著者
キャッスルマン病の疫学診療実態調査と患者団体支援体制の構築に関する調査研究班 吉崎 和幸 岡本 真一郎 川端 浩 水木 満佐央 川上 純 正木 康史 矢野 真吾 井出 眞 宇野 賀津子 八木 克巳 小島 俊行 水谷 実 徳嶺 進洋 西本 憲弘 藤原 寛 中塚 伸一 塩沢 和子 岩城 憲子 古賀 智裕
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.97-107, 2017 (Released:2017-03-17)
参考文献数
75

キャッスルマン病は原因不明のリンパ増殖性疾患で,適切な治療を行わなければQOL低下や生命予後の短縮をきたす。しかしながら,その希少性のためにこれまで明確な診断基準や重症度分類が定まっていなかった。これに対して厚労科研・難治性疾患等政策研究事業の調査研究班では,本疾患の診断基準と病型分類,重症度分類の案を策定した。診断は,病理診断と臨床的な除外診断を併せて行う。組織型は硝子血管型,形質細胞型,および混合型に分類される。臨床的病型は,単中心性(限局型)と,HHV-8関連の多中心性,HHV-8陰性の特発性多中心性に分類した。重症度は主に臓器障害の程度により分類した。難治性とされる特発性多中心性キャッスルマン病は,重症度等に応じてprednisoloneやtocilizumabを用いて治療を行うこととした。今後,本疾患に関するエビデンスを集積し,本診断基準や重症度分類の妥当性を検証するとともに,質の高い診療ガイドラインを策定していく予定である。
著者
徳永 健太郎 尾田 一貴 岡本 真一郎 右山 洋平 川口 辰哉 蒲原 英伸 山本 達郎 藤井 一彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.517-521, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
17

背景:抗菌薬適正使用として狭域経口抗菌薬が処方できる環境を整えることは,耐性菌出現を抑制するために重要である。目的:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況を明らかにする。方法:時間外処方せんに薬剤師が対応していない施設を対象とし,郵送によるアンケートにより調査した。結果:配置薬がある14施設のすべてにおいて,「AMR対策アクションプラン」で削減すべきとされた広域の経口抗菌薬である第3世代セファロスポリン系薬とフルオロキノロン系薬が配置薬に含まれていた。一方,『抗微生物薬適正使用の手引き』で使用が言及されていたペニシリン系薬および第1世代セファロスポリン系薬の配置は,それぞれ9施設(64.3%),3施設(21.4%)に留まっていた。結論:時間外外来における経口抗菌薬の配置状況は,抗菌薬適正使用を推進するために改善の余地があると考えられた。
著者
岡本 真一郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.4-16, 2001-03-30

本研究ではmatched-guise techniqueを用いて,名古屋方言の使用が話し手の評価に及ぼす影響を検討した.実験1では男性話し手については,共通語のはうが方言よりも知的で積極的であり,話し方や外見も優れているとされたが,社交性の評価は方言条件のほうが上回っていた.女性話し手は共通語のほうが方言よりも大半の側面に関して望ましい評価を得た.実験2では話し手(男性)の出身地を愛知県内であると明示した上で,使用言語を共通語,方言に操作した.活動性や見かけでは方言条件のほうが共通語条件より,また話し方や知性に関しては共通語条件のほうが方言条件より望ましく評価された.
著者
菊池 拓 森 毅彦 清水 隆之 森田 伸也 香野 日高 中川 健 三ツ橋 雄之 村田 満 岡本 真一郎
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.345-349, 2014 (Released:2014-03-29)
参考文献数
15

