著者
松本 武夫 淵之上 康元 米丸 忠 田中 万吉
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1962, no.19, pp.6-9, 1962-11-15 (Released:2009-07-31)
被引用文献数
1 2

"Oku-Musahi" is a new variety for green tea. This was developed by the Tea Breeding Laboratory, M. A. F.-designated, Saitama-Ken Tea Exp. Stat., and the registration of this variety was made in 1962. "Oku-Musashi" was selected from the hybrids between "Saya-mamidori" and "Yamatomidori".The superior points of this variety are as follows;1. It grows vigorusly, and produces high yield and, especially, is cold resistant. It is, adapted to the northern zone of green tea production in Japan as Saitama Ken.2. It grows leaves of superior qualities for green tea. And, therefore, the tea has good characters, especiaially, in aroma and taste.3. "Oku-Musashi" is a late variety, that is, the plucking time is a few days later than "Sayamamidori" and 7 to 10 days later than "Yabukita, " both are main varietys cultivated in Saitama district. Therefore, the tea growers can control the labour of tea leaf plucking.
著者
塘 二郎 淵之上 康元 淵之上 弘子
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1956, no.7, pp.14-20, 1956-04-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
5
被引用文献数
1 3

実生繁殖を行うにあたり重要な問題である自家結実歩合がきわめて低いので,その原因を追求するため自家受精に関する研究を行い,併せて人為的処理による効果について検討を加え,大要次のごとき結果を得た。1.自家結実歩合は過去5年間の平均で2.2%を示し,他家の29.5%に比しきわめて低い。更に1顆中の種子数少く,自殖種子の発芽もく,実用的には自家不結実性と見なし得る。2.授粉後採種にいたるまで落顆は多い。その落顆実の性質を明らかにするため,落顆様相の異なる2品種を供試し,それらの自家・他家及び無授粉の落顆様相を講査するとともに,胚嚢の発育状況を追求したが,自家の落顆実は不受精によるものが多いのに比し,他家のそれは生理的落顆実が多い。3.自家柱頭上での花粉発芽勢及び花粉管伸長は他家柱頭上における場合に比し遙かに劣る。4.この柱頭上での差異は花柱内によく現われ,自家は花粉管の数及び伸長速度において劣り,他家に遅れて花柱基部に達する。その大部分のものが花柱基部~子房上部で停滞し,この停滞による花粉管の異状現象は他家の6倍以上に達する。ごく少数のものが子房に侵入するがその後の伸長も悪心。受精率は6.8%で,他家のそれの17.4%にすぎずきわめて低い。5.雌蕋各部の組織自家花粉の発芽及び花粉管の伸長を抑圧するが,その程度は子房部が最も強く,子房部位別では胚珠より子房上部のほうが強い。抑圧物質の分布系統は胎座部~子房上部,花柱,柱頭へと大略推定できるが,分布個所は不明である。6.以上の結果より,自家不和合程度の高い現象の機構は,柱頭上の花粉発芽力が弱く,花柱内の伸長速度が遅いことも否定できないが,花柱基部~子房上部での花粉管の著しい停滞が決定的な要因である。7.ホルモン撒布は自家柱頭上の発芽力及び花柱内の花粉管の伸長を促進する効果はきわめて著しい。しかしそれらも子房上部での停帶を超え得ず,子房への侵入及び受精促進の効果は僅かである。8.幼花及び老花授粉,特に後者の場合に,柱頭上の発芽力及び花柱内の花粉管伸長は促進されているが,受精を促し得たのは老花の場合のみでその程度は低い。9.末期授粉による効果は全くみられない。10.以上の結果より,人為的処理は柱頭上の発芽力及び花柱内の花粉管伸長までは促進する効果は著しいが,花柱基部~子房上部の抑圧力に打ち勝つて伸長を促し,停滞を打破し得ないために,一部の子房への侵入を促進し,受精時期を早め得ることは有り得ても,受精促進の効果は期待できない。
著者
内野 博司 本多 勇介 中島 健太 佐々木 功二 小林 明 田中 江里 久米 信夫 酒井 崇 嶋崎 豊 石川 巌 岡野 信雄 京極 英雄 船越 昭治 北田 嘉一 淵之上 康元 田中 萬吉
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.107, pp.107_19-107_30, 2009-06-30 (Released:2011-12-09)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

茶新品種‘ゆめわかば’が埼玉県農林総合研究センター茶業特産研究所で育成された。‘ゆめわかば’は1968年に‘やぶきた’ב埼玉9号’の交配により得られた個体群より選抜され,1994年から2003年に県単試験を含む栄養系適応性試験,裂傷型凍害抵抗性及びもち病抵抗性検定試験を実施し,更に2004年,2005年には香気の更なる発揚を目的に試験を行った。この結果,優秀と認められ,2006年10月17日に茶農林53号‘ゆめわかば’として命名登録,2008年10月16日に品種登録された。‘ゆめわかば’は摘採期が‘やぶきた’より1日から2日遅い中生品種である。生育,収量とも‘やぶきた’並である。耐寒性は赤枯れ抵抗性が「強」,青枯れ抵抗性が「やや強」,裂傷型凍害抵抗性が「強」でいずれも‘やぶきた’より強い。また,病虫害抵抗性は,炭疽病に「やや強」である。製茶品質は外観が優れ,内質も‘やぶきた’並に優れる。また,摘採葉を重量減15%から20%に軽く萎凋させることによって,香気及び滋味が向上する。耐寒性が強いために,関東やそれに類似した冷涼な茶産地に適する。
著者
内野 博司 田中 江里 岡野 信雄 船越 昭治 京極 英雄 中島 健太 本多 勇介 淵之上 康元 田中 萬吉 米丸 忠 北田 嘉一
出版者
日本茶業学会
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.89, pp.45-58, 2000-08-31 (Released:2009-12-03)
被引用文献数
1 1

煎茶用品種'むさしかおり'が埼玉県茶業試験場 (農林水産省茶育種指定試験地) によって育成された。'むさしかおり'は1967年に種子親'やぶきた'と花粉親27F1-73'の交配によって得られた実生群から選抜された。1990年から1996年に埼玉33号の系統名で16場所で栄養系適応性検定試験,裂傷型凍害及びもち病の特性検定試験が実施された。その結果,優良と認められ1997年に茶農林46号'むさしかおり'として命名登録された。樹姿は開張型で樹勢は強い。成葉の大きさは'やぶきた'よりも小さい。一・二番茶の収量は'やぶきた'と同等か多い。幼葉はやや軟らかく光沢のやや多い緑色である。挿し木発根性及び本圃での活着は良好である。一番茶の摘採期は,寒冷地では'やぶきた'より2~3日,温暖地及び暖地では3~6日遅い中晩生である。耐寒性は青枯れ抵抗性,裂傷型凍害抵抗性とも'やぶきた'より優れる。製品の色沢は濃緑であり細くよれ,すっきり爽やかな香気,濃厚な水色・旨味に特徴があり優秀である。炭疽病の被害は'やぶきた'より少なく中程度である。耐寒性が強いので,関東茶産地及びこれと気象条件の類似する東海・近畿・四国・九州の山間冷涼地で,寒害発生の常習地帯に適する。