著者
鈴木 周朔 渡邉 二祐子 眞野 容子 古谷 信彦
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.158-163, 2018-03-25 (Released:2018-03-27)
参考文献数
25

緑膿菌は,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis; DPB)等の慢性気道感染症を増悪する主な原因菌である。マクロライド系薬の少量長期低療法によるDPB患者の生存率は,既存の治療法に比べ著しく上昇した。しかしマクロライド系薬は緑膿菌に対して抗菌活性を持たない。マクロライド系薬の作用解明のために様々な検討が行われた結果,緑膿菌の病原因子を抑制することが報告された。しかし,これらの研究は短期間マクロライド系薬を緑膿菌に曝露し評価している。本研究では,マクロライド系薬(エリスロマイシン,クラリスロマイシン)を2年間緑膿菌に継続曝露することによりマクロライド系薬少量長期療法をin vitroで再現し,緑膿菌の外毒素(トータルプロテアーゼ活性,エラスターゼ活性,ピオシアニン産生量),及びマクロライド系薬曝露後の緑膿菌上清の添加がA549細胞へ与える影響について検討を行った。緑膿菌の外毒素産生性,及びA549細胞に対する障害性は,マクロライド系薬の曝露期間延長に伴い抑制が確認された。マクロライド系薬少量長期療法は,経時的に外毒素の産生を抑制することで緑膿菌の病原性を低下させ,DPB等の臨床経過を変化させるのかもしれない。