症例は64歳,男性。急性骨髄性白血病に対する非血縁者間同種骨髄移植後に進行した慢性腎不全に対して生体腎移植が施行された。術後合併症のため中心静脈栄養が行われた。腎移植3ヶ月後より,進行性の正球性貧血(ヘモグロビン7.9 g/dl)を認めた。網赤血球0.2%であったが,白血球数,血小板数は正常であった。血清鉄,ビタミンB12, 葉酸は正常値であった。骨髄検査では環状鉄芽球の増生および一部の赤芽球系細胞の細胞質に空胞化を認めた。巨核球数およびその形態は正常であった。骨髄所見はWHO分類で環状鉄芽球を伴う不応性貧血と合致したが,骨髄系細胞にも細胞質の空胞化を認め,銅欠乏も疑われた。血清銅(33 μg/dl), セルロプラスミン(11 mg/dl)共に低値であり,経口摂取で1 mg/日の銅補充を開始したところ,急速に網赤血球は上昇し,1ヶ月後にはヘモグロビン値は正常化した。骨髄中に環状鉄芽球の増生を伴う進行性の貧血の原因として,銅欠乏性貧血を鑑別疾患の1つとして挙げるべきである。
著者
Navneet S. MAJHAIL J. Douglas RIZZO Stephanie J. LEE Mahmoud ALJURF 熱田 由子 Carmem BONFIM Linda J. BURNS Naeem CHAUDHRI Stella DAVIES 岡本 真一郎 Adriana SEBER Gerard SOCIE Jeff SZER Maria Teresa VAN LINT John R. WINGARD Andre TICHELLI 国際造血細胞移植登録機構 米国造血細胞移植学会 欧州造血細胞移植グループ アジア太平洋造血細胞移植グループ オーストラリア・ニュージーランド血液骨髄移植学会 地中海東岸血液骨髄移植グループ ブラジル血液骨髄移植学会
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.607-632, 2014 (Released:2014-06-27)
参考文献数
77
被引用文献数
1

造血細胞移植(HCT)技術及び支持療法の進歩が,HCT後の長期生存の改善を来たした。移植の新たな適応,臍帯血などの新しい細胞ソースの導入,あるいは高齢の患者を対象とした強度を緩和した前処置を用いた移植の導入も,HCT後生存者数の増加に貢献してきた。しかし,移植後生存者は,移植前,移植時,移植後の暴露や危険因子により晩期合併症のリスクにさらされている。HCT生存者に対するスクリーニング及び予防診療のガイドラインが2006年に発表された。移植専門家からなる国際グループが2011年に召集され,移植実務の変化やこのガイドラインの国際的な適用性を考慮しながら,現在の文献を検討し,ガイドラインを更新した。本報告では,自家及び同種HCTの小児及び成人生存者に対するスクリーニング及び予防診療の推奨の最新ガイドラインである。
著者
伊藤 君男 岡本 真一郎
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 心身科学部紀要 (ISSN:18805655)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.29-32, 2007-03-10

悪徳商法における強制的な説得・承諾のプロセスを,より詳細に検討するために,本研究では,被害者に対するインタビュー調査をおこなった.そして,説得の開始から承諾にいたるプロセスを,TEMを用いることで,詳細に記述・分析を行った.調査対象者は20代女性3名であり,彼女らはエステ・補正下着の強制的な勧誘を受けていた.TEMの分析によって,エステ・補正下着の勧誘のプロセスは,「来店」「勧誘」という必須通過点(OPP)を経て,「契約する」という等至点(EFP)に至ることが示された.そこでは,「友人の勧め」「無料体験」「脅し・強い勧誘」などの圧力が働いていることも示された.
著者
岡本 真一郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.47-56, 1986-08-20 (Released:2010-11-26)
参考文献数
20
被引用文献数
5 3

