- 著者
-
清水 典史
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.7, pp.715, 2018 (Released:2018-07-01)
- 参考文献数
- 3
大うつ病性障害(MDD)の発症には慢性ストレスが関与していることが知られているが,その詳細なメカニズムは未だ不明である.近年,MDD患者では血中インターロイキン-6(IL-6)が高値を示すことが報告されており,また動物実験においても,マウスへの慢性ストレス負荷が血中IL-6を増加させることが報告されている.これらの報告は,慢性ストレスにより誘導されたIL-6がうつ病の発症に関与している可能性を示唆している.しかしながら,末梢血中のIL-6と中枢性疾患であるMDDの発症とを直接的に結び付ける証拠はない.本稿では,慢性ストレスが血液脳関門(BBB)の透過性を亢進させることによりIL-6の脳実質への侵入を許し,これがうつ様行動の発現につながることを明らかにしたMenardらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) O’Donovan A. et al., Depress. Anxiety., 30, 307-314(2013).2) Hodes G. E. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 111, 16136-16141(2014).3) Menard C. et al., Nat. Neurosci., 20, 1752-1760(2017).