 政彦 渡邉 嘉之 寒 重之 西上 智彦 植松 弘進 宮内 哲 壬生 彰 大迫 正一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

身体部位(手)のメンタルローテーション課題を用いた心理物理学的実験では,上肢CRPS患者8名と健康成人40名のデータを取得した。両群の正答率および反応時間を比較した結果,健常者に比べCRPS患者で有意な正答率の低下と反応時間の遅延を認めた。健康成人のデータについては,これまで検討されてこなかった回転角度の増加に対する反応時間の変化にばらつきがあることに着目して統計学的解析を行った結果,4つのグループに分類することができ,「手の左右判別課題時には自身の手を動かす運動イメージを行っている」とする先行研究の結論とは異なる回答方略をとるものが存在することを明らかにした。
著者
西上 智彦 柴田 政彦
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.591-595, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
26
被引用文献数
1

痛覚の伝達経路には末梢から中枢へ向かう上行路だけでなく,下行性に痛みを抑制あるいは増強させる下行路もある.本稿では上行路(皮膚,脊髄,体性感覚野および扁桃体)と下行路(state dependent control)に分けて概説し,さらに,それぞれの経路に働きかけるリハビリテーションの臨床応用について言及する.
著者
西上 智彦 池本 竜則 山崎 香織 榎 勇人 中尾 聡志 渡邉 晃久 石田 健司 谷 俊一 牛田 享宏
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P1018, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】前頭前野は記憶の形成などに大きく関与しており,慢性疼痛患者においても神経活動にModulationが引き起こされていることが明らかになっている.同部位の機能低下は注意力の低下,社会的認知能力の低下,意欲の低下を惹起している可能性があり,慢性疼痛患者においても治療をより難渋する要因となる.しかし,痛み刺激に対する前頭前野の脳血流量がどのようなタイミングで応答しているかについては未だ明らかでない部分も多い.また,前頭前野における脳血流の変化と痛みとの関係も明らかでない.本研究の目的は痛み刺激に対する前頭前野における即時的な脳血流変化を脳イメージング装置を用いて検討することである.【方法】対象は事前に研究目的と方法を十分に説明し,同意が得られた健常成人15名(男性9名,女性6名,平均年齢27.3±3.0歳)とした.痛み刺激は温・冷型痛覚計(ユニークメディカル社製,UDH-300)を用いて,49°Cの熱刺激をプローブにて右前腕に30秒間行った.痛み刺激終了後に痛みの程度をvisual analog scale(VAS)にて評価した.脳血流酸素動態は近赤外光イメージング装置(fNIRS,島津製作所製,OMM-3000)にて測定した.測定部位は前頭前野とし,国際10-20法を参考にファイバフォルダを装着した.測定開始前は安静とし,酸素動態が安定した後に測定を開始した.解析対象は測定開始からの10秒間(ベースライン),刺激開始からの10秒間(初期),刺激開始10秒後からの10秒間(中期),刺激開始20秒後からの10秒間(後期)の酸素化ヘモグロビン(oxyHb)のそれぞれの平均値とした.統計処理は多重比較検定を行い,ベースライン,初期,中期,後期のoxyHbの有意差を求めた.また,初期,中期,後期のoxyHbとVASの相関関係をそれぞれ求めた.加えて,痛みが少ない下位5名(VAS:25.8±8.3)と痛みが強い上位5名(VAS:72.2±5.6)の2群間の初期,中期,後期におけるoxyHbを比較した.なお,有意水準は5%未満とした.【結果】VASは平均51.6±20.6(14-83)であった.多重比較検定にて左側のBrodman area10(BA10)のoxyHbがベースライン,初期より後期において減少していた.初期,中期,後期のoxyHbとVASの相関関係は認めなかった.また,痛みが強い群は痛みが少ない群より初期における左右のBA10,中期における左側のBA 10のoxyHbが減少していた.【考察】痛み刺激によって前頭前野BA 10の脳血流量は即時的に減少した.また,痛みの感じ方が強い場合,BA10の脳血流量は有意に減少していた.基礎研究では関節炎モデルラットにおける電気生理学的解析にて,扁桃体が内側前頭前野の活動を抑制することが報告されている.以上のことからヒトにおいても,強い痛み刺激は,即時的に前頭前野の神経活動を抑制させる可能性が示唆された.
著者
西上 智彦 榎 勇人 野村 卓生 中尾 聡志 芥川 知彰 石田 健司 谷 俊一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-114, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
20

低活動状態の1日歩行量を補填し,腓腹筋の廃用性筋萎縮を予防するために運動療法メニューの適切な運動回数を検討した。対象は健常者10名。評価筋は右側腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭とした。腓腹筋筋活動量の測定は(1) 端坐位片足踵上げ,(2) 立位両足踵上げ,(3) 立位片足踵上げ,(4) つま先立ち歩行,(5) 最大等尺性足関節底屈運動とした。分析方法はまず,自由歩行時の筋活動量を(1)から(5)の各動作の筋活動量で除し,各運動療法メニュー1回に対応する歩数を求めた。次に,低活動状態を想定し,6,000歩(片側3,000歩)の筋活動量と対応する各運動療法メニューの回数を求めた。結果,一般臨床で実施されている運動回数では筋萎縮の抑制効果は極めて少ない可能性が示唆された。