著者
坂田 利家
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.4-10, 2005 (Released:2006-08-04)
参考文献数
13
著者
吉松 博信 坂田 利家
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.902-913, 2001-05-10
被引用文献数
9 3

肥満症や肥満2型糖尿病の治療に食事療法と運動療法は欠かせない.しかし,継続して実行するとなると,多くの患者は治療から脱落し失敗する,肥満症患者特有の認知能,食行動,ライフスタイルと言った壁に阻まれ,患者はそれを凌駕出来ないからである.なかでも,その主体をなすのが食行動の「ずれ」と「くせ」である.栄養学的な知識だけで患者教育をしたり,それで効果がなければ疾患の怖さを武器に説得したり,言い換えると知識量による防御だったり,患者の恐怖感を煽るといった操作では,これらの障害を克服することは難しい.治療者に授けた知識そのものが「ずれ」と「くせ」に取り込まれ,患者の行動変容には結びつかないからである.治療者の役割として大切なことは,自分の食行動の問題点,具体的には「ずれ」と「くせ」に患者が自ら気付き,しかも治療経過の中でそれらを修復できるような治療的枠組みをどのように創っていくか,この一点にある.このような目的のために編み出された治療技法,その一つが「グラフ化体重日記」である.問題になる食行動の抽出,その修復,波形化されて描出される体重減少という報酬,この繰り返しが治療動機の向上とその長期的維持を可能にする.「咀嚼法」は満腹感の形成を促す.その結果,お腹がはち切れる程食べないと満腹出来ないと思い込んでいた患者に,摂取量は少なくても満腹できるのだと実感させることが出来る.つまり,肥満症患者の満腹感覚の「ずれ」を修復するのに有効な手段である.知識量の増加ではなく,患者自身が感じ取る感覚の修復,これこそが逸脱した脳機能を修復する最短距離なのである.