著者
角皆 静男
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.651-653, 2002-11-05
被引用文献数
4 1

川口ら(2002)は,有明海における2000年のノリ不作の原因を珪藻が栄養塩を枯渇させてしまったせいと突きとめながら,溶存無機窒素(DIN)減少の理由を有明海内にだけ求めたため,説得力のある説明ができなかった。角皆(1979)のケイ素仮説を用いるとこれが簡単に説明できる。この年は高温・多雨だったので,雲仙普賢岳の噴火による火山灰から溶け出した効果も加わって,多量の溶存ケイ酸塩が海に流れ込み,珪藻が異常増殖し,ノリにいくべき栄養塩を使ってしまったとなる。
著者
角皆 静男 辺見 隆
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.67-72, 1971 (Released:2011-06-17)
参考文献数
7
被引用文献数
80

表面海水でのヨウ素イオンとヨウ素酸イオンとの関係を知る目的で太平洋海水中のヨウ素を測定した. その結果を角皆と佐瀬によるヨウ素イオンの生成機構と関連させて議論した. 全ヨウ素濃度はほぼ一定で平均値は0.41μg at./lであるが, ヨウ素イオン濃度は測定限界以下から0.21 μg at./lまで大きく変動した. ヨウ素イオンの鉛直分布ではその最大値はしばしば表層に現われるが, 表層では水温20℃ 以上の暖水 (平均0.10μgat.l) の方が冷水 (0.03μg at./l) 中のものより濃度が高い. 暖水中でも最も濃度の高いのは赤道海域の表層水 (0.13μgat./l) で, ここでは活漫な生物活動がみられる. 一般に, 冷水でも生物活動の活溌な水にヨウ素イオンは多い.これらの事実は提案されたヨウ素イオンの生成機構とは矛盾しない.
著者
角皆 静男 西村 雅吉 中谷 周
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.153-159, 1968-08-31 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
20 20

海水のカルシウムおよびマグネシウム含量を測定した. 西部北太平洋において, 平均濃度は, 塩素量19.00‰の海水で, カルシウムについて0.4049g/kg, マグネシウムについて1.2684g/kgであった. また, カルシウム/塩素量比, マグネシウム/塩素量比の平均値は, 0.02131および0.06676であった. カルシウム/塩素量比は深さと共に増大するばかりでなく, 表面水でも水塊によって異なることがわかった. それゆえ, カルシウム/塩素量比は水塊のトレーサーとして使うことができる. そのような傾向はマグネシウム/塩素量比ではみられなかった.
著者
角皆 静男
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.180, 2010 (Released:2010-08-30)

私が大学に入った1957 年に,Keeling はIGY 国際地球観測年の一環としてハワイのマウナロアで大気中CO2 濃度の連続観測を開始した.この年の暮に315 ppm(季節変動を補正)だったその濃度は,2010 年には390 ppm に達した.その増加の主因は人間活動であるが,人間が大気に放出したCO2 量はその2 倍以上だった.今後どうなり,何を引き起こすかについては,大気のCO2 の測定だけではわからない.流体である海洋を中心とする物質循環は,ホリスティックであり,動く海水の中での化学物質の特性と太陽光を受けて始まる生物の食物網がこれに深く関与し,大気圏との交換,河川からの陸源物質,死の世界ではない海底との間のやりとりなどに支配されている.従って,その部分部分のどこか1 カ所を深く追究しても,真の姿を描き出すことは難しい.私は,複数の研究を同時に進めながら,それに迫ることを試みてきた.得られた結果のいくつかを物語風に解説する.
著者
角皆 静男 渡邉 修一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

大気中のCO_2などの温室効果気体の消長に果たす海面の役割の大きさを決める手法として、1.地球化学的収支、2.大気中濃度の解析、3.大気海洋界面における濃度差の解析、4.海水中濃度の時間的変動、経年変化の解析、5.海底堆積物に残された記録の解析による方法がある。そこで、1については、これまでのデータを再吟味し、主に1960年代に加えられたC-14の推移に注目して解析した。2については、海洋上をわたる大気に注目し、札幌近くの日本海沿岸に観測所を設け、日本海からの空気中のCO_2、O_2、H_2O、のOとHの同位体比の微細変動を解析した。3については、海水中のCO_2の逃散度を他の海洋炭酸系に関わる成分と同時に測定し、海洋表面水の平衡からのずれとそれの解消を支配している因子を明らかにした。また、CO_2そのものの交換速度定数を求め、交換量を求めた。泡の効果により、CO_2の交換速度はO_2の交換速度よりかなり大きかった。また、海水中のCH_4、N_2O、DMSも測定し、これらの逃散量を見積もった。4については、西部北太平洋ばかりでなく、東シナ海、噴火湾などの縁辺海や大陸棚域の炭酸系と時間変化の詳密な観測を行い、その構造を明らかにした。これには、水温、塩分、溶存酸素、栄養塩、全炭酸、pH、アルカリ度ばかりでなく、トレーサーのCFCs、トリチウム、C-14なども含まれる。その結果、太平洋水はもともとCO_2を吸収しやすい海であるが、沿岸域(大陸棚ポンプを提唱)や高緯度域から海洋に大量に送り込まれ、またSiが主導する生態系と太平洋中層水が働いて、大きな吸収量になることが明らかとなった。5については、炭酸塩をあまり含まない西部北太平洋の堆積物について、オパールなどを用いて氷期と間氷期間の差異を明らかにし、海水循環の違いから、炭素循環の違いを考察した。また、CO_2の吸収量に影響する生物ポンプの働きを海底での化学成分の挙動から明らかにした。
著者
大島 康行 角皆 静男 小川 利紘 内嶋 善兵衛 樋口 敬二 吉野 正敏
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1990

