著者
西村 優一 徳留 大剛 寺田 直正 佐々木 健 渡辺 英樹
出版者
一般社団法人 日本体外循環技術医学会
雑誌
体外循環技術 (ISSN:09122664)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.388-392, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
10

逆行性心筋保護(retrograde cardio plegia:RCP)の欠点として、右心系灌流不全が知られており、原因の1つに冠状静脈(coronary vein:CV)の血管走行が挙げられる。右心系に関連するCVは、小心静脈(small cardiac vein:SCV)、中心静脈(middle cardiac vein:MCV)を中心に構成される。これらは、冠状静脈入口部(coronary sinus ostium:CSos)近位部に合流するため、RCPカニューレを深く挿入してはならないことが知られているが、CV走行には個人差があり、許容される深さは症例によって異なると言える。本研究では、RCPに関連するCSos周囲の3D画像を作成し、CV走行の個人差がRCPに与える影響について解剖学的に検討した。全50例中、SCVは36%しか存在せず、すべてCSos近位部ではなくMCVに合流しており、最も右房側に合流するCVはMCVであった。CSosからMCVまでの距離は中央値6.0mm(1.8~15.6mm)と非常に近接しており、比較対象としたRCPカニューレ付属バルーンの最小サイズが10.0mmであったことから、MCVより深く挿入される可能性が高い。RCPにおける右心系灌流不全を最小限にする条件として、RCPカニューレをすべてのCVより右房側に留置可能、かつSCVの発達が良好である必要があるが、今回の検討で条件を満たす症例はなかった。