状況的要因が依頼の言語的スタイルの変動に及ぼす影響を検討するため, 男子大学生を被験者として, 2つの研究が行われた. 研究1では, 被験者 (73名) は同性・同学年の親しい相手, 疎遠な相手に対する, 依頼表現を筆答した. 疎遠な相手に対しては親しい相手に比べて, 6場面中4場面で依頼型が減少, 意向打診型が増加して, 依頼スタイルは間接化することが明らかになった. 研究2では親しい相手に対する依頼に限って, 依頼内容 (場面) によるスタイルの変動が検討された. 2組の恩恵場面群と1組の修復場面群でそれぞれ, 依頼を履行する際の相手のコストが変数として導入された. 被験者 (43名) は依頼を口頭で答えた. 予想された恩恵場面群だけでなく修復場面群でも, 依頼のコストが増すと依頼型が減少し, 意向打診型が増加した. 以上の結果の考察のほか, 他のスタイルの分布や, 慣用句, 依頼の長さについても分析・考察が行われた.
著者
伊藤 君男 天野 寛 岡本 真一郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-27, 1998-06-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 緊急事態における避難行動に見られる事前の探索経験と集合行動の効果の検討である。実験室内に被災状況を模した迷路を作製し, 被験者の実際の脱出行動を観察した。実験では, 被験者は電気ショック装置を持った実験者から逃れるように教示された。実験1 (被験者64名) は, 2 (探索経験の有・無) ×2 (単独脱出・集団脱出) のデザインで行われた。探索経験は単独で行われ, その後, 単独または4人集団で実験が行われた。その結果, 探索経験は脱出所要時間の短縮を促進するという結果が得られた。また, 単独-未経験条件の被験者は他の条件の被験者と比較して, 脱出に要した時間を長く認知しているという結果が得られた。実験2 (被験者44名) では2種類の出口を設定し, 探索経験の際, 半数の被験者には一方の出口を, 別の半数の被験者にはもう一方の出口を学習させ, 本実験では4人集団で実験を行った。その結果, 集団脱出における同調行動が観察され, 集団による避難行動において, 不適切な行動であると考えられる同調行動の生起が示唆された。本研究の結果は, 探索経験の効果を証明し, ふだんの避難訓練の有益性を改めて示唆するものであった。
著者
岡本 真一郎
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.4-16, 2001-03-30 (Released:2017-04-27)

本研究ではmatched-guise techniqueを用いて,名古屋方言の使用が話し手の評価に及ぼす影響を検討した.実験1では男性話し手については,共通語のはうが方言よりも知的で積極的であり,話し方や外見も優れているとされたが,社交性の評価は方言条件のほうが上回っていた.女性話し手は共通語のほうが方言よりも大半の側面に関して望ましい評価を得た.実験2では話し手(男性)の出身地を愛知県内であると明示した上で,使用言語を共通語,方言に操作した.活動性や見かけでは方言条件のほうが共通語条件より,また話し方や知性に関しては共通語条件のほうが方言条件より望ましく評価された.
著者
岡本 真一郎 OKAMOTO Shinichiro
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

言語表現の状況的使い分けに関して体系的な枠組を得るため,社会心理学的な見地から実証的な研究を行った.主として,状況要因を独立変数として操作して言語反応等を従属変数とする実験的手法を用いた.これに加えて,結果のエコロジカルバリディティを確認するため,録音した会話やシナリオに現れた会話を分析して,事例的に検討したり,可能な場合は定量的に分析する方法でも研究を進めた.具体的な研究内容は以下の通りである.1. 感謝表現に関して,質問紙を用い状況要因を独立変数とした実験的研究をいくつかの観点から行い,実験結果を分散分析や重回帰分析等により解析することにより,感謝型と謝罪型の表現の使い分けに関与する諸要因の影響について全体的な考察を試みた.英語(英国)での感謝の表現の使い分けのとの比較・検討も行った.2. 対人配慮に関わる他の諸表現についても状況要因との関わりを検討した.具体的には「ごくろうさま」,「おつかれさま」,「たいへんでしたね」等のねぎらい表現,「失礼しました」等の謝罪表現,「そうです」,「いいです」等の評価的応答表現を扱った.3. さまざまの言語表現の使い分けに対する聞き手の反応を実験的に検討した.4. これまでに知見が得られた対人配慮表現に関して,日本語における状況と表現の関わりについて,従来の日本語の敬語に関する先行研究や欧米の諸研究もふまえて包括的なモデルを検討した.今後は4で示したモデルを修正発展させる中で,日本語の対人配慮表現を状況と関連づけて体系的に整理していくことを計画している.その際,他の言語における知見と比較して日本語の場合の特徴を明らかにするとともに,対人配慮の普遍性についても考察を進める予定である.