国際学術連合は地球圏ー生物圏国際協同研究計画(IGBP)ー地球変化の研究ーを1990年から10年計画で実施することを決め,1990年9月パリで開かれた第二回IGBP科学諮問委員会で(1)The international Global Atomospheric Chemistry Project(IGAC),(2)Joint Global Ocean Flux Study(JGOFS),(3)Biospheric Aspects of the Hydrogical Cycle(BAHC),(4)Global Change and Terestsial Ecosystern(GCTE),(5)Past Global Change(PAGES)の5つの課題を実施することを決めた。わが国でもこれらの課題を考慮しつつ日本の研究課題を検討し,最終的に(1)大気微量成分の変動および生物圏との交換(2)海岸における物質循環と生物生産(3)陸上生物群集への気候変化の影響(4)大気圏・水圏・陸圏と生物圏の相互作用を考慮した気候解析とモデリング(5)環境変化のモニタリング(6)古環境の変遷,(7)地球環境と人間活動の相互作用の7研究領域で研究を進めることとし,研究内容とその組織について検討し,最終案を作成後,具体的に研究を進めることとなった。また,IGBPから送付された資料を印刷し,関係各方面に配布し,国際的な計画を衆知することに務めた。とくに本年度はReport9〜15までと資料が多く,そのため印刷費の支出が増大した。班員は国際的な課題ごとに積極的に交流をはかり,国際対応を今後積極的に行うための基礎づくりに努力した。また国際課題ごとに国内の対応小委員会を設ける努力も行なった。
著者
大島 康行 角皆 静男 小川 利紘 内嶋 善兵衛 樋口 敬二 根本 敬久
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1989

国際学術連合は1990年から10年計画で“地球圏一生物圏国際協同研究計画"(IGBP)ー地球変化の研究ーを実施することを1986年のベルンの総会で決定した。この研究は生命をはぐくんでいるかけがえのない環境、全地球システムで起っている変化、さらに人間活動による影響の在り方を、全地球システムを調節している物理的、化学的、生物的過程の相互作用の面から記述し、理解することを目的としている。1986年以来IGBP特別委員会で精力的に研究計画が検討され、4つの研究領域とこの領域の研究を進めるための共通プログラムを設定した。さらにこれらを基礎に13のコアプロジェクト案が提出されている。本研究班は国際的に対応しつつ、日本における実施計画案を関係諸学会の意見を聞きつつ、また日本学術議のIGBP分科会(人間と環境特別委員会)と緊密な連絡をとりつつ日本における実施計画案の精細についてまとめ、また研究組織について検討した。検討の過程で(1)地球変化は地球の物理・化学・生物の諸過程の複雑な相互作用によっており、従来には例をみない多数の分野の研究者がそれぞれの課題ごとに密接な協力が必要であること。(2)国際研究計画に積極的な役割を果すため国際的、地域的協力のもとに独創的な研究を進めること。(3)日本の地理的条件と研究者層、研究の現況を考慮して研究対象地域を設定すること。を確認し、広義のモンス-ンアジア地域、西太平洋地域、極域を主たる研究地域に設定した。また次の6つの研究の柱をたて各課題を研究することとした。その柱は(1)大気微量成分の変質および生物圏との変遷、(2)海洋における物質循環と生物生産、(3)陸上生物群集への気候変化の影響、(4)気圏・水圏・陸圏と生物圏間の相互作用を考慮した気候解析とモデリング、5)環境変化のモニタリング、(6)古環境の変遷、である。
著者
大島 康行 広瀬 忠樹 内嶋 善兵衛 小川 利紘 角皆 静男 吉野 正敏
出版者
早稲田大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1991

国際学術連合(ICSU)で計画された地球圏ー生物圏国際協同研究(IGBP)は検討を重ね1990年秋5つの課題について研究がまず始められた。日本も積極的にこの研究計画に参加協力するため,昨年学術会議,改租されたIGBP国内委員会と密接に連絡をとりつつ、本研究課題の研究を進めた。1.関連国内外の関係諸機関と連繋し,関係資料の収集整理を行なった。資料は大島,吉野で保管している。2.すでに実施している5つの課題については,各課題ごとに小委員会をつくり,日本の実施計画の検討と各国際SSCの連絡にあたっており,一部は研究が開始された。(旅費は主として各小委員会の開催に使用)3.日本の実施計画案の英文レポ-ト(JAPANーIGBP REPORT No1)をつくり,国際機関,国内機関,各国関係者に配布した。4.国内に広く情報を衆知させるため,IGBPニュ-スNo1,No2を作成し,関係各所に配布した。5.日本学術会議主催のIGBPシンポジウムの報告を英文で作成,近く出版の予定である。6.本研究班が中心になり,アジアーモンス-ン地域を中心としたIGBP国際シンボジウムを早稲田大学国際会議場で1992年3月27日〜29日開催する。全体会議は組織委員会を兼ねて行はれた。プロン-デングは本年秋出版の予定である。