- 著者
-
渡辺 誠治
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.178, pp.109-123, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
- 参考文献数
- 6
日本語には,ヒトやモノの存在を表す動詞として「アル/イル」がある。しかし,「V テイル」を用いてヒトやモノの存在を表す場合も多く見られる。両者の間には使い分けが見られるケースがあるが,使い分けの実態とその規則性にはまだ明確でない点が残されている。 本稿では有情物の存在を表す種々の「V テイル」を俯瞰したうえで,存在動詞「イル」との使い分けが特に問題となる,移動を表す動詞の「V テイル」について考察する。本稿では,用例の分析を通して,存在主体の意図が有情物の存在を表す「V テイル」と「イル」との使い分けに関与していることを明らかにする。同時に,この意図をはじめとする複数の要因が相互に作用しあって有情物の存在を表す「V テイル」と「イル」の間の選択がなされていることを示す。