著者
渡辺 晃紀 早川 貴裕 佐藤 栄治 三宅 貴之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.96-106, 2019-02-15 (Released:2019-02-26)
参考文献数
21

目的 第7次医療計画の策定に向け,栃木県(人口196.8万人)内の入院患者の受療動向を把握する。方法 栃木県内の病床を有する全221医療機関(病院107,診療所114)を対象とし,対象日(2016年9月1日)の全入院患者および対象月(2016年9月)の全退院患者について,調査票またはDPCデータにより,住所(郵便番号),性,年齢,入退院日,診療科,入院前の場所,救急搬送,傷病名(調査票は疾病分類コード,DPCはICD基本分類),手術(診療報酬のKコード),転帰,退院後の行き先を尋ねた。活動内容 回収率は施設単位で68%,病床単位で一般87%,療養74%,精神89%で,入院票13,052件,退院票17,468件の回答を得た。 一般・療養病床では,入院10,407件のうち,年齢別では65歳以上72%(75歳以上51%),診療科別では内科系49%,外科系19%,整形外科系15%,疾病分類別では循環器系21%,新生物17%,呼吸器系10%であり,2次医療圏ごとで,人口10万対入院受療率は385-647,居住する圏内に入院(圏内入院)した割合は58-90%,救急搬送ありは12-18%,救急搬送ありのうち圏内入院の割合は69-95%だった。 退院17,161件のうち,年齢別では65歳以上57%(75歳以上34%,以下同じ),Kコードが記載されていた割合は43%で,多いものは水晶体再建術833件,内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術398件等であり,転帰では退院後の在宅医療ありは65歳以上で4.3%(5.2%),介護・福祉施設へは65歳以上で5.2%(7.8%),死亡退院は4.9%(9.5%)だった。 精神病床では,入院2,640件のうち65歳以上48%,疾病分類別では統合失調症67%,躁うつ病を含む気分障害9%,退院302件の平均在院日数は359日だった。 調査後,住所,疾病,診療科,手術ごとの医療機関別入退院数等,必要な項目で集計し,結果を表で出力できるマクロを含むMicrosoft Excelファイルを作成し,活用できる環境とした。結論 医療計画策定にあたり,疾病,診療科,手術ごとの患者数や流出入,退院後の行き先や在宅医療導入の割合などの把握は有用であり,DPCデータの活用や調査による継続的な観察が必要と考えられた。
著者
今井 明 鈴木 ひろみ 渡辺 晃紀 梅山 典子 塚田 三夫 中村 勤 松崎 圭一 加藤 開一郎 冨保 和宏
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.572-578, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

脳卒中の自然経過を検討する目的で,生命予後と死因について調査し,AHAによる報告と比較した.対象は1998年4月から1999年3月に脳卒中を発症し,栃木県内で登録された5,081人である.発症から5年9カ月までの死亡の有無と,死因簡単分類で死因を調査した.生存率はKaplan-Meier法で算出した.脳卒中全体の5年生存率は62.3%であり,病型別の5年生存率は,くも膜下出血54.9%,脳出血57.9%,脳梗塞62.8%であった.死因の観察では,すべての病型で1位を脳卒中,2位を循環器系の疾患が占め,3位はくも膜下出血と脳出血では悪性新生物,脳梗塞では呼吸器系の疾患が占めた.くも膜下出血と脳出血では原疾患による急性期死亡が多く,75歳以上の脳梗塞では肺炎による死亡が多かった.AHAの報告によると,脳卒中の5年以内の致死率は男性47%,女性51%であり,栃木県の致死率は男性38.5%,女性36.7%とアメリカの報告より低かった.脳卒中の生命予後の改善には,急性期治療の充実と慢性期脳梗塞の肺炎に対する対策が重要と考える.