著者
菊池 拓 森 毅彦 清水 隆之 森田 伸也 香野 日高 中川 健 三ツ橋 雄之 村田 満 岡本 真一郎
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.345-349, 2014 (Released:2014-03-29)
参考文献数
15

症例は64歳,男性。急性骨髄性白血病に対する非血縁者間同種骨髄移植後に進行した慢性腎不全に対して生体腎移植が施行された。術後合併症のため中心静脈栄養が行われた。腎移植3ヶ月後より,進行性の正球性貧血(ヘモグロビン7.9 g/dl)を認めた。網赤血球0.2%であったが,白血球数,血小板数は正常であった。血清鉄,ビタミンB12, 葉酸は正常値であった。骨髄検査では環状鉄芽球の増生および一部の赤芽球系細胞の細胞質に空胞化を認めた。巨核球数およびその形態は正常であった。骨髄所見はWHO分類で環状鉄芽球を伴う不応性貧血と合致したが,骨髄系細胞にも細胞質の空胞化を認め,銅欠乏も疑われた。血清銅(33 μg/dl), セルロプラスミン(11 mg/dl)共に低値であり,経口摂取で1 mg/日の銅補充を開始したところ,急速に網赤血球は上昇し,1ヶ月後にはヘモグロビン値は正常化した。骨髄中に環状鉄芽球の増生を伴う進行性の貧血の原因として,銅欠乏性貧血を鑑別疾患の1つとして挙げるべきである。
著者
永尾 陽典 木部 勢至朗 清水 隆之 引地 誠
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.37-45, 2007 (Released:2007-09-27)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

宇宙基地や宇宙往還機などが滞在するLEO では10km/s の速度でデブリが周回し,その数は記録されていないmm オーダーのものまで入れると4,000 万個ともいわれ,更に増え続けていると考えられている.これらの環境のもと宇宙機の構造側で最も考慮すべきとされるデブリは重量1g,速度10km/s とされるが,地上での試験を行うために用いる事ができる2 段式軽ガスガンでは速度は7km/s 程度までがほぼ上限である.一方,10km/s 以上の超高速試験では成型爆薬を用いた方法がある.そこで,著者らは10km/s の速度を安定的に出せる装置を開発したが,さらにプロジェクタイルを速度約7km/s で固体の状態のままで発射できるガスガンと,溶融化した状態となる成型爆薬方式との,それぞれの衝突現象の把握と,両者の差異の有無を確認する事を目的として,7km/s で1g 程度の模擬デブリの発射が可能な成型爆薬方式による射出システムを開発した.この装置の開発によって,ガスガンを用いた実験と成型爆薬方式による実験との関係を得る事が可能となり,5km/sレベルから10km/s レベルまで,固体デブリが衝突した時の構造への影響を正確に把握する事を目的としている.
著者
永尾 陽典 木部 勢至朗 清水 隆之 戸上 健治 引地 誠
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.61-70, 2007 (Released:2007-10-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

国際宇宙基地の位置する地球低軌道,静止衛星の位置する高軌道,そして常に高度と位置を変える観測衛星などが位置する楕円軌道など,人工衛星が存在するすべての領域においてデブリの存在と発生が確認されている.また運用を終えた衛星自身はデブリと化し,さらに大小のデブリが互いに衝突して新たにデブリを発生させ,その数を増やす可能性も大きくなっている.これらのデブリと人工衛星などとの衝突が起きる懸念は現実のものとなっており,確認された例が報告されている.その他の未確認衛星故障においてもデブリ衝突が主因である可能性は高いと考えられる.宇宙滞在が2週間程度と短期間の米国スペースシャトルでも帰還後の検査によって微小デブリの衝突痕が確認され,その頻度はこの10年間ではそれ以前に比べて2倍以上であることが報告されている.このようにデブリ増加は具体的なデータによって確認されている. これらの環境を背景に,有人国際宇宙基地の与圧部構造では10 km/secで1 gのデブリ衝突に耐えることが求められ,デブリバンパーで構造を保護している.一方,耐デブリ性能の実証には試験が必要となるが,超高速衝突試験ができる設備は限られている.著者らは10 km/sec 以上の速度を安定的に生成することを目的に,成型爆薬(CSCと称す)による超高速加速装置を開発してきた.しかしCSCによって射出される金属ジェットは,固体と溶融体とが混在する状態(固液混相体と称す)の可能性が高いが,実際の宇宙デブリは固体である.したがって,実構造の耐デブリ性能を正確に評価するには,所定の速度と質量を射出できるCSC装置を用いても,固液混相体によるCSCジェットの衝突と固体の衝突による標的板損傷の相違を明確にし,両者の関係を把握することが必要となる. 著者らはすでに固体を射出できる2段式軽ガスガンのプロジェクタイルと固液混相体を射出するCSCジェットの質量と速度とを同じレベルにし,それぞれの両者による標的板損傷を直接比較するため,2段式軽ガスガンのほぼ上限速度である7 km/secかつ1 gのジェットを射出できるCSC装置を開発し報告した.この開発では所定の速度と質量を満たし,安定したジェット生成を実現できた.しかし先端ジェットの約半分の速度で飛翔する後追いジェットが存在することも確認された.この後追いジェットは、先端ジェットの衝突跡にさらに衝突することになり,固体プロジェクタイルが一個当たる損傷と直接比較することができなかった.従って,これを除去することが必須であり新たな技術課題となった. 本研究は,後追いジェットを除去する方式を新たに考案し,実験により有効性を確認するとともに装置の最適化を行って装置を完成した.また引き続きこの装置によって,本研究の最終的な目的である2段式軽ガスガンと同レベルでの質量と速度で高速射出試験を行い,それぞれの装置による損傷を比較し検討した.この過程で2段式軽ガスガンによるプロジェクタイルとCSC装置によるジェットの形状の差異が与える影響についても実験によって確認し,両者の関係を明らかにした.