著者
深谷 公宣 佐藤 真基子
出版者
富山大学芸術文化学部
雑誌
GEIBUN : 富山大学芸術文化学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Art and Design University of Toyama (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
no.12, pp.108-110, 2018-02-28

日時:平成28 年7月8日(金)13:00 ~ 16:15場所:富山大学高岡キャンパス 講堂/B-211講義室講師:ジョナサン・カハナ博士(デンマーク、オーフス大学研究員)、佐藤真基子教授(富山大学教養教育院)、深谷公宣准教授(富山大学芸術文化学部)参加者:「映像文化論」「卒業研究・制作(深谷担当)」履修学生、本学教職員。\n学部授業「映像文化論」(2年前期)及び「卒業研究・制作(深谷担当)」(4年)において、映像作品に見られる宗教モチーフの意味について考えるイベント「宗教とポピュラー文化」を開催した。発案者は本学教養教育院教授、佐藤真基子である。佐藤のコーディネートにより、比較宗教学を専門とするデンマーク王国オーフス大学研究員ジョナサン・カハナ氏をゲスト講師として招聘した。 イベントはシンポジウム、セミナーの2部構成とした。シンポジウム(第1部)では「映像文化論」の履修学生(107名登録)、オープン・クラスの参加者(1名)、及び学内外からの来場者を対象に、3つの映像作品(『ゴーストバスターズ』、『マトリックス』、Thunder Perfect Mind )を事例に挙げ、宗教のモチーフに着目しながら議論を展開した。セミナー(第2部)では「卒業研究・制作」の履修者(大谷知穂学生、大廣優里学生、岡川春樹学生)に学内からの参加者(小田夕香理芸術文化学部講師、小坂真里江学生)を加え、カハナ氏による講義と質疑応答をおこなった。
著者
深谷 公宣
出版者
富山大学
雑誌
Geibun : 富山大学芸術文化学部紀要 (ISSN:18816649)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.122-136, 2006-12

英国の演劇評論家マーティン・エスリンは、サミュエル・ベケットの戯曲を「不条理演劇」の範疇に組み入れた。エスリンの言う不条理演劇とは、従来の物語構造を否定し、人間存在の主体性やその形而上学的根拠が崩壊した状況を描く戯曲である。だが、エスリンの議論は、ベケットの戯曲の特徴を、主体性を肯定する実存主義の視点から照射するため、あいまいさを残している。また、エスリン以来、ベケット批評の領域では不条理演劇という名称がひとり歩きし、この名がはらむあいまいさは解消されていない。エスリンと異なり、ベケットの作品における主体性の崩壊現象を的確に捉えた論者/演劇人が存在してはいるものの、彼らの考えはあまり議論されずにいる。以上を踏まえ、本論では、エスリンを含む主な論者/演劇人の議論を主体性というモチーフの面から再検証し、ベケット批評の領域で展開されてきた不条理をめぐる諸説の整理を行う。その結果、ベケットの作品解釈において、登場人物の主体性を否定しきれないエスリン以来の議論と、主体性を否定する議論との差異を明らかにし、不条理演劇という語の持つ意味に新たな認識の枠組みを提示する。