著者
佐藤 衆介 瀬尾 哲也 植竹 勝治 安部 直重 深沢 充 石崎 宏 藤田 正範 小迫 孝実 假屋 喜弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.行動変化を指標とした家畜福祉飼育総合評価法の開発:ドイツ語文化圏で使用されている家畜福祉総合評価法であるANI(Animal Needs Index)法を我が国の酪農及び肉牛生産に適用した。そして本法は、放飼・放牧期間に偏重していることを明らかにした。さらに、(1)改良ANI(Animal Needs Index)法並びに家畜福祉の基本原則である5フリーダムスに基づいた飼育基準を作成した。(2)評価法改良のため、身繕い行動並びに人との関係の指標である逃走距離に関する基本的知見を収集した。(3)福祉評価においては、動物の情動評価も重要であることから、ウマを使い、快・不快に関する行動的指標を明らかにし、それは飼育方式評価に有効であった。2.生理変化を指標とした家畜福祉飼育総合評価法の開発:ニワトリの脳内生理活性物質のうちエンドルフィン(ED)が快情動の変化を捉えるのに適していること、またEDがMu受容体を介してストレス反応の調節にも関与することを明らかとした。また、輸送時の福祉レベルを反映する免疫指標を検索し、末梢血のNK細胞数やConA刺激全血培養上清中のIFN-γ産生量が有用であった。3.家畜福祉輸送総合評価法の開発:RSPCAの福祉標準に基づき、我が国の家畜市場に来場する家畜運搬車輌を対象に、福祉性評価を実施した。また、国内における子牛の長距離輸送および肥育牛の屠畜場への輸送について、行動・生理・生産指標に基づくストレス評価を行った。RSPCAの標準に基づく評価では、国内の運搬車輌は概ね福祉的要件を満たしていたが、一部、積込路の傾斜角度とそこからの落下防止策に改善の余地のあることが明らかになった。国内輸送時のストレス評価では、明確な四季を有する我が国では、季節により牛に対して負荷されるストレス要因が異なることが確認され、季節に応じた福祉的配慮が必要であることが示された。