著者
刈田 綾美 眞野 容子 神作 一実 古谷 信彦
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.32-39, 2021-01-25 (Released:2021-01-26)
参考文献数
18

洗口剤を使用した口腔ケアにより,肺炎の発症リスクが低下したとの報告が海外で為されている。しかし,洗口剤は主に口腔疾患予防を目的としており,肺炎予防を目的としていないため,洗口剤の一部有効成分は既報の有効濃度よりも,日本における上限濃度は低くなっている。本研究では,洗口剤で使用されるさまざまな有効成分が肺炎を引き起こす病原体に対して十分な殺菌効果を提供できるかどうかを調査した。実験は欧州標準規格EN 1040に軽微な変更を加えて実施した。グルコン酸クロルヘキシジン(CHG),塩化セチルピリジニウム(CPC),及び1,8-シネオールを用い洗口剤で一般的に用いられる濃度を中心に調整した。各菌を18時間培養後,菌懸濁液を収集,PBSで洗浄し,細菌濃度を108 CFU/mLに調整,OD 660 nmで標準化した。菌懸濁液を洗口剤有効成分と10,20,30,および60秒間反応させた後,中和および希釈した各混合物を寒天プレートに広げ,35℃で18時間培養し,菌数算定を実施した。本研究の結果,洗口剤に用いられる濃度では,CPCは肺炎起炎菌に効果的であり,洗口剤で用いられるよりも低濃度で十分な殺菌効果を発揮することが明らかとなった。CHGは,いくつかの肺炎起炎菌に対して効果的であり,既報濃度(0.12–0.20%)よりも低濃度において有効であることが判明した。
著者
鈴木 周朔 渡邉 二祐子 眞野 容子 古谷 信彦
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.158-163, 2018-03-25 (Released:2018-03-27)
参考文献数
25

緑膿菌は,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis; DPB)等の慢性気道感染症を増悪する主な原因菌である。マクロライド系薬の少量長期低療法によるDPB患者の生存率は,既存の治療法に比べ著しく上昇した。しかしマクロライド系薬は緑膿菌に対して抗菌活性を持たない。マクロライド系薬の作用解明のために様々な検討が行われた結果,緑膿菌の病原因子を抑制することが報告された。しかし,これらの研究は短期間マクロライド系薬を緑膿菌に曝露し評価している。本研究では,マクロライド系薬(エリスロマイシン,クラリスロマイシン)を2年間緑膿菌に継続曝露することによりマクロライド系薬少量長期療法をin vitroで再現し,緑膿菌の外毒素(トータルプロテアーゼ活性,エラスターゼ活性,ピオシアニン産生量),及びマクロライド系薬曝露後の緑膿菌上清の添加がA549細胞へ与える影響について検討を行った。緑膿菌の外毒素産生性,及びA549細胞に対する障害性は,マクロライド系薬の曝露期間延長に伴い抑制が確認された。マクロライド系薬少量長期療法は,経時的に外毒素の産生を抑制することで緑膿菌の病原性を低下させ,DPB等の臨床経過を変化させるのかもしれない。
著者
天野 宏敏 原澤 彩貴 眞野 容子 細井 淳裕 古谷 信彦 藤谷 克己
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.339-346, 2019-04-25 (Released:2019-04-25)
参考文献数
16

尋常性痤瘡(ニキビ)は,90%以上の人が経験する一般的な疾患であり,角化異常および皮脂分泌の亢進などにより,Cutibacterium acnes(C. acnes)が増殖した結果,引き起こされる慢性炎症性疾患である。外見へ影響があるため,感情面での生活の質(QOL)への影響が大きい。本研究では,健常人におけるニキビ治療の実態把握やC. acnesの年代別保有状況を疫学的に調査,分析を行うことを目的とした。10代19名,20代20名,30代20名,40代20名の計79名を対象に,検体採取を行った後に,質問表式調査法による調査を行った。両頬におけるC. acnesの検出率は全体で82.3%であった。また検出率における年代および性別間では差が認められず,年代・性別を問わずC. acnesを保有していた。ニキビに対する対処法として,全体では洗顔をするが50.0%と最も多かったが,何もしないが16.4%であった。発症時期(自覚した時)は10代に最も多く認められた。治療を始めた理由として全体では,ニキビ痕が残ることが心配になった,人からの目が気になった,の2つが多く半分以上を占めていた。ニキビに関して,全体ではとくに関心をもっていないが最も多く,特に30代と40代で顕著であった。

1 0 0 0 OA 抗酸菌

著者
古谷 信彦 舘田 一博
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Supplement, pp.49-52, 2000-05-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
8

抗酸菌, なかでも結核菌 (Mycobacterium tuberculosis) は1950年代までは罹患率, 死亡率とも高く, 死の病として恐れられていた. その後, 抗結核薬の登場や生活環境の改善に伴い罹患率, 死亡率は飛躍的に低下したが, 1980年代に入ってからその低下率に翳りがみえている. またそれに伴い病院内における集団感染例も増加してきている. 本菌の感染経路は空気感染であり, 感染の危険性は空気中に存在する結核菌含有飛沫核の濃度と, その空気に暴露される時間に依存して高くなる. 結核菌は初感染後, 初期変化群を形成するが, この初期変化群から引き続いて一次結核症に進展するものは感染例の5%にすぎない. 残りは発病に至らないが全身の諸臓器に持続感染し, 長時間を経てから二次結核症として発病する.