著者
今井 翔 吉田 磨 河野 恒平 豊田 栄 藤井 彩子 山田 桂大 渡邉 修一 吉田 尚弘
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.267, 2008

WOCEの2ラインにおけるメタンの空間的特徴や起源、大気海洋フラックスについて明らかにすることを目的とし、北太平洋において溶存メタン濃度と炭素安定同位体比を測定した。 海水試料は海洋地球研究船みらいによる2005年10月~2006年2月のMR05-05航海(WHP-P03)と、2007年7月~9月のMR07-04航海(WHP-P01)で得た。研究室に持ち帰り海水試料を脱気・精製し、FID-GCを用いてメタン濃度、GC/C/IRMSを用いて炭素安定同位体比(δ13C-CH4)を測定した。通常濃度の試料から得られた測定精度はそれぞれ~5%と~1‰となった。P01観測ではメタンの極大及び20-50%の過飽和が、表層300 m以浅において観測された。炭素安定同位体比から水柱での生成が示唆され、東部では生成経路が異なることを示唆している。P03観測東部沿岸域では沿岸湧昇にともなって現場でのメタン生成が表層に限定されることがわかった。密度躍層を境界に表層では生成、深層では酸化され、表面水のメタン過飽和により大気へ逃散していることがわかった。
著者
角皆 静男 渡邉 修一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

大気中のCO_2などの温室効果気体の消長に果たす海面の役割の大きさを決める手法として、1.地球化学的収支、2.大気中濃度の解析、3.大気海洋界面における濃度差の解析、4.海水中濃度の時間的変動、経年変化の解析、5.海底堆積物に残された記録の解析による方法がある。そこで、1については、これまでのデータを再吟味し、主に1960年代に加えられたC-14の推移に注目して解析した。2については、海洋上をわたる大気に注目し、札幌近くの日本海沿岸に観測所を設け、日本海からの空気中のCO_2、O_2、H_2O、のOとHの同位体比の微細変動を解析した。3については、海水中のCO_2の逃散度を他の海洋炭酸系に関わる成分と同時に測定し、海洋表面水の平衡からのずれとそれの解消を支配している因子を明らかにした。また、CO_2そのものの交換速度定数を求め、交換量を求めた。泡の効果により、CO_2の交換速度はO_2の交換速度よりかなり大きかった。また、海水中のCH_4、N_2O、DMSも測定し、これらの逃散量を見積もった。4については、西部北太平洋ばかりでなく、東シナ海、噴火湾などの縁辺海や大陸棚域の炭酸系と時間変化の詳密な観測を行い、その構造を明らかにした。これには、水温、塩分、溶存酸素、栄養塩、全炭酸、pH、アルカリ度ばかりでなく、トレーサーのCFCs、トリチウム、C-14なども含まれる。その結果、太平洋水はもともとCO_2を吸収しやすい海であるが、沿岸域(大陸棚ポンプを提唱)や高緯度域から海洋に大量に送り込まれ、またSiが主導する生態系と太平洋中層水が働いて、大きな吸収量になることが明らかとなった。5については、炭酸塩をあまり含まない西部北太平洋の堆積物について、オパールなどを用いて氷期と間氷期間の差異を明らかにし、海水循環の違いから、炭素循環の違いを考察した。また、CO_2の吸収量に影響する生物ポンプの働きを海底での化学成分の挙動から明らかにした。